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61. 駄目な男
しおりを挟む「兄様! 父様! 起きるのじゃ!
早く勝負の続きをするのじゃ!
そして、次いでにギルドポイントを貯めて、ギルドランキング10位以内に入るのじゃ!」
アリスが元気いっぱいで、俺とアレックスを力一杯、上下に揺さぶる。
「アリス! 止めろ~!」
アレックスが、揺さぶられながら悶えている。
あれだけ昨日、夜遅くまでアレックスに甘えてお喋りしていたのに、よくこんなに早く起きれるな……
結局、昨日は夜中の1時頃までお喋りした後、アリスが川の字になって寝るんだと、だだを捏ねて、テントのベッドでアリスを中心にして川の字に寝たのだった。
「おおぉ! アリス! お前は本当に可愛いな!」
アレックスはフラフラになりながらも、アリスの両脇を抱えて抱っこする。
「当たり前なのじゃ! エリス母様とアレックス父様の子供なのに可愛くない訳ないのじゃ!」
アレックスとアリスの相思相愛ぶりが、凄まじい。
「アレンもコッチに来いよ!」
アレックスが俺を呼ぶ。
「僕は遠慮しときます」
何が嬉しくて、無精髭ジョリジョリのオッサンに抱っこされなくちゃならないのだ。
「お前は、直ぐに大人ぶるな。
少しはアリスのように、俺に可愛がわれろよ!
昨日は、俺に抱きついてワンワン泣いてた癖に!」
アレックスがニヤニヤしながら、俺に話し掛ける。
「ア……アレは、目にゴミが入ったからです!
決して嬉しくて泣いてたわけではありませんから!」
「兄様が、父様と同じ事を言っているのじゃ!
やはり親子じゃな!」
「違わい! それはそうと、シャンティ先生。ガリム王国とは連絡を取ったのですか?」
俺は体裁が悪そうになったので、すぐさま話を変えて、シャンティ先生に話し掛ける。
「今朝、朝食を作る為にヤリヤルの家に戻った時に、奥様に伝えておきました。
奥様は、今日中にはガリム王国の首都に行って、ネム王子を無事に保護をしたと王様に直接伝えると仰っておりました」
シャンティ先生は、いつの間にか俺に召喚されたり、召喚解除されたりを勝手に自分の意思で行う様になっている。
「そうですか。そしたら安心してダンジョンの攻略に当たれますね!」
「ハイ! 朝食はテーブルに用意しておきますので、少しテントの外でガリム王国の騎士と冒険者達に朝食を売って参ります!」
「売る?」
「ハイ! 売って参ります!
アレン坊ちゃんが考案したサンドイッチと暖かいスープ2つセットで1500マーブルです!
一応、人数分用意してますので、必ず完売させてきます!」
サンドイッチとスープで1500マーブルは、少し高いのではないのか?
何処までシャンティ先生は、金にガメツイのだ……
多分、騎士さん達と冒険者達は、シャンティさんが作ったサンドイッチを買うのを断る事などできない。
もし断わったりでもしたら、このダンジョン攻略の最中、『腹黒』の二つ名を持つシャンティさんからの壮絶な嫌がらせが確定してしまうのだ。
腹黒シャンティ、恐るべし……
「アレン坊ちゃん! サンドイッチを売って稼いだお金は、アレン坊ちゃんのお家の生活費になるのですよ!」
シャンティ先生が、俺の心を読んだかのように、返答してきた。
「シャンティ先生! 勿論、分かってます!」
やはり、腹黒シャンティ恐るべし。
「アレン坊ちゃん!」
「すみません!」
シャンティ先生は、完全に俺の心を読んでいるようだ……
一応、俺達が持ってきたモンゴルのゲルのような立派なテントには、ネム王子も含めた新旧『犬の肉球』のメンバーが使い、他の人達は階段フロアーの【聖級結界】の中で寝袋を使い寝ている。
朝食を食べ、テントの外に出てみると騎士や冒険者の人達は、シャンティ先生が作ったサンドイッチをみんな美味しそうに食べていた。
「アレン君! このサンドイッチという食べ物は、アレン君が考案して作ったと聞いたけど、このサンドイッチという食べ物はとっても美味しいね!」
サンドイッチを食べていた騎士さんが、俺を見つけて話しかけてきた。
「それは良かったです。
不味くて、朝食に1500マーブルも取られたら適わないですもんね!」
「ハハハハハ! そりゃそうだ!
しかし、俺達ガリム王国の騎士やヤリヤル所属の冒険者達の中で、シャンティさんに逆らうようなバカな奴はいないよ!
なんたって、シャンティさんは、ガリム王国の王様だって顎で使うからな!
ハハハハハ!」
どうやらシャンティさんの悪名は、ガリム王国全土で有名なようだ。
まあ、400年前のガリム王国の王子と姫と同じ『犬の肉球』のパーティーメンバーだったシャンティさんに、今の現役の王様が逆らえる筈もない。
きっと歴代のガリム王国の王様達は、子供の頃にシャンティさんに弱みを握られ、シャンティさんの言いなりにならなくてはならないように追い込まれて行くのだろう……
「兄様! 妾は準備万端なのじゃ!
今日こそは、兄様をギャフンと言わせて見せるのじゃ!」
アリスが元気いっぱいに、テントの中から飛び出してきた!
「そうだぞ! アレン! この歴戦の冒険者であるアレックス様が付くアリスチームが、絶対にこの未攻略ダンジョン攻略勝負に負ける筈はないのだ!
ワッハッハッハッハ!」
続けて昨日、シャンティさんにダンジョンの探索方法をこっぴどくダメ出しされていたアレックスも、偉そうな事を言っている。
「……」
『お父さんが仕切ると、勝てる勝負も勝てないですよ!』とは、アリスの手前、口が裂けても言えないアレンなのであった。
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