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59. 黒い三連星
しおりを挟む「それじゃあネム王子は、俺とジュリの少し後方についてきて下さい!
ネム王子の仕事は、俺とジュリの打ち漏らしの処理と、俺達と解体係の防御です!」
「了解! 任せてくれ!」
ネム王子は王子らしく、歯を輝かせながら爽やかに返事をする。
俺はマップラーを確認し、進路を決めた。
「それじゃあ、始めるか!」
「「「おお!」」」
騎士さんや冒険者も含めた俺達のパーティーが、雄叫びを上げる。
スパン! スパン! スパン!
「団長! 僕にもたまには敵を回して下さいよ!」
暫く探索すると、暇そうに俺とジュリの後をついてきていたネム王子が話しかけてきた。
団長だと……
確かに俺は団長だが、王子様に団長と言われるのはむず痒い。
「あのネム王子……ネム王子は僕よりだいぶ年上なので、年上の人に団長と呼ばれるのは、少しやりにくいんですが……」
「団長は団長だろ!
それと僕の事は、ネムでいいから!
『犬の肉球』は家族だと言ったろ!」
ネム王子は、歯をキラリと輝かせながら答える。
王子と言う種族は、歯を輝かせないと喋れないのか?
「それではネム王子、1匹倒して下さい」
俺はわざとアリンコを1匹、ネム王子の前に通す。
ズバンッ!
ネム王子は豪快に、アリンコを一刀両断に斬りさいた。
凄く重そうな一撃だ。
「ネム王子、僕の想像以上に凄いです」
「一応、僕は勇者の末裔だからね!
どうやら基本スペックが全て高いんだよ!」
ネム王子は、事もなげに話す。
血筋が良く、イケメンで、いい人で、普通に強い。
ネム王子は、どれだけパーフェクトヒューマンなのだ……
「アレン君! 怪しい扉を発見!」
そうこうしてると、ジュリが話しかけてきた。
「あの扉は、フロアーボスがいる階段フロアーで間違いないよ!
アリスちゃん達との掛けは、どうやら僕らの勝ちのようだね!」
ネム王子が、爽やかに話す。
「それじゃあ、行きますか!
俺はこの日を待っていたのだ!」
「アレン君、珍しくヤル気だね!」
ジュリが話しかけてくる。
「ヤリヤルのアリンコのダンジョンでは、ケンセイさんにラスボスを倒すのを奪われたからな!
今回こそ、俺が倒すんだ!
ラスボス戦こそ、RPGの醍醐味なのさ!」
「RPGは何の事が解らないけど、ただのフロアーボスだからラスボスとは違うと思うよ」
ジュリが軽く突っ込む。
「ヤリヤルのダンジョンは、攻略済みのダンジョンだったから、フロアーボスはいなかっただろ!
やはり、少しずつ強いボスと闘っていきたいので、最初の倒すべきボスとして、フロアーボス位が丁度いいのさ!」
「フーン……それも含めてRPGの醍醐味なのね」
よく分かって無いようだが、取り敢えずジュリは納得してくれたみたいだ。
俺は先頭に立ち、扉を勢い良く開けた!
「団長! 敵は3匹! 真ん中が1番強そうです!」
と、ネム王子が解説しながら、盾を構えフロアーの中央に陣取った。
どうやら、ネム王子は盾役という仕事が解っているようだ。
「俺は右! ジュリは左を任せた!
ネム王子は、真ん中のデカいのを押さえて置いてください!」
「任せて!」
「団長! 戦闘の時は、王子は要らないよ!」
ジュリとネム王子が返事をする。
俺は一瞬で、アリンコの懐にしゃがみながら潜り込み、居合の体勢から頭上にあるアリンコの首を円を描くように斬り裂く。
ポロリ!
アリンコの頭が地面に転がる。
俺はすぐさま、ネム王子の盾の後ろに移動し、息を整える。
ジュリも自分の受け持ちのアリンコを倒して、俺の後ろに縦一列に並んだ。
ん!?
こ……これは黒い三連星のジェットストリー〇アタックの体勢ではないのか?
俺は心の中で思わず興奮する。
「ネム王子! ジュリ! 今から次の作戦を教える!
先ずネム王子が、ボスに向かって1太刀浴びせて横に避け、次に俺も1太刀浴びせて横にズレる。
そして最後にジュリがボスに留めを刺す!
これが黒い三連星のジェットストリームアタックだ!」
「団長! 盾役の僕が最初に敵に切りかかって良いのですか?」
「勿論! それがジェットストリームアタックだ!」
「アレン君! わざわざ3人で倒す必要があるの?
ネム王子の実力なら一撃で倒してしまうような気がするのだけど?」
「1人で倒してしまうなんて論外だ!
ジェットストリームアタックは、一種の芸術なのだよ。
3人目で綺麗に倒すという事が、様式美なのだ!」
「アレン君って時々、よくわからない事に妙に拘る事があるよね」
「ジュリちゃん。ここは団長の指示に従おうよ!
僕的には如何にもパーティー戦って感じがして興奮してきているんだ!
それにジェットストリームアタックってネーミングは、凄く格好いいよね!」
ネム王子が乗ってきたようだ。
やはり、男の子は『ジェットストリームアタック』という格好良い必殺技のネーミングに惹かれしまうのだ!
「分かったよ! 兎に角、私がトドメを刺せば良いのね!」
ジュリも『ジェットストリームアタック』に付き合ってくれるみたいだ。
「ヨシ! 準備は整った!
後は、『ジェットストリームアタック』を格好良く決めるだけだ!」
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