上 下
59 / 222

59. 黒い三連星

しおりを挟む
 
「それじゃあネム王子は、俺とジュリの少し後方についてきて下さい!
 ネム王子の仕事は、俺とジュリの打ち漏らしの処理と、俺達と解体係の防御です!」

「了解! 任せてくれ!」

 ネム王子は王子らしく、歯を輝かせながら爽やかに返事をする。

 俺はマップラーを確認し、進路を決めた。

「それじゃあ、始めるか!」

「「「おお!」」」

 騎士さんや冒険者も含めた俺達のパーティーが、雄叫びを上げる。

 スパン! スパン! スパン!

「団長! 僕にもたまには敵を回して下さいよ!」

 暫く探索すると、暇そうに俺とジュリの後をついてきていたネム王子が話しかけてきた。

 団長だと……
 確かに俺は団長だが、王子様に団長と言われるのはむず痒い。

「あのネム王子……ネム王子は僕よりだいぶ年上なので、年上の人に団長と呼ばれるのは、少しやりにくいんですが……」

「団長は団長だろ!
 それと僕の事は、ネムでいいから!
『犬の肉球』は家族だと言ったろ!」

 ネム王子は、歯をキラリと輝かせながら答える。

 王子と言う種族は、歯を輝かせないと喋れないのか?

「それではネム王子、1匹倒して下さい」

 俺はわざとアリンコを1匹、ネム王子の前に通す。

 ズバンッ!

 ネム王子は豪快に、アリンコを一刀両断に斬りさいた。
 凄く重そうな一撃だ。

「ネム王子、僕の想像以上に凄いです」

「一応、僕は勇者の末裔だからね!
 どうやら基本スペックが全て高いんだよ!」

 ネム王子は、事もなげに話す。
 血筋が良く、イケメンで、いい人で、普通に強い。
 ネム王子は、どれだけパーフェクトヒューマンなのだ……

「アレン君! 怪しい扉を発見!」

 そうこうしてると、ジュリが話しかけてきた。

「あの扉は、フロアーボスがいる階段フロアーで間違いないよ!
 アリスちゃん達との掛けは、どうやら僕らの勝ちのようだね!」

 ネム王子が、爽やかに話す。

「それじゃあ、行きますか!
 俺はこの日を待っていたのだ!」

「アレン君、珍しくヤル気だね!」

 ジュリが話しかけてくる。

「ヤリヤルのアリンコのダンジョンでは、ケンセイさんにラスボスを倒すのを奪われたからな!
 今回こそ、俺が倒すんだ!
 ラスボス戦こそ、RPGの醍醐味なのさ!」

「RPGは何の事が解らないけど、ただのフロアーボスだからラスボスとは違うと思うよ」

 ジュリが軽く突っ込む。

「ヤリヤルのダンジョンは、攻略済みのダンジョンだったから、フロアーボスはいなかっただろ!
 やはり、少しずつ強いボスと闘っていきたいので、最初の倒すべきボスとして、フロアーボス位が丁度いいのさ!」

「フーン……それも含めてRPGの醍醐味なのね」

 よく分かって無いようだが、取り敢えずジュリは納得してくれたみたいだ。

 俺は先頭に立ち、扉を勢い良く開けた!

「団長! 敵は3匹! 真ん中が1番強そうです!」
 と、ネム王子が解説しながら、盾を構えフロアーの中央に陣取った。

 どうやら、ネム王子は盾役という仕事が解っているようだ。

「俺は右! ジュリは左を任せた!
 ネム王子は、真ん中のデカいのを押さえて置いてください!」

「任せて!」

「団長! 戦闘の時は、王子は要らないよ!」

 ジュリとネム王子が返事をする。

 俺は一瞬で、アリンコの懐にしゃがみながら潜り込み、居合の体勢から頭上にあるアリンコの首を円を描くように斬り裂く。

 ポロリ!

 アリンコの頭が地面に転がる。

 俺はすぐさま、ネム王子の盾の後ろに移動し、息を整える。

 ジュリも自分の受け持ちのアリンコを倒して、俺の後ろに縦一列に並んだ。

 ん!? 

 こ……これは黒い三連星のジェットストリー〇アタックの体勢ではないのか?

 俺は心の中で思わず興奮する。

「ネム王子! ジュリ! 今から次の作戦を教える!
 先ずネム王子が、ボスに向かって1太刀浴びせて横に避け、次に俺も1太刀浴びせて横にズレる。
 そして最後にジュリがボスに留めを刺す!
 これが黒い三連星のジェットストリームアタックだ!」

「団長! 盾役の僕が最初に敵に切りかかって良いのですか?」

「勿論! それがジェットストリームアタックだ!」

「アレン君! わざわざ3人で倒す必要があるの?
 ネム王子の実力なら一撃で倒してしまうような気がするのだけど?」

「1人で倒してしまうなんて論外だ!
 ジェットストリームアタックは、一種の芸術なのだよ。
 3人目で綺麗に倒すという事が、様式美なのだ!」

「アレン君って時々、よくわからない事に妙に拘る事があるよね」

「ジュリちゃん。ここは団長の指示に従おうよ! 
 僕的には如何にもパーティー戦って感じがして興奮してきているんだ!
 それにジェットストリームアタックってネーミングは、凄く格好いいよね!」

 ネム王子が乗ってきたようだ。
 やはり、男の子は『ジェットストリームアタック』という格好良い必殺技のネーミングに惹かれしまうのだ!

「分かったよ! 兎に角、私がトドメを刺せば良いのね!」

 ジュリも『ジェットストリームアタック』に付き合ってくれるみたいだ。

「ヨシ! 準備は整った!
 後は、『ジェットストリームアタック』を格好良く決めるだけだ!」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

俺のスキル『性行為』がセクハラ扱いで追放されたけど、実は最強の魔王対策でした

宮富タマジ
ファンタジー
アレンのスキルはたった一つ、『性行為』。職業は『愛の剣士』で、勇者パーティの中で唯一の男性だった。 聖都ラヴィリス王国から新たな魔王討伐任務を受けたパーティは、女勇者イリスを中心に数々の魔物を倒してきたが、突如アレンのスキル名が原因で不穏な空気が漂い始める。 「アレン、あなたのスキル『性行為』について、少し話したいことがあるの」 イリスが深刻な顔で切り出した。イリスはラベンダー色の髪を少し掻き上げ、他の女性メンバーに視線を向ける。彼女たちは皆、少なからず戸惑った表情を浮かべていた。 「……どうしたんだ、イリス?」 アレンのスキル『性行為』は、女性の愛の力を取り込み、戦闘中の力として変えることができるものだった。 だがその名の通り、スキル発動には女性の『愛』、それもかなりの性的な刺激が必要で、アレンのスキルをフルに発揮するためには、女性たちとの特別な愛の共有が必要だった。 そんなアレンが周りから違和感を抱かれることは、本人も薄々感じてはいた。 「あなたのスキル、なんだか、少し不快感を覚えるようになってきたのよ」 女勇者イリスが口にした言葉に、アレンの眉がぴくりと動く。

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!

やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり 目覚めると20歳無職だった主人公。 転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。 ”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。 これではまともな生活ができない。 ――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう! こうして彼の転生生活が幕を開けた。

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

処理中です...