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2. 厄災龍 紅龍登場!
しおりを挟む「オオォーーーーーイ!」
「起きるのじやぁーーー!」
「オォォーーーイ!」
「オォォーイ!とっとと起きるのじゃー!」
「ウーン…うるさいなぁ……
一体なんなんだよ……」
幼ない感じの女の子の、金切《かなき》り声で目を覚ました……
しかし、目の前は真っ暗のままだった。
何だぁ? 何が起こってるんだ?
暫く冷静に考えてると、少しづつ頭が冴えてきて、思い出してきた。
そういえば、原因不明の病気の医療技術が見つかるまで、冷凍されてるんだったけ……
目覚めたって事は、治療方法が見つかったのか?
「おいコラァ!
とっとと起きるのじゃ!もう目覚めてると言う事は解っているからのう」
暗闇の中で誰かが喋っている……
看護師の割にはガラが悪い。年端《としは》も行かない女の子が偉ぶってる感じだ。この声の主は誰なんだ?
「あのー……看護師さんですか?」
俺は恐る恐る聞いてみた。
「ワッハハハハ! 妾《わらわ》は最強、最悪の厄災龍。紅龍《こうりゅう》様じゃ! ワッハハハハ頭が高いのじゃ!」
シッ…シマッタ……これは典型的な中二病の人だ。地雷を踏んでしまったかもしれない。
「オイ!お主。ここはどこなのじゃ!」
「えー……僕も今起きたばかりで何も解らないんですけど……
確か自分は原因不明の病気の医療技術が発見されるまで、冷凍されてるはずだったんですけど……」
「おーそうであった!
もう少しでお主の身体を乗っ取れる所だったのに、急に寒くなったと思ったら、妾も、お主と一緒に凍ってしまったのであった。ワッハハハ!」
ん……俺の身体を乗っ取る?
何言ってるんだ?
「あのー……俺の身体を乗っ取るって、どう言う事ですか?」
「言葉のままじゃ! お前の身体を乗っ取る事によって、妾は復活を果たし、世界を恐怖のドン底に落としてやる計画だったのじゃ! ワッハハハハ!」
意味が解らない。コイツ何いってるんだ。
もしかして、身体が動かせなくなる赤黒いアザと何か関係があるのか?
「あの……少しお尋ねしますけど、紅龍さんは、赤黒いアザと関係があるのですか?」
「んッ、赤黒いアザは妾の呪いじゃ!
お主の身体全身に侵食できれば、妾は完全体に復活できたのじゃ。
もう少しだったのに残念だったのう! ワッハハハハ!」
こいつのせいか。俺の小学2年から31才までの23年間、地獄の日々を送らされた原因は……
こんなふざけた中二病の奴に両親も妹も人生を狂わせられたのか……
だんだん怒りが込み上げて来た。
許さない! 殺してやる!
と、思ったが暗闇の中、相手がどこにいるかも解らない。
「お前のせいか! 出てこい! 殺してやる!」
「ワッハハハハ! 威勢がいいな! この紅龍様に喧嘩を売るとは、さすが、妾を封印した血筋の者じゃ!」
「勝負をするのは構わないが、妾と お主が殺し合うのは、もう無理じゃ。
どう言う理由か、妾の魂と、お主の魂が、一体化してしまってる様なのじゃ」
もう一体全体、アイツが何を言ってるか解らない……
アイツを封印した血筋?
アイツと俺の魂が一体化している?
それに、ここはどこなんだ?
真っ暗でアイツを殴る事もできない。
でも気のせいか……
今まで動かせなかったはずの下半身が少し動く様な気がする。
少し冷静になろう。
イライラしているとき程、怒ったり大声をだしては行けないのだ。
俺は病気だと思っていた23年間で学んだはずだ。
癇癪《かんしゃく》を起こして両親や妹を傷付けてしまった事を……
怒りからは何も生まれない。
少し時間を置いて冷静になってから、紅龍に質問してみた。
「先程は、頭に血が登って、カッとなってしまって申し訳ございません。3つ質問させてください。
まず1つ目、あなたを封印した血筋とはなんですか?
2つ目、私の魂とあなたの魂が一体化してるとは、どう言う事ですか?
3つ目、ここはどこですか?」
「ワッハハハハ! 妾は寛大なので、質問に答えてやろう!
1つ目の質問は、妾が大昔に、世界を恐怖のドン底に落としてやろうと、大暴れしてた頃、お主の祖先が謀《はばか》り、妾に酒を飲ませヘロヘロに酔っ払っていた所を、封印したのじゃ。
まあ、酔っぱらてたとしても、並の術者なら我を封印する事は出来ないだろうが、お主の祖先は並ではなかった。
多分、お主からは、奴と同じ匂いがするので、妾の封印を守る一族の末裔か何かだろう。
お主はあの強力な結界を簡単に解いてくれたからな。
感謝しておるぞ。ワッハハハハ!
2つ目の質問は、妾もよく解らぬ。
お主の身体を完全に乗っ取るつもりだったのだが、何故か、妾の魂と、お主の魂が合体したようじゃ。
簡単に言うと1つの魂に2つの人格がある状態じゃ。
ずっとお主に取り付いてたからかもしれんし、それが理由でもないかもしれん。
3つ目の質問は、妾も今目覚めたばかりじゃ! 何もわからん! ワッハハハハ!」
解った様な…解らない様な……
要するに俺の母親の家は、紅龍を封印した御先祖様の末裔にあたり、代々、紅龍の封印が解けない様に護って来たという訳か。
それが代を追うごとに、すっかり忘れ去られて、夏休みにおばあちゃん家に遊びに来た俺が、誤って封印を解いてしまったと……
確かに赤黒いアザができたのは、おばあちゃん家に行った時だ。
アイツにしてみれば俺は、自分を封印した者の憎き末裔……
俺に呪いをかけるだけの正当な理由はある訳だ。
それから2つ目と、3つ目の質問の謎が解らない今、アイツと対立するのは良くない選択だ。
どうもアイツは、中二病でとても頭が痛い感じだが、質問にもしっかり答えてくれるし、話は通じるみたいだしな。
「なんとなく理解しました。紅龍さんは、自分を封印した末裔の私を恨んでいるので、私に呪いをかけたと。
しかし、私としても、呪いをかけられていた23年間、とても苦しみました。
両親と妹も、私の呪いのせいで、とても苦労をかけてしまいました。
お互い様だと言われればそうかもしれませんが、私には納得できない所も正直あります。
しかし、今この状況について解らない事だらけです。
取り敢えず恨みは置いておいて、こん状況を脱する事が出来るまで、協力しませんか?」
「ワッハハハハ! ウダウタとまどろっこしい奴じゃのう!
妾は、誰も恨んでおらぬわ!
酔っ払っていたとしても、我を封印するのは誰もが出来る事ではない。
尊敬に値する事じゃ!
それから、お主を呪ったのは、たまたまじゃ!
封印が解けて弱っていた時にたまたま目の前に、魔力が強いお主がいたので、魔力を戻す為の依代にしたのじゃ!
目覚めた時、昔と違い大気中にほとんど魔素が無かったので、自力での完全復活ができんかったのじゃ!
しかし、お前も大したものじゃ!
妾の復活を食い止めたのだからな!
まさか、凍って魔力の供給を止めるとは我も思い付かなかったわ! ワッハハハハ!」
……いや、たまたまなんですけど、でも褒められると悪い気はしない。
こいつの行動は褒められる事ではないが真っ直ぐだ。
少なくとも、小学生の時の教師の様な、表面上だけいい人ぶる偽善者とは違う。
中には、両親や妹の様に親身になってくれる人もいた。でも褒めてくれた人はいなかった……
紅龍は褒めてくれた……
呪いにかかっていた23年間
誰にも褒められなかった……
褒められた理由は、自分が頑張った結果などではなく、たまたまだったのだが……
だが、嬉しかった。
呪いにかかった23年間。
いや、今まで生きて来た人生で一番。
それだけでも、こいつを許す理由になるのかもしれないな。
パシャッ!!
「んッ! 何じゃ!」
何かが破裂する音がしたら、それは突然始まった。
前後左右から攻撃が仕掛けられたのだ。
肉の塊の様な物が身体に押し当てられ、絶え間なく、身体を揉みくちゃにするのだ。
それは休み無く続けられ、為す術なく朦朧としたころ、それは聞こえた……
「ヒッヒッフー ヒッヒッフー」
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