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281. 火蓋

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「カルー! カルカルカルカルカルカルカルカルカルー!」

 カンガルー君を前衛とした戦略的な戦いによって、中央左手にいたロード級の敵を全て倒す事に成功した。

「次はシルマンを助けるわよ!
 カンガルー君とララは、シルマンから敵を分散させて!」

「了解!」

「カルー!」

 シルマンは1人で3匹のゴブリンロードとオーガロードを相手にしていたのだが、カンガルー君とララの2人の前衛職が参戦してくれたおかげで、オーガロード1匹だけを相手にするだけで良くなった。

「助かります!」

 元神龍教の神官で神龍式格闘術の達人であるシルマンが、オーガロードを押し始める。

 シルマンの動きは速い。

 今までは3匹の敵の動きを見ながら、なんとか応戦していたのだが、1匹となれば話は別だ。

 シルマンはこのダンジョンの攻略で、シャンティさんに集中的に鍛えられたのだ。

 シルマンは空を蹴り、3次元的な動きでオーガロードに攻撃を仕掛ける。

 オーガロードは、もはや対処する事もできない。

 攻撃を仕掛けても躱され、ついでにカウンターを食らうのだ。

 スカスカ、バキッ! スカスカ、バキッ!

 シルマンは的確にオーガロードを追い詰めていく。

「シルマン! 避けて!」

 シルマンの背後からミカサ·ムーンの声が聞こえた。

 シルマンはスっと、横に移動する。

 ドッキューン!

 ミカサの極限まで魔素を込められた魔法の矢が、オーガロードの眉間を貫いた。

「エギャァァァーーー!」

 ドサッ!

 オーガロードは、ミカサの魔法の矢が致命傷になり、前屈みで地面に突っ伏した。

「残り2匹よ! 一気に殺っちゃいなさい!」

「「「ハッ!」」」

 シャンティさんの激に『三日月旅団』の団員が、一斉に返事をする。

『三日月旅団』は、シャンティさんに鍛えられた恐ろしい程の連携で、あっという間ににロード級の敵を殲滅させてしまった。

「合格よ! これだけの戦闘が出来たら、胸を張ってSS級ギルドを名乗れるわね!」

「「「ありがとう御座います!」」」

『三日月旅団』のメンバー達は、シャンティさんに向かって直立不動で礼をする。

「他も終わったようね!」

 シンタローさんとシローさんの方を見ると『鷹の爪』の他のメンバー達と連携しなが、全ての敵を倒し終わった所だった。

「城に着く前にこれでは、先が思いやられるな!」

 シンタローさんが、長剣の血を振り落としながらシャンティさんに話し掛ける。

「そうね……これは流石に出直した方がいいかもね……
 思いの外、敵のレベルが高すぎるわね……」

「シャンティ様! 新手です!」

 突然、元拳神シロー·ムスタカが、声を出す。

「これは逃げられないわね……」

「空気がピリピリするぜ! シャンティさんどうする?
 どうやら相手は殺る気マンマンのようだぜ!」

 ダンジョンレイドチームの前に、2人の悪魔が現れた。

「森が騒がしいと思って来てみたら、エルフがいるとはな」

 1人の悪魔が、エリスさんだけを睨み付けながら、隣にいる別の悪魔に話かける。

「アア、エルフは皆殺しだ!
 ゾレイ、アスタロト様に報告しにいけ!」

「ハッ!」

「オイ! シャンティさん! どうするよ!
 奴ら、相当ヤバいぜ!
 それに、こいつらより強い奴まで呼んでくるようだぜ!」

 シンタローさんが、額に冷や汗を流しながら、シャンティさんに指示を仰ぐ。

「逃げるわよ! みんな、あの悪魔に一斉に魔法攻撃!
 シンタローとシローが殿で、兎に角、全力で逃げるのよ!」

 ドカーン!

 悪魔に一斉魔法攻撃を仕掛け、シルマンを先頭に、階段フロアー目指して走り出す。

「エッ!」

 ドッカーン!

 先頭を走っていたシルマンが、突然魔法で吹っ飛ばされた。

「イキナリ、魔法を放ってくるとは人間とは無粋な生き物だな」

 先程、一斉に魔法を浴びせた筈の悪魔が、いつの間にか逆側の階段フロアー入口側に移動していた。

「ど……どういう事ですか?
 確かに魔法攻撃を与えた筈なのに……」

 ミカサ·ムーンは驚愕の表情をして固まってしまう。

「瞬間移動ね! 伝説の高位の悪魔が使うという特殊スキルよ!
 しかし、その伝説の悪魔達も1000年前から今までずっと目撃情報が無かった筈だけれど……」

 シャンティさんが、悪魔の瞬間移動スキル見て伝説の悪魔について解説する。

「俺も知ってるぞ! 親父が言っていた!
 初代漆黒の森の王は、異界の悪魔を従えていたらしいと!
 そして、その悪魔達は、とんでもなく強く。
 その悪魔達を使って、初代漆黒の森の王は、漆黒の森を平定したと!」

「おや、私達の事を知ってる者の子孫の方ですか?
 貴方は、漆黒の森の関係者ですか?」

 悪魔はシンタローに興味を示し、質問してくる。

「俺は漆黒の森の陪臣の長男、ハラダ·シンタローだ!
 今は、世界一の剣士を目指し冒険者をしている!」

「成程、ハラダ·ゴンゾウの子孫ですか?
 そらなら、貴方は見逃して上げましょう。
 私達は、エルフ以外は興味がないですから」

「フン! 俺がエリスさんを置いて逃げ出す訳がないだろ!
 お前が先祖の知り合いだったとしても、侍の子孫が仲間を見捨てて逃げ出す訳がないだろう!」

 シンタローさんは、悪魔を睨みつけ言い放つ!

「そうですね。ハラダ·ゴンゾウの子孫ならその答えが正解です。
 貴方の実力がどれ程かは分かりませんけど、私を楽しませてくださいね」

 ズン!

 突然、空気が重くなる。

 悪魔の体から姫の魔素に似た、赤黒い闘気が溢れだす。

「それでは始めましょう!」

 悪魔が戦いの火蓋を切った。
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