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243. サンアリさん

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「な……なんじゃと!
 王宮3階から5階までは、スゥイートルームのみの宿泊施設になっておるじゃと!」

 ブリジアが王宮1階カジノをフラフラ探検していると、カジノの奥の北側に、ピカピカ輝く黄金の魔道式エレベーターを見つけたのであった。
 エレベーターの前にはカウンターがあり、執事風のデーモンが立っていたので、ブリジアは気になって聞いてみたのだ。

「全室スゥイートルームになっており、1泊100万マーブルからになっております。
 宿泊すると各部屋事に専用のコンシェルジュが1名付き、24時間いついかなる時もお客様のどのような御要望にも対応致しております。
 当宿泊施設にお泊まりになれば、誰もが漆黒の森の王様、お姫様気分が味わえる事ができるというコンセプトになっております」

 デーモン執事が丁寧に教えてくれた。

「頼みがあるんじゃが、聞いてくれるかのう?」

「なんなりと御要望して下さいませ、ブリジア様」

「少しだけ部屋を覗いてみたいんじゃが……」

 ブリジアは、申し訳なさげにお願いしてみた。

「何も問題ありません。ブリジア様は全ての施設をフリーパス、無料で使用できる事になっておりますので」

「そうじゃったのか?」

「そうでございます。王宮内の施設を無料で使える者は、グランドマスター、姫様、ブリトニー様、アン様、ペロ様、バハオウ様。
 そして、ゴトウ族でない者でフリーパスの権利をもっておいでなのは、ブリジア様ただ1人だけでございます」

「おぉーー!! 妾は凄いのう!」

「ハイ、ブリジア様は、我らゴトウ族にとって大切な御方ですから当然でございます。
 早速、私がご案内いたしましょう」

 デーモン執事が、ブリジアを黄金の魔道式エレベーターにエスコートする。

「ここの受付はどうするのじゃ?
 お主が居なくなってしまっては問題であろう?」

 ブリジアは、少し心配になり聞いてみる。

「既に、念話で代わりの者を読んでおりますので、心配は御座いません」

 デーモン執事が説明しているうちに、代わりの執事がやってきた。

「流石に、全室スゥイートルームだけしか無い宿泊施設なだけの事はあるようじゃな。
 仕事がスムーズじゃ!」

 ブリジアは『ウルフデパート』の経営者としての観点から、感嘆する。

「ではエレベーターが到着しましたので、こちらへ!」

 エレベーターが開くと、エレベーターガールがお出迎えしてくれる。

「漆黒の森王宮ホテルご利用ありがとうございます。 ブリジア様」

「済まぬな。忙しい所。妾は少しだけ覗かせてもらうだけなので、そんなに肩苦しく接しなくても大丈夫じゃぞ!」

「トンデモ御座いません! ブリジア様は、当ホテルにおいて最大のVIPでございますので」

 エレベーターガールは、恐縮して深々と頭を下げる。

「そうなのか?」

 デーモン執事の方を見て聞いてみる。

「そうでございます」

 デーモン執事はゴキ男爵がするような、洗練された礼をしながら答える。

「それでは上に参ります!」

 エレベーターが3階に到着すると、真ん中に豪華な噴水がある巨大なエントランスに到着した。
 様式はロココ調で統一されており、所々にソファーセットが設置されている。

「ガブリエル様お待ちしておりました。まずはソファーにお座り下さいませ」

 エレベーターの前で待っていた案内係の女性に、空いているソファーに案内される。

 ブリジアがロココ調のセンスの良いソファーに座ると、立派な装飾が施された本のような物がテーブルに置かれていた。

「それでは、当ホテルの説明を始めさせてもらいます。
 まずは、部屋の種類を選んで下さいませ」

 案内係は、そのままブリジアの横にソファーは使わず片膝をついてしゃがみ、テーブルに置かれていた本を開いた。
 どうやら立派な装飾がされた本には、部屋の説明や料金などが書かれているようだ。

「まずはスゥイートルームの説明を致します。お値段はゲストルームの数によって変わるシステムになっております。
 ゲストルームが無しで良い場合は100万マーブル、最高で5部屋のゲストルームが付く、殆どガブリエル様がお使いになっている部屋と同じ造りのお部屋が500万マーブルとなっております。
 当ホテルは、漆黒の森の姫様の暮らしを体験出来る事をコンセプトに造られたホテルでございますので、部屋の丁度品なども姫様のお部屋の丁度品を製作した同じ職人の作となっております。
 主寝室のベットだけが好みによって色々ご用意させてもらっておりますので、この本からお選びできるようになっております」

「成程のう。ご主人様の大奥と同じ造りと言う事じゃな!
 それは良いコンセプトじゃ!
 ただの高級ホテルとは、ひと味違う違いを産み出しているという事じゃな!
 実際に、ここは王宮じゃしな!
 王宮にホテルを併設させるなど、ぶっ飛び過ぎてる気もするのじゃが、それは置いておく方が良さそうじゃな。
 カジノやダンジョンが王宮にある時点で、既にぶっ飛んでおるからのう。
 そして、ダンジョンやカジノで儲けたお金を、ここで還元させるのが狙いなのじゃな」

 ブリジアは、この世界の商売人の中で1番の成功者、『ウルフデパート』CEOとしての視点で、この王宮を作り上げたサンアリの考えを考察する。

「成程のう。サンアリという男も中々やりおるわい。
 ご主人様の周りには、凄い者達がたくさん集まっておるようじゃな」
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