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233. 上司の命令
しおりを挟む「ウゲェー!! マジィーー!!」
ヤナトが、古いバージョンの姫ポーションを飲んで悶絶している。
「オウェ……」
激マズポーションを飲みたいと言っていたスイセイも、何故か一緒になって むせている。
「最近美味しい姫様のポーションばかり飲んでたから、久しぶりの激マズポーションは、前飲んでた時より更に激マズに感じるな……」
ヤナトが、何やら味の批評を始めた。
「確かに、前より不味く感じるが、またそれがいいんじゃないのか?
姫様にお仕置きされてる気がして、俺はとても興奮するぞ!」
スイセイがズボンにテントを張りながら、斜め上の批評をしている。
カレンは、不味いポーションを飲んでチンコをビンビンにさせているスイセイを見て、額から冷たい汗が垂れるのを感じた。
「それじゃあ、また始めるか!
クリスティーヌ、エンチャンターをかけてくれ!」
ヤナトが皆に声をかける。
「僕はいつでもOKですよ!」
セーレもやる気十分だ。
カレンは何かが違うと思いながらも、剣を抜く。
再び、ヤナトとスイセイが、セーレの前に飛び出し戦闘が始まる。
セーレはヤナトの攻撃を素手で防御しつつ、スイセイの斬撃は器用に躱している。どうやら、ヤナトの攻撃は全て防御して、スイセイの攻撃は全て避ける事に決めたようだ。
完全に舐められている……
セーレに対して、ヤナトとスイセイの激しい攻撃が続く。
「糞っ! 二人がかりなのに、全く勝てる気がしねえ!」
「僕は別に、全員でかかってきて貰っても構いませんよ」
セーレが、余裕綽々で回答する。
「セーレ君がそう言うなら、お姉さんも参加しようかしら!」
どうやら、クリスティーヌも参戦するようだ。
クリスティーヌの周りに、何十個もの魔法陣が浮かび上がる。
そしてそこから、高密度の魔素が練られた、尖った土の欠片が連射された。
「イテー!!」
「フギャッ!!」
ヤナトとスイセイの悲鳴があがる。
「クリスティーヌ! なんて事しやがる!
何で味方の俺に向かって魔法を放つんだ!!」
ヤナトが、クリスティーヌを怒鳴りつける。
「アラ、ごめんなさい。
アンタ達の動きが早すぎるから、適当に放っちゃった!
私の実力で、あんた達を躱しながら魔法を放つ事なんかできないんだから、あんた達が私の魔力を感知して避ければいいじゃない!
それに、後5分もすれば姫様のポーションが飲めるんだから、何も問題ないわよね!
それじゃあ、また魔法を放つわよ!」
ズダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ……
クリスティーヌが、有無を言わさず土魔法の弾丸を連射する。
「ウワッ! ウホッ! 痛っ! グフッ! イクッ!」
ヤナトとスイセイと、そしてセーレの叫び声が響く。
セーレは、ヤナトとスイセイの攻撃に加えて、クリスティーヌの土魔法の連射にまで対処できない。
ヤナトとスイセイの攻撃を躱しても、その場所にはクリスティーヌの土魔法が飛んでくるのだ。
それから、ヤナトとスイセイが動いた後の死角だった場所から、いきなり超至近距離で、土魔法の弾丸が殆ど0距離で現れたりする。
それを避けろというのは、流石のセーレでも無理な話だ。
「10分経ったわね! 休憩にするわよ!」
クリスティーヌが号令する。
ヤナトとスイセイ、それとセーレは、体中に土の弾丸が刺さり血だらけだ。
スイセイに至っては、お尻に土の棒が刺さっている。
「人間に、これだけの攻撃を受けたのは、これが初めてです」
セーレはボコボコになりながらも、気丈に答える。
カレンは少し、セーレの事が可哀想になった。
普通、こんなおバカな攻撃をしてくる敵などいない。
なにせ、自分達もセーレ以上にボロボロになっているのだ。
完璧に、頭がイカれているとしか言えない。
「ハイ! セーレ君! 美味しい方の姫様のポーションよ!」
クリスティーヌが敵であるセーレに、姫のポーションを渡した。
「???」
セーレとカレンは?マークだ。
「何故、敵である僕にポーションをくれるのですか?」
セーレが不思議な顔をしながら、クリスティーヌを見つめる。
「ゴトウ族の人間は、敵に回復魔法やポーションを与えるのは普通の事よ!」
クリスティーヌが、当たり前のように答える。
「普通って……」
「本当たぞ! 姫様やブリトニーの姉御なんかは、一度の戦いで最低10回は敵を回復させたりするぞ!」
ヤナトが自慢げにセーレに教える。
「今回の漆黒の森の支配者候補は、なんて優しい御方なんだろう」
よく分からないが、セーレが勘違いして感動している。
姫もブリトニーも、人を虫けら位にしか思っていないのに……
姫は、サイトの偉大さを解らせる為だけに、敵がサイトの事を偉大と言うまで、ひたすら殺しては生き返らせる無限ループをしているだけだし、ブリトニーに至っては、猫がネズミを遊びながら いたぶって殺すが如く。
自分の欲求が満たされるまで、殺しては生き返らせるを、ひたすらマンコを濡らしながら続けているだけなのだ。
二人とも、敵に対して慈悲の心など、これっぽっちも持ち合わせてはいない。
姫が唯一優しいのは、ゴトウ族なった人間だけなのだ。
セーレは感動しながら、姫のポーションをゴクリと飲んだ。
「こ……これは凄いですね!
まるで、初代漆黒の森の王の回復魔法のようです。
体の傷や体力の回復だけではなく、魔素まで回復するとは!」
「そうだろ! 姫様は凄いんだ!
なんてったって、俺達の姫様だからな!」
ヤナトが胸を反らし、得意げになって答える。
「ウーン……僕としてはガブリエル様で決まりで良い気がしますが。
我らも一枚岩でないので、すみませんが、上司の命令通り皆さんを倒させてもらいます!」
セーレが飲み終わった姫のポーションを地面に置いてから、そう宣言した。
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