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178. パラダイス

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「それでは、冒険者会議を閉会いたします。
 次の冒険者会議は、4月1日になりますので、忘れずにお越し下さいませ」

 進行役の元『拳神』シロー·ムスタカが閉会を宣言した。

「『鷹の爪』『犬の肉球』『犬の尻尾』『三日月旅団』の皆様は、少しお待ち下さいませ!
 大規模クエスト、レイブの説明を致しますので」

 レイブに参加しないギルドが、帰って行くと、シローが話し始めた。

「今回の大規模クエストは、大規模とは言いましても、少数精鋭で行きたいと思います!
『犬の肉球』のエリス様とシャンティー様には、必ず参加してもらいます!
 ドラクエル様のご予定は、どうなっておりますか?」

「ドラは、忙しそうだから無理みたいよ!
 でも、アンが居れば大丈夫でしょ!
 ドラが言うには、タンクとしての才能は、自分よりあると言ってたもの!」

「アン様は、盾役をおやりなのですか。
 背中に、担いでいる大盾を見れば解るだろ! とは、突っ込まないで下さいませ。
 S5未攻略ダンジョンでは、盾役がとても重要になります。
 ですが、その盾では防御しきれません。
 新しい大盾を新調なさった方が良いかと思います。
 せめて聖級、いや、やはり神級を用意して下さいませ!
 S5レベルの未攻略ダンジョンでは、自分の腕だけでは、どうしようもないレベルの化物がウヨウヨ出てきます。
 S4未攻略ダンジョンまでなら、才能がある者なら武器など、それ程大した意味を持ちませんが、S5レベルになると武器や防具の力も最大限に使っていかないと太刀打ちできないのです!」

 シローが真剣な顔をして、アンちゃんに語りかける。

「ウーン……でもこの大盾は、初めてのサイト君からの贈り物だし……
 できれば、僕はこの大盾で戦いたいんだけど」

 アンちゃんは、俺がなんとなく買ってあげた大盾を、とても大事に思って使ってくれていたのか……
 しかし、今回はS5以上のレベルの未攻略ダンジョンの探索だ。
 もし、アンちゃんが敵の攻撃を受け止めたとしても、大盾の方の強度が足りず壊れてしまったら、その攻撃を直接アンちゃんが受け止める事になってしまう。
 大盾を破壊する程の攻撃なのだ。
 アンちゃんの生身の体など消し飛んでしまう。
 そんな事はあってはならない!
 アンちゃんは俺の物だ!
 俺より先に死ぬ事など、あってはならないのだ!

「アンちゃん! また俺が新しい盾を買ってやるから、その盾は諦めろ!」

「エッ! サイト君、何言ってるの?
 大丈夫だよ! この大盾を神級までチューンするから!
 出来れば、自分1人で改造するつもりだったんだけど、時間もなさそうだから、ガン爺に手伝ってもらってすぐに仕上げるよ!」

「エッ……そんな事できるの?」

「何言ってるんだよ! 僕もドワーフ族の端くれだよ!
 お父さんは、世界一の武器職人だし、小さい時は、ドン爺、ガン爺、ゾイ爺に武器、防具、魔道具造りの英才教育を受けていたんだよ!
 才能だけなら、弟のヨネンより上だと言われてたんだからね!」

 アンちゃんは、メイド服の腕を捲り、何故か力こぶを作ってみせた。

 職人の才能と力こぶに、何の関係があるのかは解らないが、防具の専門家、ガン爺さんが手伝うなら問題ないだろう。

「それなら、心配はなさそうですね。
『鷹の爪』のメンバーは問題ないとして、『三日月旅団』のメンバーは誰が参加するのですか?」

「団長の私と、後、精鋭の4人、合計5人で参加したいと思います!」

「それぞれの職種は、何ですか?」

「私はアーチャー、件、精霊魔術師で、他に魔法剣士と、大賢者、テイマー、神官です」

「魔法攻撃で、押し切るタイプですね。S5の攻略済のダンジョンなら、そのメンバー構成でも何とかなりますが、未攻略ダンジョンでは、階段フロアーがマトモに使えないので、多分、魔素不足に陥りますね。
 S5ダンジョンでは、上級結界は効きません。『鷹の爪』も『犬の肉球』もそれぞれ、上級結界以上の結界を張れる術を持っています!
 団長さんは、どうやらハーフエルフのようなので、そこそこの魔素総量がおありのようですが、それでも全く足りません!」

 何やら『三日月旅団』が、シロー爺さんに、滅茶苦茶ダメ出しされている。

「シローちゃん、そんなにイジメなくても、私がフォローするから大丈夫だよ!
 その代わり『三日月旅団』は、私に絶対服従だ!」

 シャンティー様が、『三日月旅団』に手を差し伸べた。
 というか、下僕にした。

「それでは、レイブ決行は1週間後の朝8時とします!
 それまでに準備を整えておいて下さいませ!
 集合場所は、この場所でお願い致します!
 では、解散!!」

「『三日月旅団』のメンバーは、集まりなさい!
 アンタ達は、今日から特訓よ!
 1週間後までには、みんなの足でまといにならないように、トコトン鍛えるから!
 1時間後までに、準備を整えて1階エントランスに集合!!」

「ハイ!!」

 どうやら『三日月旅団』は、従順にシャンティー様に従うようだ。

「サイト君! そうと決まったら僕達『犬の尻尾』も、アジトのダンジョンで特訓するよ!」

 何気に、アンちゃんが1番ヤル気になっている。

 アンちゃんもエリスさんと同じように、冒険大好き少女だった。

 1人で大陸を渡り、ソロでダンジョン攻略をしてたくらいだからな。

 アジトで特訓するのか……
 そういえばアジトのダンジョンは、現在5S級まで成長したと言ってたな。

 ゴキ男爵は、どこまで強くなっているんだ?
 ダンジョンが5S級なら、ラスボスの実力はS6クラスか……

 多分、俺など瞬殺される。

 て、いうか、シャンティーさん達どこで特訓するつもりなんだ?

 多分、どこかの未攻略S5ダンジョンでだろう。

 ハッ!!

 そしたら、うちのアジトで特訓するのと同じ事ではないのか!

 エリスさん達との特訓なら、俺も少しは楽しめる筈だ!

 というか、パラダイスだ!!

 こ……これは、なんとしても、
 アジトのS5ダンジョンを、エリスさん達に使用して貰らわなければ!!
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