上 下
176 / 286

176. S6?

しおりを挟む
 
「我々『漆黒の森』としては、元々の領土を、ただ取り返すだけの事。
 なので、冒険者ギルドは、『漆黒の森』の領土問題に関しては、不干渉でお願いしてもらいたい」

 サンアリが、冒険者会議の参加ギルドにお願いする。

「今回の多数決は、『漆黒の森』が領土を取り返すのを認めるか、それとも、今までの慣例の様に、1領主3領土ルールを適用するかどうかになります!」

 進行役のシロー爺さんが、多数決を取り仕切る。

「それでは、『漆黒の森』の領土奪還を認めないギルドは挙手して下さい!」

「『鷹の爪』は拒否権を行使する!
 正直、俺達『鷹の爪』は未攻略ダンジョンの攻略しか興味がないのでな。」

「『三日月旅団』も以下同文です!
 私達も拒否権を行使します!」

「『神聖フレシア』は、『漆黒の森』が力を持ちすぎるのには反対だ!」

 ギルド『神聖フレシア』団長ナナル·バン·フレシアはそう言って、手を挙げた。

 ギルド『雷』も、何も言わずに手を挙げている。

「他のギルドの皆さんは、『漆黒の森』が、元の領土を奪還しても良いという考えで宜しいですかな?」

 進行役のシロー爺さんが、挙手をしなかったギルドの者達に聞く。

「元々『漆黒の森』は、ダークエルフさん達の領土だったんだから、取り戻す事の何がいけないの?」

 エリスさんが、頭を横に倒し、不思議そうな顔をしている。

「私達はあまり関係がないから、本当はどうでも良いけど、子供の頃から知ってるアンの所属しているギルドの案件だから、取り敢えず賛成しておくわ!」

 シャンティーさんも、一応賛同してくれている。

「先程のブリジアさんの話を聞いて、『漆黒の森』の正統な統治者は、そこのダークエルフの姫様において他にない事が解った!
 俺達『天空の翼』も、同じくサンアリさんを支持する!」

「『肉好き同盟』も同じく、サンアリ殿を支持するぞ!」

「妾は、元より始まりの魔女様とダークエルフの盟約を見守る立場であるのでな!
 当然、ダークエルフによる『漆黒の森』の支配を望む」

「『プッシーキャット』も当然、姫様による『漆黒の森』統一を望むのニャ!
『漆黒の森』の出身として当然なのニャ!」

『プッシーキャット』のブリトニーの話し方にそっくりな、隻眼のエロそうな団長も俺達に支持してくれた。

「支持は、『犬の尻尾』も含めて6票。
 不支持は2票。
 拒否権を行使したギルドが2票。
 という事で、『漆黒の森』の件に関しては、冒険者ギルドとしては、不干渉とする事に決まりました」

 進行役のシロー爺さんが、そう宣言した。

 終わってみれば、上手くいった。
 サンアリが『肉好き同盟』を引き込まなくても、ブリジアを仲間にした時点で、勝敗は決まっていたように思える。

 しかし、俺達が冒険者ギルド会議のメンバーになっていなければ、どうなっていた事やら。

『神聖フレシア』は絶対に反対したろうし、『雷』も今回と同じように反対するだろう。
 他のギルドは興味がないので拒否権を行使しするとして、賛成するのは『漆黒の森』の出身者が多い『プッシーキャット』だけで、俺達に対して討伐クエストが発動されていた可能性が高い。

 そう思うと、冒険者ギルド会議のメンバーになった事は正解だった。

 ムササビ自治国家に来て思ったのだが、やはり、こちらには化物が、やたらにいる。

 元『拳神』シロー·ムスタカもそうだし、エリスさんにも歯が立たない。
 というか、攻撃自体が効かないし、全て跳ね返ってくる。

 他の上位ギルドの実力も解らないし、俺達への討伐クエストが発動されていたら、多分ひとたまりもなかっただろう。

 チラッとサンアリの方を見ると、感無量といった感じで、ウルウルしている。

 まだ、何も終わってないのだがな。
 北の大魔王を倒した訳でもないのに……

「これで、今回の会議の重要な案件は全て終わりましたが、他に何かございますか?」

 進行役のシロー爺さんが、会議のメンバーを見渡す。

「1ついいですか?」

 三日月旅団の団長のエルフっぽい女性が発言した。

「何ですかな?」

「今回、ここに来る途中で、新しく出現したばかりの未攻略ダンジョンを発見したのですが、そこから溢れ出していた魔物が、全てSS級だったのです。
 取り敢えず、ダンジョンから出て来ていた魔物は全て討伐して、ダンジョンの入口に、冒険者ブレスレットで上級結界をかけておいたのですが、多分、あのダンジョンは5S級か、それ以上と思われますよ」

「5S級以上だと!
  そ……それは本当なのか! 
 今までに発見されているダンジョンは5S級までだ。もしそれ以上だったら、大発見だぞ!」

 さっきまで無口だったギルドランキング第1位「鷹の爪」の団長が、目を輝かせて興奮している。

「フム。1階層からSS級の魔物ですか。
 今まで発見されている8つある5S級のダンジョンでさえ、1階層ではS級の魔物しか出現しませんからな。
 もっと下の階層から出てきた可能性はありますが、取り敢えずそのダンジョンを調査した方が宜しいですな!」

 何やらシローがブツブツ言っている。

「それなら、その役目『鷹の爪』が引き受けよう!」

『鷹の爪』の団長が立ち上がると、他のメンバー達も同時に立ち上がった。

 どうやら『鷹の爪』はダンジョン攻略中毒の軍団らしい。

「私も参加する!」

 エリスさんも立ち上がり、何故かめちゃくちゃヤル気になっている。

 そういえば、アンちゃんがエリスさんは三度の飯より冒険大好きだと言ってたな……
 しかし、これはエリスさんと、行動を共にするチャンスだ。
 俺はエリスさん達に嫌われてるようだが、冒険者ギルド会議のメンバーとしてのダンジョンの調査なら自然と近付ける筈だ!

「ハイ! 俺も参加します!」

「わ……私も参加するのです!」

 会議中、興味がなかったのか一言も喋らなかった姫が、久しぶりに俺に賛同した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生したら男女逆転世界

美鈴
ファンタジー
階段から落ちたら見知らぬ場所にいた僕。名前は覚えてるけど名字は分からない。年齢は多分15歳だと思うけど…。えっ…男性警護官!?って、何?男性が少ないって!?男性が襲われる危険がある!?そんな事言われても…。えっ…君が助けてくれるの?じゃあお願いします!って感じで始まっていく物語…。 ※カクヨム様にも掲載しております

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜

墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。 主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。 異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……? 召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。 明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

俺のスキル『性行為』がセクハラ扱いで追放されたけど、実は最強の魔王対策でした

宮富タマジ
ファンタジー
アレンのスキルはたった一つ、『性行為』。職業は『愛の剣士』で、勇者パーティの中で唯一の男性だった。 聖都ラヴィリス王国から新たな魔王討伐任務を受けたパーティは、女勇者イリスを中心に数々の魔物を倒してきたが、突如アレンのスキル名が原因で不穏な空気が漂い始める。 「アレン、あなたのスキル『性行為』について、少し話したいことがあるの」 イリスが深刻な顔で切り出した。イリスはラベンダー色の髪を少し掻き上げ、他の女性メンバーに視線を向ける。彼女たちは皆、少なからず戸惑った表情を浮かべていた。 「……どうしたんだ、イリス?」 アレンのスキル『性行為』は、女性の愛の力を取り込み、戦闘中の力として変えることができるものだった。 だがその名の通り、スキル発動には女性の『愛』、それもかなりの性的な刺激が必要で、アレンのスキルをフルに発揮するためには、女性たちとの特別な愛の共有が必要だった。 そんなアレンが周りから違和感を抱かれることは、本人も薄々感じてはいた。 「あなたのスキル、なんだか、少し不快感を覚えるようになってきたのよ」 女勇者イリスが口にした言葉に、アレンの眉がぴくりと動く。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

男女比1:10000の貞操逆転世界に転生したんだが、俺だけ前の世界のインターネットにアクセスできるようなので美少女配信者グループを作る

電脳ピエロ
恋愛
男女比1:10000の世界で生きる主人公、新田 純。 女性に襲われる恐怖から引きこもっていた彼はあるとき思い出す。自分が転生者であり、ここが貞操の逆転した世界だということを。 「そうだ……俺は女神様からもらったチートで前にいた世界のネットにアクセスできるはず」 純は彼が元いた世界のインターネットにアクセスできる能力を授かったことを思い出す。そのとき純はあることを閃いた。 「もしも、この世界の美少女たちで配信者グループを作って、俺が元いた世界のネットで配信をしたら……」

処理中です...