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173. お約束

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「第5位『肉好き同盟』さん!」

「ウス!!」

 ラガーマンがラガーマンらしく返事をした。

「第6位『雷』さん!」

「ハイ」

「第7位『三日月旅団』さん!」

「居るよ!」

「第8位『犬の肉球』さん!」

「はぁぃ!」

 エリスさんが、元気に返事をする。
 やはり、エリスさんは超絶可愛い!
 何とかお友達になりたいのだが、俺は何故だがエリスさんに超絶嫌われてしまっている。

「第9位『プッシーキャット』さん!」

「ハイニャ!」

 どこかで聞いた事がある返事だが、ブリトニーではない。

 聞く話によると、ブリトニーと同じ猫耳族が中心になって結成された、漆黒の森出身者の猛者ばかりが集まるギルドらしい。

 先程、『プッシーキャット』の面々は、ブリトニーを見つけて挨拶に来ていた。

 猫耳族は漆黒の森に暮らす部族だ。

 因みに犬耳族もいて、犬耳族は、西の大陸 静寂の森が縄張りであるらしい。

 猫耳族と犬耳族はとても仲が悪く、お互い見かけると、罵りあいの喧嘩が始まる。

 それは置いておいて、ブリトニーは漆黒の森の猫耳族の王族のお姫様だったらしいのだ。

 漆黒の森のダークエルフは、色々な種族を治める王の中の王なのらしい。

 日本で例えるなら、徳川家がダークエルフの一族。姫の親戚筋にあたるサンアリは尾張徳川家、ブリトニーの猫耳族は会津藩といった感じだ。

 もしかしたら、ダークエルフの一族が天皇家かもしれない。

 取り敢えずは、そんなところだ。

 よくわからないが、ブリトニーは猫耳族のスターなのだ。

 若くして、A級冒険者最年少記録を打ち立て、未攻略S級ダンジョンの最年少ソロ攻略。
 尚且つ、あまりの凄まじい暴れっぷりで有名になり、エリート中のエリート漆黒の森の近衛騎士に、最年少で登り詰めた猫耳族のスターであり、ダークヒーローなのだ!

 多分、冒険者を続けていたら今頃、ギルドランキング9位『プッシーキャット』の団長は、ブリトニーにとって変わっていただろうと言われる程の逸材だったようだ。

 ただ、あまり漆黒の森以外でブリトニーが知られていないのは、冒険者だった時期が短かすぎるのと、活動したのが漆黒の森だけだった事に起因する。

 そのブリトニーと『プッシーキャット』の猫耳族は、ロービーで『神聖フレシア』の副団長を務める犬耳族の『拳帝』犬飼·ゴロウを発見するやいなや、ひたすら、犬飼さんに向かってメンチを切りまくっている。

 これは、冒険者ギルド会議が始まる前のお馴染みの光景で、会議が始めるとメンチを切るのをピタリと止めるのだが、
 今回は猫耳族の王族であるブリトニーが参戦した事により、『プッシーキャット』の面々が、いつもより張り切り、会議中の今も、犬飼さんにメンチを切り続けているのだ。

 犬飼さんは、『神聖フレシア王国』の王子の護衛も兼ねているので、本当は頭にきているのだと思うのだが、ずっと無視して我慢し続けている。

 神聖フレシア王国は、代々、国の外の見識を広げさせる為に、第1王子を『神聖フレシア』の団長にする習わしがあるのだ。

 そんな事もあり、元々は猫耳族と犬耳族の争いなのだが、神聖フレシア王国の王子は子供の時から、漆黒の森の猫耳族にメンチを切られ続ける事により、生粋の漆黒の森嫌いになるというのが、通過儀礼となっているのだ。

「オイ! 進行役! 奴らをどうにかしろ!
 もう会議が始まってるというのに、いつまでもジロジロ見られて、とても不快なんだが」

 神聖フレシア王国王子、ナナル·バン·フレシアが業を煮やし、進行役の初老の男性に文句を言った。

「『プッシーキャット』の皆様方、既に会議は始まっておりますので、メンチを切るのはおやめ下さいませ」

 進行役の初老の男が、優しく『プッシーキャット』の面々に諭す。

「うるさいのニャ!
 これは猫耳族と犬耳族の問題なのニャ!
 外野はすっこんでろと言うのニャ!」

 何故か、ブリトニーが『プッシーキャット』に代わって、進行役の初老の男性に食ってかかった。

 進行役の初老の男の眉がピクリと動いたと思った瞬間、凄まじい闘気が進行役の初老の男性から溢れ出す。

 ウッ!!

 突然の圧で、俺とした事が一瞬気を失いそうになってしまった。

 この優しそうな爺さん、只者ではないぞ……

 ブリトニーは爺さんの闘気を一身に浴びて、オシッコをチビってブルブル震えている。

「オイ! 元『拳神』が、冒険者会議に初めて出席したルーキーをビビらせて、どうするつもりじゃ。
 この者は、妾の客人じゃぞ!」

 ブリジアが元『拳神』だという爺さんを睨みつける。

「も……申し訳ございません、ブリジア様。
 何ぶん、会議の進行に支障をきたしましたので、少し大人しくしてもらおうと、思った次第でございます」

 進行役の爺さんが、ブリジアに頭を下げる。

「まあ良いわ! とっとと会議を進行させるが良い!」

 年の功か、どうやらこの元『拳神』の爺さんは、ブリジアに頭が上がらないようだ。
 いくら元『拳神』だといっても、3000歳オーバーの不死の魔女ブリジアにとっては、産まれたばかりのヒヨっ子なのだ。

 それにしても、あの『拳神』の爺さん凄まじいな……
 ブリトニーは、仮にも『剣帝』だぞ。
 やはり、拳神と剣帝とでは、かなりの実力差があるようだ。

「それでは、ブリジア様にお叱りを受けましたので、いそいそと会議を進行させていきたいと思います。
 まずは、モフウフの冒険者ギルドから上がってきた、案件から始めたいと思いますが宜しいですかな?」

 冒険者会議の進行役の元『拳神』の爺さんは、何事も無かったように、会議を進行させようとする。

「オイ! チョット待った!
 ギルドの点呼はどうなったのだ!
 俺達のギルド『天空の翼』はまだ呼ばれてないぞ!」

『天空の翼』剣帝グラムが、お約束のように立ち上がり、進行役の元『拳神』の爺さんに突っ込むのだった。
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