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144. 宣言

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「ウオォォォォォ……!!
 姫様一行が、ハラハラを統治する魔王をやっつけたぞ!」

「流石は、我らの姫様だ!
 強力な仲間を引っ提げて、ハラハラ城塞都市を一瞬で制圧してしまったぞ!」

「姫様! 万歳! 漆黒の森万歳!」

 ハラハラ城塞都市の正門外で、事の成り行きを静観していた検問待ちをしていた人々が、大歓声で盛り上がる。

「そこをどくのです!
 マスターが通るのです!」

 腰を抜かしたまま座り込んでいたハラハラ城塞都市の衛兵に、姫が言い放つ。

「う……うわぁぁぁ…………!」

 衛兵達は、森の中に怯えた声を上げて走りさった。

「ウオォォォォォ!
 姫様ぁ……!! 漆黒の森正統継承者の姫様が、ハラハラ城塞都市を再び魔王の手から奪還したぞぉー!」

 益々、街はヒートアップする。

「と……取り敢えず、街に入るか。
 腹も減ったし、休憩したいしな」

「ハイなのです!」

「ハイニャ!」

「了解です!」

「ワン!」

 姫とブリトニーとアンちゃんとペロが返事をする。

 城塞都市の中に入ると、凄い騒ぎが起こっている。

 突然、巨大な銀狼が飛んできたと思った瞬間、王城を粉々に破壊してしまったのだ。

 城塞都市の外にいた者なら、事の成り行きを理解できるが、城塞都市の中の者には理解できる筈がない。

 普通、突然ブリジアのような神獣クラスの化物が有無を言わさずに、王城を粉々にする事など有り得ない。

 それなりの大義名分があって、宣戦布告をしてから、戦闘行為をするものだが、それを全てすっ飛ばしている。

 まあ、ブリジアの大義名分は、元々、漆黒の森は、始まりの魔女の土地で、その土地に勝手に我が物顔で支配しだした害虫を駆除した感じなのだろう。

 冒険者ギルドとかに何か言われたら、ブリジア式の大義名分で乗り切るしかないな……

 そうこうしてるうちに、ブリジアが俺達に気付いて空から降りてきた。

 ハラハラの街の人々は、王城を破壊し終わった怪物が、街にも攻撃してくると勘違いし、パニック状態だ。

「ブリジア、その神獣モードだと街の人々が怖がってしまう。
 いつもの人型になりなさい」

「ハイワン!」

 ブリジアが、いつもの狼耳族ぽい裸の幼女に変身した。

 この格好の方が、もっとダメだったか……

 12、3歳位に見える美幼女が、街中を裸で歩き回ったら、街の風紀を乱す行為で、お巡りさんに捕まるかもしれない。

 この世界に、お周りさんがいたらの話だが……

「ブリジア、何か服を着た方が良いのではないか?
 常識的に、公衆の面前で恥ずかしいだろ」

「嫌だワン! 私は元々狼だワン!
 狼が服を着る事のほうが、常識的におかしいワン!」

「そ……そうか……」

 どうやら、俺にはブリジアに服を着させる事ができないようだ。

 何故ならブリジアは、俺のオナペットなのだが、俺より相当強い。

 本物の強者は、どのような格好でも許されるのだ。

 何故なら、誰も注意する事もできないし、直させる事もできないからだ。

 まさに、これが、リアル裸の王様という奴だな。

 確かに、服嫌いな狂犬に服を無理矢理着させようとしても、手をかじられるのが関の山だ。

 ブリジアは、服嫌いなペットという位置づけなら、おかしな事ではないかもしれない。

 そう、俺はおかしくない。

 ブリジアは、俺のオナペットなのだ!

 オナペットが裸で何が悪い!

 俺は、周りの者にどう思われようがへっちゃらだ。

 ロリコン大魔王で、なんら問題ない。

 大魔王は普通、欲望の限りを尽くすものだ。

 それならば、俺は大魔王として普通だ!

 普通とは中庸だ!

 そう中庸なのだ!

 中庸なら問題ない!

 何故なら、中庸とは正義!

 中庸とは、宇宙の真理なのだ!

 俺の心が、整ってくると、ブリジアの降り立った場所に、姫とペロがいる事に気付いたハラハラの街の人々が、恐怖から一転、喜びと大歓声に変わった。

 俺の心配を他所に、どうやら誰もブリジアが裸の事を気にしていなかったようだ。

「姫様だ! 漆黒の森の姫様だ!
 姫様が、お立ちになられたという噂は本当だったんだ!」

「ケルベロス様ぁー!」

「あの巨大な銀狼は、多分、姫様の使い魔だな!
 姫様は、ケルベロス様まで使い魔にしているというし、あれ程、強力な使い魔を使役していても、なんらおかしくないよな!」

「漆黒の森統一だぁー!」

「姫様ぁー! こっち向いてぇー!」

「あの裸の狼耳族の幼女なんで裸なんだ?」

「さっき、自分の事、狼だと言っていたぞ!」

「さっきの銀狼が、狼耳族に化けているという事か?
 変身能力まであるという事は、神獣レベルなのか?」

「姫様は、ケルベロス様に続いて、違う神獣まで使い魔にしておられるのか?」

 何やら、ブリジアは姫の使い魔という事になっているようなので、ここは訂正しないでおくのが得策のようだ。

 間違っても、俺のオナペットだとバレると体裁が悪い。

「て、言うか、あの裸の幼女は、どう見ても『シルバーウルフ』の団長、不死の魔女ブリジアだろ!
 最近、姫様達が所属している『犬の尻尾』に負けて傘下に入ったて聞いたぞ!」

「えー! じゃあ、不死の魔女ブリジアって本当は神獣だったの?」

 ブリジアのモフモフした狼耳が、ピクピクっと動いた。

 そして、フワリと空中に浮いて、周りの視線が自分に向いている事を確認する。

「妾は、ある時は『シルバーウルフ』の団長。
 そしてまたある時は、始まりの魔女様の可愛いペット。
 そして今現在は、始まりの魔女様のお弟子様であらせられる、大魔王ゴトウ·サイト様のオナペット、不死の魔女ブリジアだワン!」

 ブリジアは、形の良い小ぶりな胸を突き出し、大きな声で宣言した。
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