上 下
137 / 286

137.サイトの休日(2)

しおりを挟む
 
 ヤンヤンに、「ゴトウ様、何をやってるんですか?」と言われても、俺自身、一体何をやってるのかイマイチ解らない。

 しかし、やっとヤンヤンが俺の事に気付いてくれた。

 流石は、『犬の尻尾』専属広報といった所か。

 先程ぶつかった時に、俺だと全く気付いていなかったので、『犬の尻尾』専属広報を首にしてやろうと思っていたのだが、どうやらヤンヤンは首の皮一枚で、首が繋がったようだ。

「モフウフの街の探索だ!」

 改めて、先程のヤンヤンの、「一体何をしてるのですか?」という質問の答えを返した。

「騒がしいな。ん、ゴトウ·サイトか。
 丁度良い。話したい事があったのだ。
 ここではなんだから、ギルト長室に来てくれ」

 モフウフ冒険者ギルド長のマンコーが、エントランスが騒がしかったので、様子を見に来たようだ。

 俺は言われたまま。マンコーの可愛らしくプリッとしたお尻を眺めながら、3階にあるギルド長室に着いて行った。

「サイト、漆黒の森正統継承者であるガブリエル·ツェペシュが、モフウフを新しい王都にするという話は、私を通じて冒険者ギルド本部に伝えた。
 これにより、世界中にある冒険者ギルドで号外として、この話が伝えられたようだ。
 それにより、漆黒の森は戦乱になるだろう。
 北の大魔王は、表向き3つの城塞都市しか治めていない事になっているが、実際には、漆黒の森の3分の1の城塞都市を、北の大魔王が支配している。
 しかし、漆黒の森正統継承者ガブリエルが立ち上がったとなれば、話は別だ。
 漆黒の森の王家に仕えていた者達が、ガブリエルを旗印に集まってくるだろう。
 それでだ。
 実際に、兄上の所にニャンゴンの城主が連絡を入れて来たらしい。
 私の所にも、ケルベロス教の総本山があるイヌヤマから、お前にアポを取り付けてほしいと連絡があった。
 知っての通り、ニャンゴンは、ブリトニーの父君が城主をしている。
 娘の暮らしぶりを見る次いでに、モフウフに来たいらしい。
 イヌヤマの方も、ペロ様がどういう場所に住んでいるか見たいらしいので、こちらもモフウフに来るそうだ。
 それで、頼みなのだが、ニャンゴンとイヌヤマにある『ミノ1番』の【聖級結界】と【聖級移転】を少しの間、ニャンゴンとイヌヤマの関係者が通れるように解放して欲しいのだが」

 ニャンゴンとイヌヤマが味方になってくれるのは大歓迎だが、ブリトニーの父親には会いたくない。

 誰が好き好んで、自分が性奴隷にしている父親と、会いたいというのか。

「ゴトウ·サイト、どうしたのだ?」

 マンコー·サンアリが、不思議そうな顔をして、俺の顔を覗いてきた。

 この人は何で気付かないのだ?

 普通の感覚として、性奴隷にしている相手の父親に会う事など、できる筈がない。
 どんな顔をして、顔を合わせれば良いのだ。
 マンコーは、長寿命のダークエルフなので、その辺は疎いのか?
 ダークエルフにとって、人間の寿命など一瞬だ。
 奴隷になったとしても、暫く我慢すれば、人間の方が死んでしまう。

 マンコーに、正論を説いても無駄だな……

「分かった。イヌヤマとニャンゴンの【聖級結界】と【聖級移転】を解放しよう。ただし、それぞれ3人限定だ。
 ゴトウ族以外の人間が3人だけ通れるようにする」

 条件付きで、OKを出した。

「それでは先方に連絡するので、少し時間をもらえるか?
 そうだ! ゴトウ·サイト、お使いを頼めるか!
 どうせ、暇なのだろう。
 用事もないのに、冒険者ギルドでうろついているくらいだからな。」

「や……やはり暇そうに見えたのか……
 そうだ、確かに俺は暇を持て余している。
 姫やブリトニーがいないと、全く目標がない、ダメニートになってしまうようなのだ……
 だから頼まれてやる!
 それではマンコー·サンアリ! 俺は何をすれば良いのだ!」

 俺は開き直り、マンコーに強気に聞いた。

「ア……アア……
 ただ、兄上に先程の話を伝えて欲しいだけなのだが……」

 俺が良くわからない強気な態度で、お使いを承諾したので、マンコーは引き気味にお使いの内容を教えてくれた。

「そ……それだけか……」

「ああ……それだけだ……
 すまぬな……」

 マンコーは申し訳なさそうに返事をした。

 ーーー

 街の様子を散策しがてら、『ミノ1番』に移動する。
 相変わらず、誰も自分に気づかない。

 俺はモフウフの支配者なのだぞ……

 俺の前に、モフウフの支配者をやっていた牛魔王でさえ、皆に認知されていたのに……

 暗い気持ちになりながら歩いていたら、いつの間にかサンアリがいる、『ミノ1番』の社長室の前に到着していた。

 トントン!

「どうぞ!」

 ガチャ!!

「サンアリ! お使いに来たぞ!」

「これはこれは、ゴトウ殿!
 先程、私もゴトウ殿に用事がありましたので、アジトに赴きましたが、お出かけのようでありましたので。

 で、お使いとは、マンコーに会ったのですか?」

「そうだ! マンコーに、お前がニャンゴンの件で話があると聞いたので、その要件について俺の見解を話に来た。
 先に答えを言うと、3人だけ【聖級結界】と【聖級移転】を通れるようにする」

「ハッ!それで、問題ありません。
ニャンゴンからは、城主のガルム·ロマンチックと息子のブリトー·ロマンチック、ブリトニー様の姉君のカレン·ロマンチックが、モフウフの新王都に来る予定だと申しておりましたので」
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

職種がら目立つの自重してた幕末の人斬りが、異世界行ったらとんでもない事となりました

飼猫タマ
ファンタジー
幕末最強の人斬りが、異世界転移。 令和日本人なら、誰しも知ってる異世界お約束を何も知らなくて、毎度、悪戦苦闘。 しかし、並々ならぬ人斬りスキルで、逆境を力技で捩じ伏せちゃう物語。 『骨から始まる異世界転生』の続き。

うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞 ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。 そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

処理中です...