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128. 『犬の尻尾』専属広報ヤンヤン
しおりを挟む「ゴトウ様! こちらの部屋に、モフウフの町長と、モフウフの冒険者ギルド長がお見えです!」
『犬の尻尾』付き受付嬢ヤンヤンに連れられて、モフウフ冒険者ギルド会館3階にある、ギルド長室に案内された。
トントン!
「『犬の尻尾』のゴトウ·サイトです!」
ギルド長室の扉を叩き、名前を名乗る。
「ゴトウ殿!」
中から聞き慣れた声が聞こえ、扉が開かれた。
「お待ちしておりました!
ゴトウ殿!」
そこには、サンアリが立っていた。
「なんで、サンアリがここにいるんだ?」
不思議に思い、質問する。
「じ……実は『ミノ1番』の他に、モフウフの町長をやっております。
町長と言っても、実質は牛魔王殿がモフウフを治めておりますので、形だけなのですがね」
サンアリは、黙っていた事に少しだけ後ろめたさがあるのか、遠慮気味に打ち明けた。
「おお! そうだったのか!
で、そちらの女性がモフウフの冒険者ギルド長なのかな?」
サンアリの隣にいる見た目20歳位の、クールビューティーなダークエルフの冒険者が目に付いたので、サンアリに質問する。
「ハッ! ゴトウ殿! 彼女がモフウフの冒険者ギルド長で、私の妹のマンコー·サンアリで御座います!」
マンコー·サンアリは片膝をつき、頭を下げ、
「マンコー·サンアリと申します!
ゴトウ殿と姫様に永遠の忠誠を誓います!」と、宣言した。
「エッ?! 何でギルド長が頭を下げるの?」
一緒について来ていた、自称『犬の尻尾』付き受付嬢のヤンヤンが、ビックリして固まってしまっている。
いきなり、モフウフの冒険者を束ねるギルド長が、一介の冒険者に永遠の忠誠を誓うと言っているのだ。
理由を知らなければ、誰だって固まってしまうだろう。
前に聞いた話だと、サンアリの一族は、元々、漆黒の森王家のダークエルフに任命され、モフウフ城塞都市を治める城主の家系であったらしい。
漆黒の森王家は、代を追う事に力を弱めていき、漆黒の森領地内の城塞都市を次々と魔王に奪われていった。
そのうちの一つがモフウフの城塞都市である。
サンアリの一族は、モフウフの城塞都市を魔王に奪われた後も、モフウフの名家として代々町長として街の運営に関わってきたのだ。
因みに、サンアリ家は、漆黒の森王家と古い姻戚関係にあり、漆黒の森の王家に絶対の忠誠を誓っている。
「モフウフの城主、町長、ギルド長を配下にしたという事は、俺は完全にモフウフの街を手中に治めたという事になるのか……」
「そうでございますな!」
サンアリが、満足気に答える。
普通は、冒険者ギルドは中立でなければならないのだが、たまたまモフウフの冒険者ギルド長が、サンアリの妹なのだ。
大体、引退した有力冒険者が、出身の街のギルド長に任命される事が多いらしいので、マンコーと言うヤラシイ名前のサンアリの妹が、モフウフの街の冒険者ギルド長に任命されていたとしても、おかしくない話なのだが、それにしてもマンコーは、引退した冒険者の筈なのに若く見える。
サンアリは50代位に見えるが、マンコーは、まだ20代位にしか見えない。
「マ……マンコーよ……
冒険者ギルド長をやるのには、若く見えるんだが、一体お前は何歳なんだ?」
マンコーという名前を呼ぶのに、恥ずかしくて抵抗があったのだが、気になっていた事を聞いて見た。
「ハッ! 私は120歳になります!」
「120歳!!」
「ハイ、エルフ族は長寿ですので、120歳でもひよっこなのです!」
「ハハハハハ……そうか……
120歳ならモフウフの冒険者ギルド長をやっていてもおかしくないな!
で、サンアリよ!
俺をここに呼んだ理由は何だ?」
「ハッ! ゴトウ殿!
まずは妹の紹介と、これからのモフウフの街についての相談であります!」
「おお! そうか!
俺も丁度、サンアリに相談したい事があったのだ!」
そして、先程モフウフの街に歩いてくる途中に考えた妄想を、サンアリに全て話してみた。
「フムフム、成程、それは良い考えですな!
是非、やってみましょう!
ゴトウ殿の考えが上手く行けば、モフウフを漆黒の森の王都にする計画も成功するでしょう!」
「エッ?! 王都?」
「そうです! ゴトウ殿!
モフウフの街を、漆黒の森の王都にするのです!
漆黒の森の正統継承者の姫様がおいでになる所が、漆黒の森の中心なのです!
ゴトウ殿の計画を実行すれば、モフウフの人口も増えますし、街も大きくなります!
ウム。そうですな。モフウフの街とアジトのダンジョンを繋げるだけではなく、『犬の尻尾』のアジトを中心にして一回り大きな城塞都市にしてはどうですかな!
『シルバーウルフ』の人員も取り込んでおりますので、工事の人手も足りております。
早速、ドン様に『新 漆黒の森王都』の都市設計図面を描いてもらいましょう!」
サンアリはそう言うと、すぐさま、ドン爺さんに会いに出かけて行ってしまった。
「ゴトウ様! これは一体全体どうなっているのですか?!
話が壮大過ぎて、ついていけないんですけど!」
自称『犬の尻尾』付き受付嬢のヤンヤンが、キャンキャン騒いでいる。
「シッ!! なのです!
貴方は『犬の尻尾』専属広報ではないのですか?
この程度で驚いているようでは、専属広報とは呼べませんね!」
姫が、キャンキャンうるさいヤンヤンに問いかける。
「専属広報?」
「そうなのです!『犬の尻尾』専属広報なのです!
仕事としては、『犬の尻尾』とマスターの偉大さを世に広める事が、1番大事なお仕事なのです!
『犬の尻尾』専属広報になると、特典もたくさんあります!
『犬の尻尾』のアジトに自由に出入りする事もできるし、お給金もたくさん貰えるのです!
それから、私がたまに頭をモフモフ撫でてあげるのです!
ヤンヤンは『犬の尻尾』の専属広報ではないのですか?」
「やります! やります! 是非やらせて下さい!
私は『犬の尻尾』専属広報ヤンヤンです!」
「そうですか! そしたら最初の仕事は静かにする事ですね!」
応援ありがとうございます!
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