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127. きな臭い話
しおりを挟む元第83ダンジョンである『犬の尻尾秘密基地』から、モフウフの街に歩いて向かっている。
距離にすると10分程で、モフウフの街から1番近いダンジョンである。
モフウフの街の人達には、既に『犬の尻尾』が、第83ダンジョンをアジトにしている事が知れ渡ってしまっている。
2週間前の『シルバーウルフ』との戦いの打ち上げで、モフウフの街に繰り出した牛魔王と『カワウソの牙』のおバカな面々が、事のあらましや、全ての秘密を酔った勢いで全て話してしまったのだ。
街の人、殆どの人達が、『犬の尻尾秘密基地』の事を知っているんじゃ、もう秘密基地とは言えない。
名前を変えるか……
実際に『犬の尻尾秘密基地』というネーミングはちょっと長いのでは……
と、思っていたので丁度良い機会だったのかもしれない。
よし変えよう!
「姫! 『犬の尻尾秘密基地』の名前を変えようと思うんだが、何か良い名前はあるか?」
「……? ワンちゃんやキラキラおじさん達は、アジトと呼んでいたのです!
マスター以外は、みんな『犬の尻尾秘密基地』の事をアジトと呼んでいたのです!」
なんという事だ……
俺だけが、『犬の尻尾秘密基地』と呼んでいたのか……
確かに、『犬の尻尾秘密基地』というネーミングは長ったらしかった。
それならそうと教えてくれれば良かったのに……
これも、組織のトップの宿命なのか……
皆、遠慮して、おかしいと思ってもNOと言えないと言う事か。
これからは、風通しの良い企業風土にしようと思うサイトであった。
ーーー
暫く歩くと、モフウフの城塞都市の門が見えてきた。
いつもは、牛魔王の城に設置してある【聖級移転】を使うのだが、今日はお忍びではないので、門から入る事になる。
S級ギルドは、検問パスだがそれでも少し並ばないといけない。
いつも【聖級移転】を使っていると、並ぶのも面倒くさい。
サイトは、不意に壮大な計画を閃いた。
モフウフの街と、アジトを合体させれば良いのではないかと。
実際、アジトとモフウフの街は歩いて10分程と、それ程離れていない。
アジトのダンジョンは、今現在は、『シルバーウルフ』が不毛の攻略を続けているので、一般冒険者は立ち入り禁止なのだが、しばらくしたら一般冒険者に解放するつもりだ。
しかし、アジトのダンジョンは、5Sダンジョンなので攻略中の『シルバーウルフ』のメンバーにも死人が出ている。
死人がでると、ダンジョンを監視している偵察魔道具『ゴキアルファ』が、ゴキ男爵が運営するダンジョン管理センターに連絡し、死体を5分以内に回収して、姫が作ったポーションで生き返らせるという行為をひたすら、この2週間続けているのだ。
これは姫が作ったポーションが、30分以内に死んだ人間なら生き返らせる効果がある事で可能なのだが、この『シルバーウルフ』で試しているシステムを使って、前の世界のゲームの世界のように、ダンジョン内で死んだとしても、セーブポイントに戻り、生き返れるダンジョンを運営すれば、儲かるんじゃないかと考えていたのだ。
そして儲ける仕掛けとして、現在『シルバーウルフ』が全滅してしまわないように、たまに宝箱に、食料やポーションを紛れさせて、ダンジョン攻略を続けさせているのだが、このように宝箱の中に食料とかではなく、貴重な物を入れて置けば、冒険者がたくさん集まってくるかもしれない。
貴重な物なら、いくらでも用意できる。
姫のポーションでも良いし、ドン爺、ガン爺、ゾイ爺の試作品の武器や防具、魔道具を入れて於けば、入場料を取ったとしても喜んでお金を払うだろう。
そうだ!
ダンジョンの中で死んだら手持ちお金の半分を奪ってやろう!
ドラ〇エシステムだ!
そして、ダンジョンが有名になって、人がたくさんモフウフの街に集まって来れば、宿屋が足りなくなる。
新しく建設する宿屋の土地は、モフウフの街とアジトのダンジョンの間にある土地を使えばいい。
これで、モフウフの街とアジトのダンジョンが1つの街として繋がるので、いちいちアジトとモフウフの街を、行き来するのに検問を受けなくて良い!
完璧だ!
早速、サンアリに計画を話してみるか!
いつものように妄想していたら、いつの間にかモフウフの冒険者ギルド会館に到着していた。
冒険者ギルド会館の前の中央広場には、テーブルがたくさん置かれていて、巨大なビアガーデンのようになっている。
毎年、ハッピーニューイヤーのお祭りをやっているらしいのだが、今回は『犬の尻尾』がギルドランキング10位以内が確実なので、それも兼ねたお祭りなのだそうだ。
既に、モフウフの街の殆どの住民は酔っ払い、出来上がっている。
「アッ! ゴトウ様! 姫様!『犬の尻尾』の皆様!
こちらにいらして下さい!
モフウフ冒険者ギルド長と町長がお待ちです!」
モフウフの冒険者ギルド会館前の中央広場に着いた途端、自称『犬の尻尾』付きのヤンヤンに、すぐに発見されて大声で呼び出される。
「オッ! 今日の主役が登場だぜ!」
「この街から、ギルドランキング10位以内のギルドが誕生するなんてな!」
「流石は元漆黒の森の姫様だ!」
「近年は、あまりギルドランキングに変動がなかったが、今年は少し変わったな!」
「『犬の尻尾』すげぇぜ!
何せ、始まり魔女の弟子と漆黒の森の正統王家の姫様、ケルベロス教次期生神様にならせられるペロ様と、漆黒の森3大偉人がタッグを組んだギルドだぜ!」
「オイオイ! それだけじゃないぜ!
勇者パーティーの副団長でドワーフ国の王の娘のアンさんと、数年前、漆黒の森で話題になった最年少で闘気も使えないのにソロで未攻略S級ダンジョンを攻略してしまったブリトニーまでいるんだぞ!」
「なんなんだ、このギルドは!
殆ど最強じゃないか!
それに、既に牛魔王も配下になってるらしいぞ!
この前、牛魔王と酒場であった時に、酔いつぶれて、『ガブリエル様ぁぁぁ……殺さないでえぇぇぇ……潰されるのはイヤなんでえすぅぅぅ……勘弁して下さいぃぃぃ……』て、泣き崩れていたからな……」
「兎に角、『犬の尻尾』はこの街の誇りだ!
漆黒の森の元王家の姫様が、この街を拠点にしているのだから、近々モフウフが、漆黒の森の新しい王都になるんじゃないのか!」
「そしたら、いよいよ北の大魔王が黙っていないんじゃないのか?
近々、漆黒の森の頂上決戦が始まるぞ!」
何やら、きな臭い噂が流れ始めるのであった。
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