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120. ペット

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 大浴場に到着すると、どこからともなく現れたデーモンメイド達が、ガリクソンとアンちゃんの鎧や衣服を手際よく脱がして、スッポンポンにしていく。

 ガリクソンは自分だけではなく、アンちゃんまで裸にされているのに気付き、目をそらす。

「す……すまぬ……
 見るつもりは無かったのだ。
 あまりの突然の事で、見るつもりは無かったのだが、見えてしまった」

 ガリクソンは、ビンビンに反り返った立派なイチモツを両手で抑えつけながら、謝罪する。

「大丈夫ですよ。
 ここは混浴ですので。
 ガリクソンさんは、堂々としていて下さい」

 アンちゃんが、何事も無かったかのように返答する。

「サイト様がお待ちですので、急いで入って下さい!」

 メリルが、顔を赤くしてオドオドしているガリクソンに早く大浴場の中に入るように、督促する。

「サイト様! ガリクソン様がお見えににりました」

 メリルが大浴場の扉を開けながら、サイトにガリクソンが到着した事を伝える。
 サイトは、姫をいつものように抱っこし、その後ろにブリトニーが覆い被さるいつものスタイルでお風呂に入っていた。

「うむ、そうか。それでは姫とブリトニーは、アンちゃんと3人で、体の洗いっこでもしていなさい!」

 姫とブリトニーに、アンちゃんとボディー洗いをするように命じ、『シルバーウルフ』副団長ガリクソンとの話し合いに備える。

「ハイなのです!」

「ハイニャ!
 ドラクエルをアンアン言わせるのニャ!」

 アンちゃんとのボディー洗いが、三度の飯より好きと公言しているブリトニーが、張り切って洗い場に走って行った。

「先ずは、お前!  ゴトウ族のお風呂のマナーに倣《なら》って、まずはかけ湯をするのだ!」

 ガリクソンは慣れた手つきで、かけ湯をする。

「何だ! お前!  この世界の者とは思えない所作をしているな」

 サイトは、ガリクソンのあまりに優雅なかけ湯に、感嘆した。

「ハイ!  魔女様に教わりました!」

 ガリクソンが嬉しそうに返事をする。

「魔女って、不死の魔女ブレジアの事か?」

 サイトが不審に思い、ガリクソンに尋ねる。

「違います!  始まりの魔女様です!」

 ガリクソンが答える。

「ん……始まりの魔女様?
 お前……始まりの魔女を知ってるのか?」

「ハイ!  知っております!」

 サイトの額から、滝のような汗が溢れだす。
 まずい……まずいぞ……
 始まりのの魔女は、ずっと昔に死んでたんじゃなかったのか……
 いや、死んでる筈だ。
 俺がこの世界に初めて来た場所に、魔女っぽい服装をした白骨死体があった。
 見た感じ、相当風化していた。
 建物の屋根も無かったし……
 いや待てよ……
 もしかしたら、あの骸骨は始まりの魔女ではなく別人の可能性はないのか……
 兎に角、まずい。
 俺の変態的な行いは、全て、始まりの魔女に教わった事になっているのだ。
 ブリトニーなどは、多分、始まりの魔女の事をド変態魔女だと思っている筈だ。
 兎に角、落ち着くんだ、まずは探りを入れよう。

「き……君は、始まりの魔女と、どのような関係なのだね?」

「ハイ!ゴトウ様、私は始まりの魔女の眷族です!」

「け……眷族ぅぅぅ……」

 何という事だ……始まりの魔女の眷族だと……
 と、いう事は、こいつは、俺が始まりの魔女の弟子を騙る偽物だと知って、俺に会いに来たという事か……

 なんの為に……

 始まりの魔女が、怒っていると伝える為か……

 俺は、始まりの魔女を怒らせる行いを、たくさんしている。

 間違いなく、殺されるレベルだ……

「ゴトウ様、魔女様はどこに居られるのですか?」

 ん……どういう事だ……
 こいつは始まりの魔女の眷族なのに、始まりの魔女の居場所も知らないのか?
 余計解らなくなってきたぞ……
 見た感じ、俺が始まりの魔女の弟子というのも疑ってないようだし……
 兎に角、探ってみるか。

「君は、始まりの魔女といつから会っていないのかね?」

 まずは、時間軸を調べないと、誤魔化すにしても話が進まないからな。

「1000年前です!」

 ガリクソンが答える。

「1000年?!」

「ハイ! 私と不死の魔女ブリジア様は、魔女様の眷族だったのですが、1000年前にお使いを頼まれて、帰ってきた時には【聖級結界】が魔女様の家の周りに張り巡らされていて、それ以来、魔女様の家に戻れなくなり魔女様とは会っておりませぬ!」

 そういう事か……
 ならば、この男が俺の事を知らなくても、何ら、おかしくないという事か。
 俺は、始まりの魔女の結界の中に、ずっといた事になっている。
 結界の中に入った事がないこの男と、ブリジアは、俺の事を知らなくてもおかしくない。
 しかし、この男とブリジアが1000歳以上という事は、俺よりも歳上だ。
 俺は敬語を使った方がいいのかが、逆に気になる。

「お前は、始まりの魔女の眷族といったな! その割には、強くない気がするのだが?」

「ハイ! 私は、魔女様の料理と身の回りの世話をしておりました、ただの下僕でございます!
 ゴトウ様のような、魔女様のお弟子様ではございませんので!
 剣術も、魔女様の痕跡を探す冒険をしているうちに、なんとか剣帝と呼ばれる程度になった次第であります!」

 フムフム、こいつより俺の方が魔女の弟子という立場上、偉いという事か。
 実際には、始まりの魔女の弟子でも、ましてや、会った事もないのだがな。
 あまり年齢は気にする事もなく、今のまま偉そうにしていれば良いのだな。
 後は、ブリジアの立ち位置さえ解れば、乗り切れそうだ。

「で、俺はずっと聖級結界の中にいたので知らないのだが、ブリジアは始まりの魔女の何なのだ?」

「ブリジア様は、魔女様のペットの銀狼でございます。
 子供の時に、怪我をしていた所を拾われて、長い間魔女様と一緒に暮らしていく内に、喋れるようになり、尻尾がいつの間にか二股に割れて、魔法も使えるようになり、人型にも変身できるようになったと言っておりました」

「『シルバーウルフ』の団長は、始まりの魔女のペットだったという事か?!」

「左様です。元はただの銀狼です。
 しかし、3000年生き続けた事により、今では、神獣になっておりますが。
 所でブリジア様は、今どのような状況ですか?」

 ガリクソンは、急にブリジアの事が気になり始めたのか、ソワソワし始めた。

「今は『犬の尻尾秘密基地』のダンジョンを攻略している所だな。
 今は、7階層を攻略しているみたいだな」

「左様ですか……
 ブリジア様は、魔女様に会いたい一心で、『シルバーウルフ』を立ち上げました。
『シルバーウルフ』を必要以上に大きな組織にしようとしていたのも、魔女様の痕跡を探すのには、大きな組織の方が都合が良かったからです。
 何卒、ブリジア様にご慈悲を」

 ガリクソンは、土下座をして頭を下げた。

「そういう事か、ならば、同じ始まりの魔女の縁者として、寛大な処置をしよう。
 但し、『犬の尻尾』に歯向かったバツは与えなくてはならない。
 よって、1ヶ月程度、ダンジョンで冒険をしてもらうとする」

「ありがとうございます!
 ですが、このダンジョンはどうなっているのですか?
 調査の結果、B級からA級のダンジョンだった筈ですが……
 神獣であらせられるブリジア様なら、難なく突破できる筈だったのですが……」

 ガリクソンが不思議な顔をして尋ねてくる。

「ゴキ男爵が言うには、今は、5S級のダンジョンになってるらしいぞ!」

「5……5S級……
 5S級のダンジョンを攻略できるのは、ギルドランキング1位の『鷹の爪』と、勇者パーティーの2つしかありません!
 そのダンジョンを根城にしているとは、さすがは、魔女様のお弟子様であらせまする!」

「そ……そうなの」

 ガリクソンは、地面に、頭を擦りつけながら平伏するのだった。



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