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119. 3000歳

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「それでは、お前の主《あるじ》ゴトウ·サイトと始まりの魔女の関係を聞かせてもらおうか!」

 牛魔王との戦いが終わり、負けを認めた瞬間、ガリクソンは牛魔王に詰め寄り、サイトと始まりの魔女の関係を聞いてきた。

 牛魔王は、モフウフ街全体からの歓声を体全体に浴びて悦に浸っていたのだが、そんな事もお構い無しに、ガリクソンは牛魔王に詰め寄ってくる。

「お前……ついさっき、俺様に負けた奴には見えないな……
 本当に本気を出して、俺様と戦っていたのか?」

 牛魔王は、ガリクソンが負けた事を全く悔しそうにしていない為、一応本気だったか聞いてみた。

「ああ、私は本気だったぞ!
 しかし、死ぬ気では戦ってはいない。
 それよりも、始まりの魔女の消息の方が大事な事なのだ!」

 ガリクソンは鬼気迫る迫力で、牛魔王に詰め寄ってくる。

「しかし、俺様も、始まりの魔女には会った事もないし、大ボスしか知らないんじゃないのか?
 ア……アン嬢ちゃん……
 助けてくれよ……
 ちょっとコイツ、目が血走って怖いんだが」

 今、牛魔王とガリクソンが再び戦えば、確実にガリクソンが勝ちそうな勢いだ。

「ガリクソンさんは『犬の尻尾』に、もう敵意はないのですか?」

 アンちゃんガリクソンに質問する。

「ない。と言えば嘘になるが、始まりの魔女の情報は、『シルバーウルフ』にとって、根本に関わる重要な事案なのだ!
 始まりの魔女の情報さえ、教えてもらえれば、『犬の尻尾』からは、完全に手を引く」

 ガリクソンは必死な形相で、アンちゃんに懇願する。

「わ……分かりました。
 一応、サイト君に確認をとってみます。
 メリルさん! サイト君にどうするか聞いてきてくれませんか?」

「アン様の仰せのままに」

 メリルはそう言うと自分の影の中に溶けるように消えた。

 暫くすると、牛魔王の城からメリルが戻ってきた。

「サイト様は、丁度今からお風呂に入るようです。
 なので、お風呂に入りながら腹を割って話そうと申しておりました。
 モフウフの城の【聖級結界】と【聖級移転】をガリクソン様にも通過できるように、サイト様が解放して下さいました。
 それから、こちらの冒険者バックの中に、姫様の作られたポーションがあります。
 サイト様が『シルバーウルフ』の死んだ者を優先して飲ませるように仰せになりました。
 上手く行けば生き返るかもしれません」

 メリルはそう言うと、『シルバーウルフ』の獣王クマオに、姫が作ったポーションがたくさん入った冒険者バックを渡した。

「それでは、ガリクソン様、コチラについて来て下さい!」

 メリルはガリクソンをモフウフの城の中にある【聖級結界】と【聖級移転】に案内する。

「オイ! メリル、大ボスの方はどうなってるんだ?」

 牛魔王が『犬の尻尾秘密基地』の事が気になったのか、メリルに質問する。

「何も問題はありません。
 普通にお風呂に入れる位には余裕ですね」

「そうか! そりゃぁそうだよな!
 ワッハッハッハッハ!
 なんたって、俺様の主様だ!
 何も心配する事はなかったか!
 それじゃぁ! 俺様は街に繰り出すとするか!
『シルバーウルフ』を倒した街の英雄がこのお祭り騒ぎに参加しないのは、バツが悪いからな!」

 そう言って、牛魔王は、モフウフの街に上機嫌で消えていった。

 牛神さんや、ヤナト達『カワウソの牙』の面々も、どんちゃん騒ぎに参加したいのか、牛魔王の後についていった。

 ただ、牛田さんだけは、自分の破壊されたお家を呆然と見つめているのだった。

 ーーー

「ガリクソン様、コチラでございます!」

 メリルが、【聖級結界】を通過するように即す。

「こ……これは、始まりの魔女様の結界ではありませんか?!」

 ガリクソンが目をうるうるさせながら、【聖級結界】を、目を凝らして食い入るように確認している。

「ガリクソンさん、何をしてるんですか?」

 後から付いてきていたアンちゃんが、ガリクソンに質問する。

「本物の始まりの魔女様の結界か、確認している所です!」

 ガリクソンは答える。

「サイト様が、お待ちです!
 速やかに移動して下さい!」

 トロトロしているガリクソンにキレ気味に、メリルが注意する。

「そ……そうだったな、済まぬ」

 ガリクソンはメリルに注意されたので、渋々【聖級結界】を通過し、【聖級移転】の前に立った。

「オオォォ!! これは正しく魔女様の【聖級移転】だ!
 この魔法が使えるのは、魔女様だけ!
 やはり、ゴトウ·サイトが魔女様の弟子と言うのは本当だったのか!?」

 ガリクソンは興奮して、【聖級移転】の魔法陣の回りを食い入るように見て回る。

 バキッ!!

「五月蝿い、騒ぐな、サイト様を呼び捨てにするな、客人じゃなかったら殺しているぞ」

 メリルの鉄拳が、ガリクソンの顔面にヒットする。

「グウォォォ……」

 ガリクソンは鼻血を垂らして、もんどりうっている。

「ガリクソンさん……大丈夫?」

 アンちゃんがガリクソンに回復魔法をかける。

「アン殿、す……すみません。
 魔女様の痕跡を、連続して発見しましたので、興奮してしまいました」

 ガリクソンが謝罪する。

「た……確かに、ゴトウ様が魔女様のお弟子様ならば、私などが、ゴトウ様のお名前を呼び捨てにできる身分ではありませんでした。
 すみませんでした。メリル殿」

 ガリクソンは、メリルに深々と頭を下げる。

「解れば良いです。それでは『犬の尻尾秘密基地』に移動します」

 3人がモフウフの城にある【聖級移転】に入ると、『犬の尻尾秘密基地』最下層の1番大浴場に近い、【聖級移転】ポットに移動した。

「オオォ!  まさしく、魔女様の【聖級移転】です!」

 ガリクソンの興奮は収まらない。

「ガリクソンさんは、始まりの魔女とお知り合いだったのですか?」

 アンちゃんは、大浴場の道すがらガリクソンに質問する。

「ハイ! 私とブリジア様は、約1000年前まで魔女様と一緒に暮らしておりました」

「そ……そうなんだ……
 そしたらガリクソンさんの年齢は1000歳以上なの?」

「ハイ、私とブリジア様は、魔女様の眷族になって以降、不老不死になっておりますので、現在の私の年齢は1532歳ですね!
 因みに、ブリジア様は、私よりも遥か昔に、魔女様の眷族になっておられますので、確か3000歳位だと仰っておりました。
 それゆえ、不死の魔女ブリジアと呼ばれるようになったと思われます」

「3000歳……」

 アンちゃんが3000歳という年齢に驚愕しながら、歩いている内に、いつの間にか大浴場に到着した。


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