上 下
110 / 286

110. 人員確保

しおりを挟む
 
「自分達の立場が解りましたか?
 私達『犬の尻尾』にとって、貴方達の命などどうでも良い事なのです。
 ですが、マスターの計らいによって、高待遇で、仲間に迎えると仰られているのに、断るなんて考えられません!」

 そう言ってから姫は、その場にいる『シルバーウルフ』2軍、3軍、全ての者を圧殺した。

 ペシャン!!

「姫! 何してるんだ!」

 階段フロアーの【聖級結界】の中で待機していた、ゴトウ·サイトとブリトニー、そしてゴキ男爵が、急いで姫とバハオウの元に移動してきた。

「姫!  言っただろ!
 サンアリが『ミノ1番』チェーン展開化の人員が欲しいって!
 それなのに、全員殺したら駄目だろ!」

「しかし、この者達は、マスターの考えた提案を断ったのです!
 生かす価値などないのです!」

 姫は涙目で訴える。

「そ……そうか……分かった……
 姫は、俺の為を思って『シルバーウルフ』を殺してくれたんだな。
 しかし、『犬の尻尾C』に入団したいと言ってた子もいただろ!
 兎に角、全員生き返らせてもう一度、丁寧に勧誘してみるんだ!」

「ハイなのです!」
 姫が涙を拭い、元気に返事をする。

 姫が『シルバーウルフ』700人に回復魔法をかけると、一瞬の内に、全員ある程度のダメージを残されたまま生き返った。

「皆様方、マスターのご慈悲なのです!
 感謝するのです!」

 姫が高らかに、俺のお陰だと宣言する。

「わ……私達、生き返ったの……」

「あ……ありえない……
 死んだ者を……生き返えらすなんて……」

「か……神様ぁ……」

「700人、全員を生き返らすなんて、どれだけの魔素を、あの小さい体に秘めているのだ……」

「ケルベロス様を召喚させたと言う噂は、本当だったのか……
 俺はてっきり、まだ子供だったケルベロス様を攫ってきただけと思っていたのだが、その考えは間違いだったようだ……」

「悪魔だ、悪魔の子だ!」

「た……助けてくれ、死にたくない!」

 イラッ

「貴方達!  マスターへの感謝を忘れていませんか?」

 ベシャ!

 また『シルバーウルフ』700人が圧殺された。

「姫!」

「マ……マスター!  すみませんなのです!  マスターへの御礼がなかったので、思わず、カッ!!  と、なってしまったのです」

 姫が言い訳をして、また『シルバーウルフ』700人を生き返らせた。

「今すぐに、マスターへの御礼を言うのです!」

「……」

『シルバーウルフ』の面々は、恐怖の余りオシッコやウンコを漏らして固まってしまっている。

 姫は闘気の圧力を強めていく。

 ミシミシミシ

「早く殺されたくないなら、御礼を言うのです!」

 姫は殺気を漲らして、御礼の強要をする。

「姫様……ありがとうございました」

「違う!!」

 ベシャ!!

「ひ……姫! 『シルバーウルフ』にとって、恐怖の対象は姫になっていると思うぞ!
 今の奴らに冷静に考える能力など、無くなってる筈なんだ。
 だから、言わせたい事がある場合、しっかり断定して、誘導して、言わせれば問題ないんじゃないのか?」

「ハ……ハイなのです!」

 姫は、何故か嬉しそうだ……
 俺に何か教えて貰える事が、相当嬉しいみたいだ……

 姫はまた、『シルバーウルフ』700人を生き返らせた。

「今度は失敗は許しません!
 貴方達、私の言った言葉の後に続くのです!
 では始めるのです!
 『始まりの魔女のお弟子様で、我ら愚民をお導き下さる。至高の大魔王ゴトウ·サイト様!』」

『シルバーウルフ』700人は、ガクガク震えながらも、必死に姫の後を復唱する。

「……は……始まりの魔女のお弟子様で、我ら愚民をお導き下さる……
 至高の大魔王ゴトウ·サイト様……」

「ハイ! 次なのです!
 『私達シルバーウルフ一同を、生き返らせてくれて、誠にありがどうございました!』」

「……わ……私達、シ……シルバーウルフ一同を、生き返らせてくれて、誠にありがとうございました……」

「全然駄目なのです!
 今、私の後に続かかないで、マスターに謝っていない者が数人いました!
 全体責任なのです! 
 皆んな揃って謝れるようになるまで、何度でも殺しますので、そのつもりでお願い致します!」

 ベシャ!!

『シルバーウルフ』700人は、また圧殺された。

 いつものように、姫の圧殺、回復魔法のコンボをたらふく食らった『シルバーウルフ』700人は、いつの間にか全員、ゴトウ族に種族が変わっていた。

 まあ……ほんの30分の内に、生と死を何十回も繰り返すのだ。

 普通の人生では味わえない程の絶対的恐怖を、何度も何度も繰り返し繰り返し味う事など、滅多に経験できるものではない。
 価値観が変わり、種族まで変わる事もあるのだろう。

 サンアリには300人程度の人員が欲しいと言われていたのに、結局の所、700人もゴトウ族にしてしまって、どうしたものかと考えていると、ゴキ男爵が、『ミノ1番』チェーン展開化計画を、漆黒の森だけではなく、南の大陸全土に広げれば問題ないとの事だった。

 ここからは、ゴキ男爵とサンアリの仕事だ。

 ゴキ男爵が、徹底的に調教して企業戦士に育て、サンアリが運営する会社に、うまく人員を振り分けて、稼がせるという訳だ。

 やはり、良い部下を持つと楽だ。
 勝手に、上手い事やってくれる。
 俺の仕事は、あまり口差しせずに任せる事だ。
 そうすれば、部下が自分で考えるようになり、企業も発展する。
 そして、俺の仕事は、従業員に飴を与える事だ。
 サンアリとゴキ男爵が厳しく従業員を鍛え、俺が飴を与えれば、従業員は俺の事を、話の解る、良い社長だと思うだろう。フフフフフ……。

「元『シルバーウルフ』の諸君!
 今日は、ゆっくり休むが良い!
 美味しい食事に、ふかふかの寝床、天才芸術家ゴン爺さんが設計した世界一の大浴場まであるぞ!
 存分に楽しみ、心ゆくまで、くつろぐが良いぞ!」

 フフフフ、完璧だ。これで俺の威厳もうなぎ登りなのだ!
 思わず笑いが込み上げる。

「フゥワッハッハッハッハッハッハッハッハッハッ!」

 元『シルバーウルフ』の面々は、そんなゴトウ·サイトの高らかに笑う姿を、ガクガク震えながら、恐ろしい者を見るように、戦慄の表情をして見つめるのであった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

18禁乙女ゲーム…ハードだ(色んな意味で)

恋愛 / 完結 24h.ポイント:170pt お気に入り:2,813

秘密の聖女(?)異世界でパティスリーを始めます!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:92pt お気に入り:4,830

トラック野郎親父の雌堕

BL / 完結 24h.ポイント:383pt お気に入り:86

度を越えたシスコン共は花嫁をチェンジする

恋愛 / 完結 24h.ポイント:390pt お気に入り:1,951

前世は不遇な人生でしたが、転生した今世もどうやら不遇のようです。

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:42pt お気に入り:198

転生令嬢は庶民の味に飢えている

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:13,327pt お気に入り:13,926

処理中です...