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109. 冷たい口調

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「ウム、みんな気絶しておるようだな!」

 姫に、精子の処理をしてもらいながら、何事も無かったように、偉そうに言ってみた。
 こういう時は、なんでもないような顔をして、押し通すのが正しい選択なのだ。
 下手に恥ずかしがっていては、大魔王の名が廃ってしまう。
 大魔王は大魔王らしく振舞っていれば良いのだ!

「こんな変態な大魔王様は、初めて見たのニャ!
 影に隠れて、3歳の姫様のパンツを見てオナニーするなんて……
 私がご主人様のポークビッツにメロメロじゃなかったら、こんなに変態な危険人物に絶対に近づかないのね!」

 クッ! 俺的に見ても、相当イッちゃってる危険人物のブリトニーにまで、危険だと思われるとは……

 確かに、影に隠れてオナニーしてた挙句、無理矢理引っ張り出された直後に、3歳の幼女の顔に顔射する男なんて、危険人物以外の何者でもない。

 俺が前いた世界で、そんな男がいたとしたら、完全に性犯罪者だ。

「マスターのミルク、とっても美味しかったのです!
 また、飲ませて下さいなのです!」

 姫が、先程の精子の味の余韻に浸りながら、唇をペロリと舐めた。

「馬鹿者! 姫にはミルクはまだ早いのだ。
 今回は事故のようなものだ!
 俺のミルクの味は、今すぐ忘れるように!」

 俺が姫に厳しく言うと、姫は目をウルウルさせて、上目遣いで見てくる。

 それを見て、また俺の息子が反り返る。
 だ……駄目だ……
 姫は可愛いすぎる。
 ロリコンの俺には、目の毒だ。
 中庸、中庸、中庸、中庸、中庸だ!!

「ブリトニー! ひ……姫を俺から引き離してくれ!
 俺には姫は眩しすぎる!」

「ハイニャ! ご主人様は面白いのニャ!
 そんなに姫様の事が好きなら、襲ってしまえばいいのに」

 ブリトニーが、最もな事を言う。

「う……うるさい!
 これは俺が作ったルールなのだ!
 このルール守らなければ、この居心地の良い現在の状態が必ず崩壊してしまうのだ。
 中庸だけは、何を置いても必ず守らなければならない掟なのだ!」

「ハイハイそうですかニャ。
 中庸ですね! 所で、中庸って何なのニャ!」

 ブリトニーが、頭をコテンと横に倒しハテナ顔をした。

「無知な奴め! 中庸とは即ち、中間。
 全てを程々にしろという事だ!
 やりすぎは良くない。可もなく不可もなく、中間が良いのだ!」

「ウ……ン。ご主人様の変態具合は、既に中間ではない気がするのニャ!
 変態を振り切っている、ド変態なのね!
 私ですら狂気を覚える程なのニャ!」

「グランドマスター、ブリトニー様、もうそろそろ宜しいですかな。
 早く、ダンジョンの閉鎖をしないと『シルバーウルフ』に感づかれますので」

 ゴキ男爵が、いつものようにタイミングを見計らい、俺とブリトニーとのおバカな会話を止め、次の作戦の実行を促した。
 ゴキ男爵が、一番ヤバいバイセクシャルの変態だった気がするのだが、地位が人を変えるのか……
 最近では、どこから見ても出来る執事だ。

「そうだったな!
 それでは、ダンジョンの入口を封鎖するか!
 所で、そこに転がっている『シルバーウルフ』の者達はどうするのだ?」

「ハッ!  サンアリ殿に『ミノ1番』チェーン展開化の為の人員を頼まれていましたので、配下のデーモンに回収させ、調教し、企業戦士にするつもりであります」

「そ……そうか……
 その辺の事は、お前とサンアリに任せる!
 取り敢えずは、俺の仕事をするとするか!
 姫! ブリトニー!
 サッサと仕事を終えるぞ!」

「ハイなのです!」

「ハイニャ!」

 ーーー

「バハオウ様!
 宜しくお願い致します!」

 バハオウは、ダンジョン入口階段フロアーの前に張られた【聖級結界】の前にいる。
 バハオウは、自分の【一撃】では【聖級結界】を破壊する事ができない事は解っているが、取り敢えず、やるだけやって見せる。

 左手を鞘に添え、右手で刀の取手を握り【聖級結界】に、にじり寄り、居合いの構えから【一撃】を放った。

 カキーン!!

 バハオウの【一撃】は軽く弾かれる。

【聖級結界】を破るには、普通の【一撃】だけでは無理なのだ。

 そんなに簡単だったら、始まりの魔女が張ったと言われている【聖級結界】は、とっくの昔に破られていた筈だ。

【聖級結界】を破る為には、特殊な剣が必要なのだ。

 それは、スキルを吸収する能力がある『スキルスッポンソード』と、何でも斬れる剣『エクスカリバー』だけだ。

 ゴトウ·サイトが持つ『スキルスッポンソード』は、正真正銘、始まりの魔女が創り出した、神級のアーキテクトなのだ。

「ハァ……………」

 『シルバーウルフ』2軍、3軍、総勢700人の冒険者から、一斉に溜息が広がる。

「申し訳ございません。
 貴方達をここから逃がす事は、できませんでした。
 多分、貴方達は、ここで、『犬の尻尾』に皆殺しにされると思います。
 ですが、安心して下さい!
 殺されないで済む方法が、1つだけございます!」

 バハオウが『シルバーウルフ』の2軍、3軍に話しかけていると、バハオウが破壊する事ができなかった【聖級結界】の中から、幼いメイド服を着たダークエルフが1人、スッ! と、【聖級結界】をすり抜けて現れた。

『シルバーウルフ』の2軍、3軍のメンバーは、あまりに唐突に、メイド服の幼女が【聖級結界】から、すり抜けて現れた事に、理解が追いつかない。
 バハオウは、メイド服の幼女の方を振り返る事もせずに、続けて話を続ける。

「『犬の尻尾』に皆殺しにされず、生き抜く方法。
 その方法とは、超優良企業『ミノ1番』に就職する事です!」

 バハオウが高らかに宣言した。

 続けて、バハオウは追い討ちをかける。

「今、『シルバーウルフ』で冒険者をされている2軍、3軍の皆さんは、ギルドポイントを稼ぐ為だけに、生きているような物です。
『シルバーウルフ』は、ギルドポイント至上主義です。
 ギルドポイントを稼げる者は、1軍に。
 そうでない者は2軍、3軍に。
 ギルドポイントを稼げない者は、お金でギルドポイントを買ったり、お金がない者は、先輩冒険者からのパワハラが待っています!
 しかし、『ミノ1番』は違います。
 基本給40万マーブル。週休完全2日制、有給有り。五つ星ホテル並の従業員寮完備です。
 しかも寮では、24時間有名シェフが作った美味しい料理を、いつでも無料で食べる事ができるのです。
 それだけではありません!
 何と、24時間いつでも入れる大浴場まであるのです!
 まだまだ、ありますよ!
 な……なんと、仕事の態度が認められた者には、何でもしてくれる。爵位持ちのメイドデーモンが与えられるのです!」

『シルバーウルフ』の面々は、あまりの待遇の良さに、疑心暗鬼で呆然としている。

「やはり、冒険者の皆様にはこれだけでは刺激が足りませんか。
 それでは、これではどうですか!
『ミノ1番』に就職すれば、『犬の尻尾C』チームに入れる権利を与えられます。
『犬の尻尾』は、まだまだ無名ギルドですが、メンバーは、こちらに御座す元漆黒の森の元姫様、ガブリエル·ツェペシュ様。
 勇者パーティ副団長にして、ドワーフ国の王ドラクエル様の娘、アン·ドラクエル様。
 南の大陸で一番信者が多いと言われているケルベロス教の次期、生き神様になられる予定のペロ様と大物ばかり。
 そのCチームは、『シルバーウルフ』と違い、ギルドポイントのノルマがなく、自由な時に、空いた時間に好きなだけ冒険できるという『ミノ1番』の福利厚生ギルドとなる予定です。
 しかも、ギルドランキング10位以内に入る予定の『犬の尻尾』傘下ギルドと位置付けられる為、誰にも馬鹿にされる事なく、堂々とギルド名を名乗る事ができます。
 ここにいる皆様は、多分、有名なギルドに所属しているという優越感だけにより、ノルマが大変な『シルバーウルフ』に所属していると、私は推測しております!
 それならば、是非『犬の尻尾C』チームに入って思う存分、有名ギルドの優越感に浸って下さいませ!」

 バハオウの『ミノ1番』と『犬の尻尾』のアピールタイムが終わった。

「何か質問はありますか?」

 これからは、質問タイムのようだ。

「あの……バハオウさん。
『犬の尻尾C』チームに入ればペロ様にお会いする事ができるのですか?」

「会えますよ! ペロ様は毎日、大食堂で食事を取られておられますので!」

「そ……そうなんですか!
 私、『ミノ1番』と『犬の尻尾C』に是非入りたいです!
 給料も良いし、気楽に冒険できるなんて、私の理想の通りです!」

 多分、ケルベロス教の信者と思われる若い女の子が1人、『ミノ1番』と『犬の尻尾C』に入る事を了承した。

「お……俺も入ろうかな」

 釣られて、またもう1人。

「歓迎致します!」

 バハオウが、営業スマイルで応対する。

「ちょっと待て! 入らないという選択権はあるのか?」

「ありませんが」

 バハオウが、キツく答える。

「そんな勝手な事が許されると思っているのか!
 じきに、団長が『犬の尻尾』を滅ぼす筈だ!
 何たって、ギルドランキング2位のギルドだからな!
 1軍の強さなら、簡単に『犬の尻尾』など潰してしまう筈だ!
 俺はここで、『シルバーウルフ』を裏切って、『犬の尻尾』に入団するなんてゴメンだね!」

「貴方は私の話を聞いてなかったのですか?
 die or alive 生きるか死ぬかです」

 バハオウが、少し凄味を発して冒険者を威嚇する。

 黙って聞いていた姫が1歩前に出た。

「私は、マスター、ゴトウ·サイト様の奴隷ガブリエル·ゴトウ·ツェペシュ。
 貴方達には、一度、自分達の立場とマスターの偉大さを、キッチリと解らせないといけないですね」

 姫はいつもと違う口調、ゴトウ族以外の者に使う、他人行儀な冷たい口調で言い放つ。

 そう言った瞬間、『シルバーウルフ』の2軍、3軍、700人が、一斉に、姫の重力魔法によって地面にひれ伏した。

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