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9. 復讐
しおりを挟む俺達は計画通り、俺は人間に、マリーとニコは、エルフに化けて、ゴブリンの巣穴の様子を伺っている。
「見張りは二人。いつもと一緒だな」
「ここは私に任せて!」
マリーがそう言いながら、弓を引く。
弓には、矢が2本構えられており、ゴブリンを同時に倒す気らしい。
シュン!
マリーが放った2本の矢は、2匹のゴブリン目掛けて飛んで行く。
グサッ! グサッ!
マリーの矢は、見事に2匹のゴブリンの脳天に突き刺さった。
「ヤッター!」
マリーは、その場で飛び跳ねる。
やはり、マリーはエルフの血を色濃く受け継いでいるとしか思えない。
森の民エルフの武器と言えば、やはり弓矢だ。
たった三年で、これ程まで弓の腕前が上手くなるなど、普通の人間では有り得ない事だ。
「良し! 行くぞ!
分かってると思うが、穴ぐらの中では火魔法を使うなよ!
使うとしたら風系だな!
それからニコは剣を使うな、穴ぐらの中だと狭くて自由に動かせない!
タガーを使え!」
「分かってるよ! その為に、わざわざ小回りが利くタガーの練習をしてきたんだもん!
今から、醜悪ゴブリンの喉元をカッ斬れると思うと、ゾクゾクするよ!」
ニコはニヤリと笑う。
俺達は腰からタガーを抜き、ゴブリンの巣穴の中に侵入する。
俺は手筈通り、土魔法で入口を塞ぐ。
これでゴブリン達は、俺達から逃げる事は出来ない。
ゴブリンは一人残らず皆殺しなのだ!
それが、マリーとニコ、そして俺の総意。
マリーとニコは、雄ゴブリン達を相当憎んでいる。
ボブゴブリンによって種族変更した事による所も大きいが、やはり、雄ゴブリン達が自分達を犯そうとした事にとても腹を立てているのだ。
俺が【幻惑】スキルを使って、マリーとニコの身代わりにした雄ゴブリンの惨状が、あまりに酷く、惨たらしかったのも、マリーとニコの怒りを増幅させている。
それから、マリーは、自分のオッパイをあげて、精一杯育ててあげた雄ゴブリンに、巣立ちの時、寄るなブサイクと言って足蹴にされたのを相当根に持っていたりする。
まあ、俺がゴブリンを殺す理由は、普通の人間の理由と同じなのだが、それよりも今は、マリーとニコの為と言っても過言ではない。
マリーとニコを虐めた奴らは、誰であろうとぶっ殺すのだ!
俺達は、巣穴をグングン進み、ゴブリン達を瞬殺していく。
元々、ここに住んでいたので、巣穴の地図はバッチリ頭に入っているし、トラップの場所も全て把握している。
俺達3人は、この巣穴のゴブリン達を殲滅させる事だけを考えて、この3年間修行を積んできたのだ。
タガーを覚えたのだって、狭い巣穴の通路で、自由に使える様にとわざわざ特訓した。
そんな俺達には、普通のゴブリンなど相手にならない。
その気になれば、1年前には、既にゴブリンの巣穴を殲滅するだけの力を持っていたのだが、完璧を期する為に、1年待ち、新しく女を攫ってくるタイミングを狙っていたのだ。
俺達は、巣穴の中の部屋を隅々まで、チェックし、ゴブリン達を殲滅していく。
この巣穴には、ゴブリンが約300匹ほど住んでいる。
ゴブリンの巣穴としては、かなり大きい方だ。
しかし、いくらゴブリンの数が多かろうが、道は狭く、いっぺんにはかかって来れない。
それに俺達は、完璧にこの巣穴を把握している。
待ち伏せして、俺達を倒そうとしても、そのポイントは最初から知っているので、待ち伏せにもならないのだ。
これは既に戦いでは無い。
ただの虐殺。
マリーとニコの私怨による虐殺なのだ。
ゴブリン達が、もっとマリーとニコに優しくしていれば、こうはならなかったかもしれない。
ゴブリン達は、面食い過ぎたのだ。
当時、ブサイクな雌ゴブリンだった、マリーとニコを苛め抜いた。
せめて無関心を装っていたら、こうはならなかったのだ。
俺だって、マリーとニコが、雄ゴブリンを殺さない。と言えば、殺さないでおいただろう。
まあ、雄ゴブリン達の自業自得という事だ。
「キャハッハッハッハッ! 死ね! 死ね! 死ね!」
ニコがタガーを片手に、雄ゴブリンを滅多刺しにしている。
魔法を使えばいいのにと思うのだが、ニコは返り血を浴びるのが好きなのである。
既に、ニコの剣術やタガーの腕前はA級冒険者並、それから賢者である俺が直接教えてる魔法の腕前は、S級に匹敵する実力かもしれない。
レベルはまだ低いが、ハッキリ言って、レベルなどあって無いようなものだ。
【鑑定】が使える俺は、レベルが低いのに強い奴を何人も見てきた。
環境が、人を強くする。
マリーとニコは、魔物だらけの森で朝から晩まで魔物を狩り続けている。
そして師匠が、賢者である俺だ。
強くならない筈が無いのだ。
「アッ! いた!」
マリーが、1匹の雄ゴブリンに反応する。
「積年の恨み晴らしておくべきか!」
マリーは素早く風魔法を使い、雄ゴブリンの両足を切断する。
「フフフフフ、これで逃げられないわね」
マリーはどうやら、昔、足蹴にされた雄ゴブリンを見つけたようである。
マリーは、その雄ゴブリンに近づいていき、思いっきり頭にサッカーボールキックを食らわした。
プギャー!!
雄ゴブリンは、絶叫する。
「オラオラオラオラ!」
バキッ! ボコッ! ボコッ! バキ!
マリーの容赦ない頭を狙った蹴りの連打に、雄ゴブリンは両手を使ってガードする。
いつも俺だけに優しいマリーは、どうやら執念深い性格のようだ。
「チッ!」
マリーが、マリーらしからぬ舌打ちを打つ。
どうやら雄ゴブリンが、両手で頭を守っているのが気に食わないみたいだ。
「ウィンドウカッター!」
マリーが無詠唱でも発動できるのに、わざわざ魔法名を言って、雄ゴブリンに向けて風魔法を放つ。
スパパパーン!
マリーの風魔法は、雄ゴブリンの両手をも切断し、完全にダルマにした。
これで、雄ゴブリンは頭を守る事が出来ずに、完全に無防備状態だ。
マリーは再び、雄ゴブリンを蹴り飛ばした後、雄ゴブリンの頭を踏みつける。
「よくもあの時、私を足蹴にしてくれたわね!」
マリーの怒りは、まだ全然収まっていないようだ。
マリーは、雄ゴブリンの頭を何度も何度も踏みつける。
「オラオラ、泣け! 喚け!」
俺の中の、優しいマリーのイメージがドンドン崩れていく。
「プギャー! プギャー! プギャギヤギャァー!」
「な……何ですって!」
雄ゴブリンが、マリーに向かって何かを言ったみたいだ。
マリーは、アタマから湯気を出して、怒りが沸点に達してしまったようだ。
「ニコ、あの雄ゴブリン、何て言ったんだ?」
俺は気になり、ニコに質問する。
「ああ、あれね……
あの雄ゴブリン、マリーに向かって、『あぁ……女王様ぁ、もっと僕を踏んずけて下さいませ!』って、言ったのよ……」
「なるほど……」
よく見ると、雄ゴブリンのナニが、ビンビンに反り返っている。
ビチャ!
雄ゴブリンのナニが、マリーによって踏みつけられて、破裂した。
「プギャーーーー!」
ブルブルブルブル、一瞬寒気が襲い、俺の股間までも縮みあがる。
「雄ゴブリン、気持ち良さそうな顔をして何か叫んでなかったか?」
俺は再びニコに質問する。
「イクーーーー!」
て、言ってたわよ。
あの雄ゴブリン、本当にヤバ過ぎる。
マリーが怒るのも分かる気がする。
マリーが、血だらけボコボコの雄ゴブリンの首根っこを掴んで拾いあげ、俺の顔の前に持ってくる。
「カイトちゃん! コイツを可愛い人間の女に化けさせて!」
まさか、また、アレをやるのか……
マリーは、よっぽどこの雄ゴブリンが気に食わないんだな。
俺はマリーの味方だ。
マリーのリクエストに答えるのが、マリーに育てられた俺の恩返しなのだ。
俺は雄ゴブリンを【幻惑】スキルを使い、可愛い人間の女に変身させた。
マリーは、可愛い人間の女に変身させた雄ゴブリンを、洞穴の行き止まりの所に投げ捨てる。
そして、その辺にいたゴブリンを2匹ぶん殴って気絶させ、可愛い人間の女に変身させた雄ゴブリンを捨てた場所と同じ所に投げ捨てた。
「カイトちゃん! さっきの土魔法で、そこの行き止まりに蓋をしてくれる?」
「御意!」
俺はマリーに言われるがまま、可愛い人間の女に化けさせられたゴブリンと共に、2匹の雄ゴブリンを生き埋めにした。
マリーに殴られて気絶している雄ゴブリンが目覚めると同時に始まるでろう、惨劇が目に浮かぶ。
奴らは加減を知らない。
人間の女に化かされている雄ゴブリンは、マリーによってダルマにされているので、抵抗する事も出来ずに、犯され続け死に絶えるのだろう。
あの時、マリーに女王様とか言わなければ、もっと楽に死ねたであろうに……
南無三。
俺は黙祷し合掌した。
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