上 下
82 / 97

82. 白虎

しおりを挟む
 
 俺達はヨネンさんの案内で、ウルフデパートの2階にあるドワーフ王国直営店を見た後、1階にあるドワーフ王国直営店の高級店舗の方に到着した。

「流石に高級店舗の方は、店構えも違いますね……」

 俺はドワーフ王国の店舗の前で、絶句する。
 ドワーフ王国直営店は、濃いめのシックな茶色の木造造りで、壁や柱の全てに豪華な彫刻が彫られているのだ。

「この柱や壁の彫刻は全て、今は亡き天才芸術家ドン·ドラニエルの作品なんですよ!
 ドン·ドラニエルは、このモフウフの街を愛し、モフウフ地下宮殿に定住していたので、モフウフではドン·ドラニエルの作品をたくさん見ることができます!」

 俺が前の世界にいた時には、絶対に足を踏み入れる事が出来ない領域である。
 そんな領域に、オーナー自ら案内してもらえる身分になるとは……
 世界樹のドライアドである、アド様様である。

「こちらのフロアーでは、上級の中でも上位の武器や防具を手に取って見る事ができます!」

 どうやら、お店に入って直ぐの部屋は、いわゆる上級の上の武器や防具が売ってるフロアーであるらしい。

 商品を見ている客は、見るからに高ランクの冒険者や、モフウフ王宮に使える騎士など、身なりの良い者ばかりで、エーバルに居るような荒くれ冒険者など、1人もいない。

 それから良く観察すると、客一人一人にドワーフ族の店員がお供に付き、商品の説明をしているようである。
 俺なら、こんな高級店で知らない店員に付いて回られたら、商品を見る所では無くなってしまうであろう。

「やっぱり凄いわね! 流石、ドワーフ王国直営店のモフウフ支店ね!
 日本刀レプリカのラインナップが、半端ないわね!」

 アナ先生が、みるからに日本刀の様な片刃の刀をマジマジ手に取って見ている。

「ここはハラダ家のいる『漆黒の森』の王都ですからね!
 日本刀の需要が多いんですよ!
 それに最高の武器職人とも言われていたドン·ドラニエルの本拠地だった場所ですからね!
 ドン·ドラニエルが最初に日本刀レプリカを打ったのは、今は亡き大魔王ゴトウさんの要望から始まったと言われています。
 ゴトウさんと、試行錯誤して日本刀レプリカを作り出し、ゴトウさんが亡くなった後も研鑽を重ねて、最高級の日本刀レプリカを亡くなるまで作り続けました」

 ヨネンさんは、話しながら近くに置いてあった日本刀を手にとった。

「ドン·ドラニエルの初期の作品は、ゴトウ様や姫様の為に打っていた刀なので、一般的な刀の大きさなのですが、後期になるとハラダ家に頼まれて、このように長めで重さがあり頑丈な刀を打つ様になります。
 それがハラダ家の流派、ジゲン流に適した形状だと言われております。
 勿論、頑丈と言っても斬れ味が落ちる訳ではございません。
 ジゲン流は一撃必殺の流派、初太刀から全力で敵に打ち込みます。
 全ての攻撃が全力なので、どうしても刀が傷みやすいという訳ですね!
 なので、アナさんに合うのは、もっと細身の……そうですね!
 こちらの刀なんか良いんじゃないですか?」

 ヨネンさんはそう言うと、俺達を連れて、もう一つ奥のフロアーに歩き出す。
 そこのフロアーは、さっきのフロアーとは全く毛色が違う。
 全ての商品が、ショーケースに入れられているのだ。
 そして、そのショーケースに入った武器や防具の値段も一桁違う。
 全てが5000万マーブルオーバーなのだ。

「こちらのフロアーの商品は、全て聖級の商品になっています!」

 ヨネンさんは、説明しながら一鞘の日本刀レプリカを手にとる。

「これは、ドン·ドラニエルの高弟の一人、オイドン·トラデアルが打った、聖級の上物、刀の言い方で言えば上業物ですね。
 銘を『白虎』と言います。
 コレなんかアナさんの戦闘スタイルに会うと思いますよ!」

 ヨネンさんが、手に取った細身の刀『白虎』をアナ先生に手渡した。

「エッエッ! これってドワーフ三刀鍛の一人、オイドン·トラデアルの『白虎』ですよね!」

 『白虎』を渡されたアナ先生の手が震えている。

「そうですよ。約200年前に活躍した剣神ハラ·ユリが使ったと言われる刀ですね!」

「どうして、そんな物が売られているんですか?
 ハラ家が所蔵してるんじゃなかったんですか?」

「『白虎』はドワーフ王国が、その当時 剣神であったハラ·ユリ様に貸出していた物です。
 ハラ·ユリ様が亡くなった後に、返してもらっただけですよ!」

「貸出って、そんな事が可能なんですか?」

 アナ先生が、ビックリしている。

「『白虎』程の上業物になりますと、お高いですからね。
 当時の剣神であられたハラ·ユリ様でも現金で買うにはお高かったようですね!」

 そう言えば、『白虎』には値段が付いていない。
 他にもチラホラ値段がついてない、刀や防具があるが、値段が付けれないような値段であるのか……

「ヨネンさん、因みに値段ってお幾らなんですか?」

 俺は興味本位で値段を聞いてみる。

「『白虎』は、性能もさておき、剣神ハラ·ユリが使っていた事もあり有名な刀ですからね!
 名が知れ渡っている有名料も合わせて、3億マーブル程でしょうか!」

「さ……3億マーブルですか……」

 俺は驚きおののく。

「ハイ! 3億マーブルです!
 有名な『白虎』が、3億マーブル位ですと、買いたいというお客様がたくさんおいでになりますよ!」

「3億マーブルで、買い手がたくさんいるんですか?」

「勿論、おいでです!
 しかし、『白虎』は、どれだけ金額を積まれてもお売りしませんけどね!
 『白虎』は、オイドン·トラデアルの遺言で、『白虎』を使いこなせる者にしか売ってはいけない契約になっておりますので!
 お金持ちが、鑑賞用に家に飾っておくとかはもっての外なのです!」

 アナ先生はヨネンさんの話を聞き、益々緊張してしまったようである。
 『白虎』を持つ手が、先程よりも早く小刻みに震えているのだ。

「ヨネンさん! 『白虎』を返します!」

 アナ先生は慌てて、『白虎』をヨネンさんに突き返えそうとする。
 ヨネンさんは それを華麗にスルーして、話を続ける。

「私はアナさんになら、この200年間誰にも売らなかった『白虎』を売っても良いかと思ってるんですが」

「エエェ……私に……」

 アナ先生は驚愕して、『白虎』を落としそうになる。

「ハイ! アナさんは、魔法剣士ですよね!
 『白虎』は、魔法と相性が良いと言われておりますので。
 そして、世界樹のダンジョンを攻略した魔法剣士のアナさんでしたら、『白虎』を持つに相応しい実力だと思いますよ!」

「あの……ヨネンさんて、私の実力が分かっていますか?」

「一応、私も400年生きておりますので、それなりに人を見る目はあると思いますよ。
 実際に、剣神だったハラ·ユリ様より魔法剣士のアナさんの方が、『白虎』との相性は良いと思いますが」

 アナ先生が、身震いしながら俺の顔を見る。

 アナ先生は、とても『白虎』が欲しそうだ。
 目が『白虎』を欲しくてたまらないと、訴えている。

 『白虎』は多分、ヨネンさんが認めた人物以外は売らない、ほとんど非売品の名刀である。

 その本来非売品の『白虎』が、買えるチャンスなのだ。

 これは、お金が無くても買うしかないシチュエーションだよね……

「分かりました! アナ先生、『白虎を』買っちゃいましょう!」

「エー君! 大好きだよ!」

 アナ先生に抱きつかれ、俺の逸物がそそり立つ。

「毎度、ありがとうございます!」

 ヨネンさんが、頭を下げながらニヤリと笑ったように見えたのは、きっと気のせいであろう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

性奴隷を飼ったのに

お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。 異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。 異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。 自分の領地では奴隷は禁止していた。 奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。 そして1人の奴隷少女と出会った。 彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。 彼女は幼いエルフだった。 それに魔力が使えないように処理されていた。 そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。 でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。 俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。 孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。 エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。 ※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。 ※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。

【R18 】必ずイカせる! 異世界性活

飼猫タマ
ファンタジー
ネットサーフィン中に新しいオンラインゲームを見つけた俺ゴトウ・サイトが、ゲーム設定の途中寝落すると、目が覚めたら廃墟の中の魔方陣の中心に寝ていた。 偶然、奴隷商人が襲われている所に居合わせ、助けた奴隷の元漆黒の森の姫であるダークエルフの幼女ガブリエルと、その近衛騎士だった猫耳族のブリトニーを、助ける代わりに俺の性奴隷なる契約をする。 ダークエルフの美幼女と、エロい猫耳少女とSEXしたり、魔王を倒したり、ダンジョンを攻略したりするエロエロファンタジー。

【R-18】寝取られが合法の世界に転生したので種付け師としてヤりまくる

そーだえんそ
ファンタジー
特に夢を持たないままブラック企業へ就職し働きすぎで過労死してしまった男は、異世界へと転生した。 転生した世界ではなんと「種付け師」という、寝取ることを専門にした役職が存在していた。 フールとして新たな人生をはじめた男は「種付け師」となってヤりまくる生活を送ることに! ※♡喘ぎあり ※数字の後に♡:R-18シーンあり ♥:中出しあり

【R18】転生?した先は、リアルよりもHな世界でした。

N.M.V
ファンタジー
注)本小説は、1話毎にエロシーンが御座います。嫌悪感を抱かれる方、苦手な方は閲覧をお控えください。 ……そこはダンジョン奥深く、戦闘の狭間で休憩していたワタシは、パーティーメンバーの1人、後衛の魔法士にいきなり弱の麻痺魔法をかけられ、押し倒された。 「なに考えれんろのよ!!、やめれぇ!!」 麻痺のせいでろれつが回らない。 「テメェが、素直にヤラせてくれねーからだろ?」 他のメンバーに助けを求め視線を向けた。だけど、全員が下卑た笑いをしてる。コイツら全員最初からワタシを犯す気なんだ。 最悪だわ。 魔法士は、ワタシの装備を剥がし、その下の服を引き裂いて、下半身の下着を引きちぎった。 「ペナルティ食らうわよ……」 「そんなもん怖くねーよ、気持ち良けりゃイイんだよ」 魔法士はそう言ってズボンを下ろした。ギンギンに張ったサオを握りしめ、ワタシの股を割って腰を入れて来る。 「や、やめてぇ、いやぁん」 「好き者のくせに、カマトトぶるんじゃねーよ、最初に誘ったのはオメエじゃねーか」 強引なのは嫌なのよ! 魔法士のサオがワタシのアソコに当てがわれ、先っちょが入って来る。太くて硬い、リアルとは異なるモノが…… 「や、いやっ、あっ、ああっ」 ……… ワタシの名前は、「エム」 人類は平和だろうが戦争中だろうが、心に余裕があろうがなかろうが、生きるも死ぬも関係なしに、とにかく欲望のままにHをしたがる。 ワタシがプレイしていたゲームは、そんな人類の中で、人より頭がちょっと賢くてオカシなゲームマスターが 「とにかくHがしたい」 なーんて感じで娯楽を創造したんだと思う。 類い稀なるフルダイブ型エロゲー。世界設定は、剣と魔法のファンタジー、エロゲーだけあり、Hもできちゃう。 でも内容は本格的、一切の妥協はなし。 生と死の間、命のやりとり、バトルオブサスペンス!、世界も広い!、未踏の大地、拡張されるストーリー!、無限に広がるナントやら。 因みに、H出来るのは倫理上、人同士のみ。 ゴブリンに攫われてヤラレちゃうとかナンセンス。そんなのは他所でヤレ、です。 …そんなゲーム世界から、いきなり異世界に飛ばされてしまった不幸なワタシの物語です。

序盤でボコられるクズ悪役貴族に転生した俺、死にたくなくて強くなったら主人公にキレられました。 え? お前も転生者だったの? そんなの知らんし

水間ノボル🐳
ファンタジー
↑「お気に入りに追加」を押してくださいっ!↑ ★2024/2/25〜3/3 男性向けホットランキング1位! ★2024/2/25 ファンタジージャンル1位!(24hポイント) 「主人公が俺を殺そうとしてくるがもう遅い。なぜか最強キャラにされていた~」 『醜い豚』  『最低のゴミクズ』 『無能の恥晒し』  18禁ゲーム「ドミナント・タクティクス」のクズ悪役貴族、アルフォンス・フォン・ヴァリエに転生した俺。  優れた魔術師の血統でありながら、アルフォンスは豚のようにデブっており、性格は傲慢かつ怠惰。しかも女の子を痛ぶるのが性癖のゴミクズ。  魔術の鍛錬はまったくしてないから、戦闘でもクソ雑魚であった。    ゲーム序盤で主人公にボコられて、悪事を暴かれて断罪される、ざまぁ対象であった。  プレイヤーをスカッとさせるためだけの存在。  そんな破滅の運命を回避するため、俺はレベルを上げまくって強くなる。  ついでに痩せて、女の子にも優しくなったら……なぜか主人公がキレ始めて。 「主人公は俺なのに……」 「うん。キミが主人公だ」 「お前のせいで原作が壊れた。絶対に許さない。お前を殺す」 「理不尽すぎません?」  原作原理主義の主人公が、俺を殺そうとしてきたのだが。 ※ カクヨム様にて、異世界ファンタジージャンル表紙入り。5000スター、10000フォロワーを達成!

【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜

墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。 主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。 異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……? 召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。 明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。

処理中です...