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39. エーサク、気合いをいれる。
しおりを挟むクモは、あっという間に魔方陣を写し終えた。
クモの作業は命懸けなので、早くて正確だ。
クモは8つある目で、魔法陣を写す間にも、何度も何度も見直ししていたようだ。
何故そんな事が分かるかというと、クモの本来の目の上にある6つの副眼が、パッチリと見開いて、クモが写した魔法陣を凝視していたからだ。
なので、クモが魔法陣を描き終えると同時に、6回は見直しが終わっている計算になる。
クモが頭が良いのは、やはり、目が8つあるのが原因かもしれない。
入ってくる情報量が常人の4倍なので、その情報を処理する為に、頭が発達していると思われる。
「ご主人様、私の命懸けで写した魔法陣を受け取って下さい」
クモが、何故か震えながら俺に、『錬金入門』から写した魔法陣を渡してきた。
「ありがとな!」
「アッ、イク……」
ビクッ! ビクッ! ビクッ!
俺がクモから魔法陣を受け取ると、突然クモはその場でしゃがみこんでしまい、体を痙攣させている。
もしかして、イッたのか……
クモが、だんだんヤバい事になっていく。
ここまでくると変態だ。
俺の為に働くだけで、イッてしまうなんて……
「クモ、命令だ!
俺とSEXする時以外、イク事を禁じる!」
「ハイ! 頑張るクモ!」
クモは、産まれたての子羊のように、足をブルブルさせながら立ち上り、自分の両足をガンガン叩いて、気を紛らわしながら答える。
やはり、俺の命令は絶対のようだ。
これからクモは、どんなに俺に命令されて、気持ち良くなってしまっても、命懸けで、イク事を耐えるのだろう。
俺はクモに写して貰った魔法陣を、蛇口とキッチンにアタッチさせる【錬金】に取り掛かる。
魔物のコアの補充場所は、一箇所に纏めたいので、IHクッキングヒーター魔道具と共用にする事にした。
俺は手の平から魔素を、いつものようにキッチンと蛇口と魔法陣に送り込む。
暫くすると、キッチンが光り輝く。
しっかりと、蛇口がキッチンに合体し、水を生み出す魔法陣もアタッチされているようだ。
「上手くいったぞ!
後は、排水をどうにかすれば完成だ!」
「ご主人様! 大好きクモ!」
クモは、珍しく大きな声を出して喜んだ。
多分、大きな声を出さなかったらイッてしまっていたのだろう。
クモは、感情の昂りを抑えるのに必死だ。
真っ赤な顔をしながらも、イッてしまわないように必死に耐えている。
「クモ。一応言っておくが、俺とアナ先生とビー子以外、命令されても好きになる事は禁止だぞ」
「努力するクモ」
クモは、真っ赤な顔をしながら答えた。
『これは、無理かな……』
続けて、バスタブに24時間風呂の装置を取り付ける。
何故だかしらないが、この世界のお風呂は、大体24時間風呂らしい。
24時間、お湯を垂れ流しにするのだ。
元日本人の俺にとっては、勿体ない気がするが、この世界でそれが常識ならそれに従うまでだ。
魔物のコアは、腐る程ストックしてある。
なにせここは、ダンジョンの中なのだから。
ここでの生活では、電気代も水道代もガス代も考えなくても良い。
燃料となる魔物のコアは、普通にダンジョンを攻略しているだけで、要らないほど手に入るのだ。
そんな事よりも重要な事がある。
24時間風呂の排水設備を作らなければならないのだ。
俺は、キッチンを作ってる時に、ハッ! と気づいた。
排水用の設備を作り忘れていたという事に。
現在、お風呂の湯を抜く為に、冒険者バックを一つ使っているのだが、これ以上の冒険者バックの予備を持っていない。
冒険者バックは、俺とアナ先生とビー子とクモ、そしてお風呂に使ってしまっている。
どうにかして、お風呂用に使っている冒険者バックで、お風呂とキッチンとトイレの排水を処理しなければならないのだ。
本来なら、床の一段下に排水溝を整えたい所だが、既に床には真っ白なセラミックタイルを貼ってしまっている。
今更、全て剥がして作り直すのなんて、面倒だ。
なので、ここは俺の【錬金】で何とかする事にした。
現実的に、100畳以上もある床の下に排水溝を【錬金】で整備する事など不可能である。
なので俺は、実際に俺達が生活している20畳分だけ【錬金】で、床上げをして、その下に排水溝を整える事にしたのだ。
なんでも、こな世の中には、トイレの糞尿を肥溜め直接移転させる冒険者バックがあるらしいが、ここにはそんな便利な冒険者バックなどない。
冒険者バックの容量は、決まっているのだ。
本来なら床の下などに、トイレ用の冒険者バックを埋め込んで終わりなのだが、俺達は冒険者バックがいっぱいになったら、定期的に冒険者バックの中身の排水を捨てないといけない。
その為にも、床が20畳分だけ底上げされていると便利なのだ。
冒険者バックを底上げした床の横に設置すれば、取り外しに苦労しない。
冒険者バックを隠す為に、オシャレなオブジェを置いても良いかもしれない。
取り敢えず、冒険者バックは、できるだけトイレ付近に設置する。
臭う汚物は、少しでも早く冒険者バックにしまいたいのだ。
勿論トイレは、底上げした床のギリギリの場所に設置する。
そして、中間地点にキッチン、一番遠い所に、お風呂を配置する。
二十四時間掛け流し風呂が、ここで生きてくるのだ。
床の下の排水溝には、お風呂のお湯が絶えず流れ続けている。
1日中、排水溝を流れ続けるお湯のお陰で、トイレの汚物を24時間流し続けれる仕組みだ。
という訳で俺は、今から気合いを入れて、床を一段上げる為の【錬金】に取り掛かる事にしたのだった。
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