35 / 97
35. 女騎士の矜恃
しおりを挟む次の日、朝目覚めると、階段フロアーの床一面が真っ白に光り輝いていた。
起きているのは、朝食の準備をしているクモしかいない。
「クモ、おはよう。
この床って、誰がやったんだ?」
「おはようございます。ご主人様。
この床は、クモが早起きして完成させたクモ」
どうやら、クモの仕業だったようだ。
クモは、秘密特訓が好きだ。
いつも内緒で、特訓するのだ。
俺が見せたエアーカッターも、次の日には完璧に自分のものにしていた。
皆が寝静まった夜、一人で秘密特訓したのであろう。
今回の床も、クモ的には普通の事だ。
クモは、一人で夜中にコツコツ作業するのが好きなのだ。
それが、皆の為になればなるほど、ヤル気を出すのだ。
どれだけ努力家なのだ。
しかし、これは俺への督促か?
早く、クモのキッチンを作れと言う……
「今日から、クモのキッチン作りに取り掛かるからな!」
「嬉しいクモ。ご主人様好き」
クモはいつものように、顔を真っ赤にしてモジモジしている。
俺は、クモの頭をモフモフ撫でてやる。
クモは、頭から湯気を出して沸騰しそうだ。
『二人っきりだと、ちょっと困るな……』
クモは基本、大人しい。
よっぽど、用が有る時以外は俺に喋りかけてこない。
なので、クモが俺に喋りかけてくる時は、よっぽどの事が有る時なので、俺はキチンとクモの話を聞いてやる事にしているのだ。
しかし、このままずっと、俺の前でモジモジされていられても……
「お~い! ビー子起きろよ!
アナ先生も、起きて下さい!」
「ご主人様ぁ~眠いのよぉ~」
「クッ! 不覚。主であるエー君の従者でありながら、主のエー君より遅く目覚めてしまうとは……」
ビー子と、アナ先生が目覚めたのは良いのだが、この毎朝行われるアナ先生の騎士ごっこは、どうにかならないのか……
「アナ先生は、いつも僕より起きるの遅いでしょ!
一体、何なんですか?
毎朝毎朝、その騎士っぽいくだりは必要なんですか?」
「何を言ってるのだ! エー君。
私はレッキとした、騎士の家系に産まれた騎士の中の騎士だ!
私の父親は、誇り高き 神聖フレシア王国の騎士団長だったのだぞ!」
アナ先生は、前のめりで俺に凄んでくる。
「でもアナ先生、俺より早く起きる気、更々無いでしょ!
そのアナ先生の首に付けてる、冒険者ブレスレットに備えつけてある、目覚まし機能を使ってないですもんね!」
「そ……それは……」
アナ先生が、口篭る。
やはりアナ先生は、早起きする気など更々なかったようだ。
ただ、『クッ! 不覚!』のような、あちらの世界のラノベ特有の、女騎士のセリフが言いたいだけなのだ。
「分かりましたから、早く朝食を食べて下さい!」
「御意……」
アナ先生は、テンションだだ下がりで、騎士風に返事をしたのだった。
そして、朝食を食べた後、いつものようにダンジョン攻略を進める。
「キターーーー!」
突然、アナ先生が叫び出す。
「どうしたんですか?」
「遂に取得したんだよ!」
「もしかして、アナ先生がとても欲しがっていた、『斬撃波』スキルを、ゲットしたんですか?」
「そうなんだよ! 今、頭の中で、天の声が響いたんだよね!
{『斬撃波』スキルを獲得しました!}って!」
アナ先生は、有頂天だ。
騎士にとって、『斬撃波』スキルを使える事は、それだけでステータスなのだとか。
前に、アナ先生に、長々と語られた事がある。
何でも、大国同士の戦争では、最初に、前衛職の騎士が『斬撃波』を放つ事により、戦闘の狼煙を上げるのが、習わしとされているらしいのだ。
フレシア王国の元騎士団長だった、アナ先生のお父さんも、王国主催の模擬戦争訓練では、いつも模擬戦の始まりを告げる『斬撃波』を放つ大役を、担っていたと言う事だ。
「ハア!」
ズダダダダダダーン!
「トリャー!」
ズダダダダダーン!
「ウリャー!」
スダダダダダーン!
アナ先生が、調子に乗って『斬撃波』を連発している。
というか、そんなにアホみたいに『斬撃波』を放ったら、魔素切れを起こすのでは……
案の定、10分後に、アナ先生は魔素切れによる倦怠感を発症し、『死にたい。死にたい』と、俺におんぶされながら、ブツブツ言っている。
アナ先生が使い物にならなくなった後は、昔のフォーメーションに戻り、ダンジョン攻略をしたのだが、やはり前衛が居ると居ないとでは、大違いだとヒシヒシ感じる結果となった。
アナ先生が居ないと、グイグイ進めないのだ。
200階層を超えると、敵も強力だ。
普通に『闘気』を込めた攻撃をしてくる敵まで登場してくる。
そんな攻撃を、まともに受けたら大怪我では済まない。
アナ先生が前衛にいてくれたら、そんな無慈悲な攻撃も、斬撃で弾き返してくれるのだ。
ウチのパーティーには、索敵が得意のビー子がいるので、不意打ちの先制攻撃を受ける事がない。
それでも猪突猛進してくる敵に対しては、俺とビー子による魔法による防御防壁と、クモが蜘蛛の巣を張る事で、アナ先生がリタイヤしても、何とか凌げているというのが正直な所だ。
「アナ先生! これからは、ちゃんとして下さいね!
パーティープレイでは、一人の脱落のせいで、全滅する事だってあんるですからね!」
俺は少しだけ強めに、アナ先生に注意する。
「クッ! 殺せ!」
アナ先生は、魔素枯渇の倦怠感で自暴自棄になっていたのか、女騎士必殺のセリフを、珍しく狙わずに吐いた。
「殺しませんから! アナ先生は、ただひたすら苦しんで、反省して下さい!」
10
お気に入りに追加
388
あなたにおすすめの小説
性奴隷を飼ったのに
お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。
異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。
異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。
自分の領地では奴隷は禁止していた。
奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。
そして1人の奴隷少女と出会った。
彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。
彼女は幼いエルフだった。
それに魔力が使えないように処理されていた。
そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。
でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。
俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。
孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。
エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。
※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。
※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。
【R18 】必ずイカせる! 異世界性活
飼猫タマ
ファンタジー
ネットサーフィン中に新しいオンラインゲームを見つけた俺ゴトウ・サイトが、ゲーム設定の途中寝落すると、目が覚めたら廃墟の中の魔方陣の中心に寝ていた。
偶然、奴隷商人が襲われている所に居合わせ、助けた奴隷の元漆黒の森の姫であるダークエルフの幼女ガブリエルと、その近衛騎士だった猫耳族のブリトニーを、助ける代わりに俺の性奴隷なる契約をする。
ダークエルフの美幼女と、エロい猫耳少女とSEXしたり、魔王を倒したり、ダンジョンを攻略したりするエロエロファンタジー。
【R-18】寝取られが合法の世界に転生したので種付け師としてヤりまくる
そーだえんそ
ファンタジー
特に夢を持たないままブラック企業へ就職し働きすぎで過労死してしまった男は、異世界へと転生した。
転生した世界ではなんと「種付け師」という、寝取ることを専門にした役職が存在していた。
フールとして新たな人生をはじめた男は「種付け師」となってヤりまくる生活を送ることに!
※♡喘ぎあり
※数字の後に♡:R-18シーンあり ♥:中出しあり
【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜
墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。
主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。
異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……?
召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。
明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
【R18】転生?した先は、リアルよりもHな世界でした。
N.M.V
ファンタジー
注)本小説は、1話毎にエロシーンが御座います。嫌悪感を抱かれる方、苦手な方は閲覧をお控えください。
……そこはダンジョン奥深く、戦闘の狭間で休憩していたワタシは、パーティーメンバーの1人、後衛の魔法士にいきなり弱の麻痺魔法をかけられ、押し倒された。
「なに考えれんろのよ!!、やめれぇ!!」
麻痺のせいでろれつが回らない。
「テメェが、素直にヤラせてくれねーからだろ?」
他のメンバーに助けを求め視線を向けた。だけど、全員が下卑た笑いをしてる。コイツら全員最初からワタシを犯す気なんだ。
最悪だわ。
魔法士は、ワタシの装備を剥がし、その下の服を引き裂いて、下半身の下着を引きちぎった。
「ペナルティ食らうわよ……」
「そんなもん怖くねーよ、気持ち良けりゃイイんだよ」
魔法士はそう言ってズボンを下ろした。ギンギンに張ったサオを握りしめ、ワタシの股を割って腰を入れて来る。
「や、やめてぇ、いやぁん」
「好き者のくせに、カマトトぶるんじゃねーよ、最初に誘ったのはオメエじゃねーか」
強引なのは嫌なのよ!
魔法士のサオがワタシのアソコに当てがわれ、先っちょが入って来る。太くて硬い、リアルとは異なるモノが……
「や、いやっ、あっ、ああっ」
………
ワタシの名前は、「エム」
人類は平和だろうが戦争中だろうが、心に余裕があろうがなかろうが、生きるも死ぬも関係なしに、とにかく欲望のままにHをしたがる。
ワタシがプレイしていたゲームは、そんな人類の中で、人より頭がちょっと賢くてオカシなゲームマスターが
「とにかくHがしたい」
なーんて感じで娯楽を創造したんだと思う。
類い稀なるフルダイブ型エロゲー。世界設定は、剣と魔法のファンタジー、エロゲーだけあり、Hもできちゃう。
でも内容は本格的、一切の妥協はなし。
生と死の間、命のやりとり、バトルオブサスペンス!、世界も広い!、未踏の大地、拡張されるストーリー!、無限に広がるナントやら。
因みに、H出来るのは倫理上、人同士のみ。
ゴブリンに攫われてヤラレちゃうとかナンセンス。そんなのは他所でヤレ、です。
…そんなゲーム世界から、いきなり異世界に飛ばされてしまった不幸なワタシの物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる