上 下
175 / 179

175. ミカーワの街に、魔王襲来!

しおりを挟む
 
「して、トト・カスタネットは、最近建国されたサクラ神聖国の王の名と同じ名なのは、ワシの気のせいか?
 まあ、トト・カスタネットが魔族だったとは、ワシも聞き及んでいなかったのじゃがな?」

 魔王が、俺の事をギロリと睨んでくる。
 金色の切れ長の目が、物凄く怖いのだけど。
 だけれども、ビビる訳にはいかない。
 だって、俺はリーナのお兄ちゃんなのだ。

 お兄ちゃんが、可愛い妹の前で、ビビってる場合じゃないのだ。
 何があったとしても、絶対にリーナだけは守り抜く!
 それが、俺がリーナの兄としての義務なのである!

「見ての通り、俺もリーナも魔族だが」

 俺は、嘘を貫き通す事にした。
 まあ、完全にバレてると思うけど。

「そうか。それならワシは、お前達兄妹の事を、魔族として接しれば良いのじゃな?」

「ああ。そうだ。俺達の事は、魔族として接してくれ!」

 俺とリーナが、本当に魔族なら、俺の魔王への物言いは不敬罪になると思うが、知った事ではない。
 俺は、もしもの時は、リーナを絶対に魔王の手から守り抜かなくてはならないのである。
 その相手に、敬語を使う余裕などある訳ないのだ。

 冒険者ギルドに居る冒険者達は、なんか俺の事をハラハラした感じで見てるし。
 分かるよ。俺、殺気立ってるもんね。

「そうか。お前達は魔族なのだな。それでは、ミカーワ湖にすくっていた大カマキリを倒してくれてありがとう。あのデカブツには、少々困っておったのじゃ。
 近いうち、必ず、ワシ自ら討伐しようと思っておったのじゃが、ここ数年、人族との戦争の準備が忙しくて、その余裕が無かったのじゃ」

 どうやら、魔族が人族領に攻め込もうとしていたのは、本当の事であった事が証明されてしまった。
 というか、戦争の準備が忙しいというのに魔王自らが、ここに来たという事は、やはり、人族である俺とリーナが、ミカーワに居る事を知って、魔王自らが、抹殺しに来たのか?
 絶対に、そうとしか思えないのだけど。
 俺は、大量の冷や汗を吹き出しながらも、腰に差してある、十一文字権蔵に手をやる。

「じゃが、最近、魔族領と人族領に大量にいたドエラ・ムッキーラが全滅してしまってな。それをしたのが、どうやら人族たった2人だけの仕業のようなのだ。
 そんな恐ろしい奴らがいる、人族と戦争など出来よう筈ないと、最近、会議で決まったのじゃ」

 魔王は、俺とリーナを見て、ニヤリと笑う。

「もしかして、その人族2人が、俺達兄妹と思ってる訳か?」

 俺は、恐る恐るやんわり聞いてみる。

「ん?お前達、兄妹は魔族なのじゃろ?そして、お前達が、ドエラムッキーラを全滅させた訳ではないではないか?
 しかも、もし、お主ら2人が厄災級のドエラムッキーラ100匹あまりを倒したとしたなら、ワシに、お主ら2人を倒す力などないわ!
 ワシでさえ、1日に5匹倒すのが限度。その人族2人組のように、ドエラムッキーラを一瞬で倒す事など不可能じゃ!」

「そうなのか?」

「そうじゃ。なので、お主らは見たところ、健全な魔族のようだから、ドエラムッキーラを倒した人族とは関係無いと、今、結論づけた!
 ここに来る前、ミカーワの者達にも、お前達兄妹の話を聞いて来たのだが、お前達2人は、すこぶるミカーワの者達に慕われてる魔族のようじゃしな!」

 ここで、多分だが、俺の腕相撲効果も出ていたようである。
 俺は、暇さえあれば、ミカーワの街で、腕相撲じゃなくて、レベル上げをしていたのである。
 いつものように、お金を掛けてね。

 そして、俺はいつも盛大に負けやってたのだ。10回に3回ぐらいね。

 特に、お金の困ってそうな魔族に、重点的に負けてやってたから、俺、ミカーワの貧乏人達に、本当に人気になっちゃって、最近では、ミカーワの街を歩くのも大変になってたのである。

 孤児の子供達には、腕相撲が弱いオッチャンと呼ばれる始末だし。

 街の人達にも、貧しい魔族にわざと負けてるのバレちゃってるし、まあ、普通の魔族に対しては、ちゃんと勝負してると思われてるので良いのだけど。

 兎に角、プラチナ冒険者として、この街で活躍するリーナと、腕相撲が弱いオッチャンとして活躍してる俺は、ミカーワの街で人気爆発インフレ状態なのである。

 まあ、この街で俺達兄妹を悪く言う人は、1人も居ないと断言できるし、
 俺達の事を悪く言ってた奴には、重点的に、俺は腕相撲を負けやって、俺の事を金の成る木かなんかと思わせる所まで、俺は頑張ったのである。

 ん?何故、そんな事をしてたのかだって?

 そんなのは、可愛いリーナの為に決まってるでしょ!
 リーナが、冒険者の拠点にしてる街で、リーナが危ない目に遭ったら嫌じゃない。

 俺は、リーナの兄として、気持ち良くミカーワの街で、リーナに冒険者活動してもらいたいだけなのである。
 その為なら、どんな道化にもなると決めてるのだ。

 お陰で、街を歩くと、毎回、腕相撲やろう!と、孤児に付き纏われるようになっちゃったけど、それも本望。
 俺は、リーナの為なら、なんだってやるお兄ちゃんなのである!
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

称号は神を土下座させた男。

春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」 「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」 「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」 これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。 主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。 ※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。 ※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。 ※無断転載は厳に禁じます

自動翻訳だけでも欲しかった!

姫川 林檎
ファンタジー
1話短めになっています。 暇つぶしに読んでくれたら嬉しいです。 瑠音(ルネ)は家族旅行の最終夜に光に飲み込まれ異世界へ飛ばされてしまう。しかしラノベのお決まりの何故か言葉が解る能力はなく、助けてくれた相手と意思の疎通が出来ない。 頑張って言葉を覚え様とするが食べ物が合わず体調を崩してしまう。この世界の食事が期待出来ないので自力で改善して、頑張って生きていく。

俺のスキルが無だった件

しょうわな人
ファンタジー
 会社から帰宅中に若者に親父狩りされていた俺、神城闘史(かみしろとうじ)。  攻撃してきたのを捌いて、逃れようとしていた時に眩しい光に包まれた。  気がつけば、見知らぬ部屋にいた俺と俺を狩ろうとしていた若者五人。  偉そうな爺さんにステータスオープンと言えと言われて素直に従った。  若者五人はどうやら爺さんを満足させたらしい。が、俺のステータスは爺さんからすればゴミカスと同じだったようだ。  いきなり金貨二枚を持たされて放り出された俺。しかし、スキルの真価を知り人助け(何でも屋)をしながら異世界で生活する事になった。 【お知らせ】 カクヨムで掲載、完結済の当作品を、微修正してこちらで再掲載させて貰います。よろしくお願いします。

宝くじ当選を願って氏神様にお百度参りしていたら、異世界に行き来できるようになったので、交易してみた。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」と「カクヨム」にも投稿しています。 2020年11月15日「カクヨム」日間異世界ファンタジーランキング91位 2020年11月20日「カクヨム」日間異世界ファンタジーランキング84位

俺の召喚獣だけレベルアップする

摂政
ファンタジー
【第10章、始動!!】ダンジョンが現れた、現代社会のお話 主人公の冴島渉は、友人の誘いに乗って、冒険者登録を行った しかし、彼が神から与えられたのは、一生レベルアップしない召喚獣を用いて戦う【召喚士】という力だった それでも、渉は召喚獣を使って、見事、ダンジョンのボスを撃破する そして、彼が得たのは----召喚獣をレベルアップさせる能力だった この世界で唯一、召喚獣をレベルアップさせられる渉 神から与えられた制約で、人間とパーティーを組めない彼は、誰にも知られることがないまま、どんどん強くなっていく…… ※召喚獣や魔物などについて、『おーぷん2ちゃんねる:にゅー速VIP』にて『おーぷん民でまじめにファンタジー世界を作ろう』で作られた世界観……というか、モンスターを一部使用して書きました!! 内容を纏めたwikiもありますので、お暇な時に一読していただければ更に楽しめるかもしれません? https://www65.atwiki.jp/opfan/pages/1.html

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※毎週、月、水、金曜日更新 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。 ※追放要素、ざまあ要素は第二章からです。

処理中です...