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175. ミカーワの街に、魔王襲来!
しおりを挟む「して、トト・カスタネットは、最近建国されたサクラ神聖国の王の名と同じ名なのは、ワシの気のせいか?
まあ、トト・カスタネットが魔族だったとは、ワシも聞き及んでいなかったのじゃがな?」
魔王が、俺の事をギロリと睨んでくる。
金色の切れ長の目が、物凄く怖いのだけど。
だけれども、ビビる訳にはいかない。
だって、俺はリーナのお兄ちゃんなのだ。
お兄ちゃんが、可愛い妹の前で、ビビってる場合じゃないのだ。
何があったとしても、絶対にリーナだけは守り抜く!
それが、俺がリーナの兄としての義務なのである!
「見ての通り、俺もリーナも魔族だが」
俺は、嘘を貫き通す事にした。
まあ、完全にバレてると思うけど。
「そうか。それならワシは、お前達兄妹の事を、魔族として接しれば良いのじゃな?」
「ああ。そうだ。俺達の事は、魔族として接してくれ!」
俺とリーナが、本当に魔族なら、俺の魔王への物言いは不敬罪になると思うが、知った事ではない。
俺は、もしもの時は、リーナを絶対に魔王の手から守り抜かなくてはならないのである。
その相手に、敬語を使う余裕などある訳ないのだ。
冒険者ギルドに居る冒険者達は、なんか俺の事をハラハラした感じで見てるし。
分かるよ。俺、殺気立ってるもんね。
「そうか。お前達は魔族なのだな。それでは、ミカーワ湖にすくっていた大カマキリを倒してくれてありがとう。あのデカブツには、少々困っておったのじゃ。
近いうち、必ず、ワシ自ら討伐しようと思っておったのじゃが、ここ数年、人族との戦争の準備が忙しくて、その余裕が無かったのじゃ」
どうやら、魔族が人族領に攻め込もうとしていたのは、本当の事であった事が証明されてしまった。
というか、戦争の準備が忙しいというのに魔王自らが、ここに来たという事は、やはり、人族である俺とリーナが、ミカーワに居る事を知って、魔王自らが、抹殺しに来たのか?
絶対に、そうとしか思えないのだけど。
俺は、大量の冷や汗を吹き出しながらも、腰に差してある、十一文字権蔵に手をやる。
「じゃが、最近、魔族領と人族領に大量にいたドエラ・ムッキーラが全滅してしまってな。それをしたのが、どうやら人族たった2人だけの仕業のようなのだ。
そんな恐ろしい奴らがいる、人族と戦争など出来よう筈ないと、最近、会議で決まったのじゃ」
魔王は、俺とリーナを見て、ニヤリと笑う。
「もしかして、その人族2人が、俺達兄妹と思ってる訳か?」
俺は、恐る恐るやんわり聞いてみる。
「ん?お前達、兄妹は魔族なのじゃろ?そして、お前達が、ドエラムッキーラを全滅させた訳ではないではないか?
しかも、もし、お主ら2人が厄災級のドエラムッキーラ100匹あまりを倒したとしたなら、ワシに、お主ら2人を倒す力などないわ!
ワシでさえ、1日に5匹倒すのが限度。その人族2人組のように、ドエラムッキーラを一瞬で倒す事など不可能じゃ!」
「そうなのか?」
「そうじゃ。なので、お主らは見たところ、健全な魔族のようだから、ドエラムッキーラを倒した人族とは関係無いと、今、結論づけた!
ここに来る前、ミカーワの者達にも、お前達兄妹の話を聞いて来たのだが、お前達2人は、すこぶるミカーワの者達に慕われてる魔族のようじゃしな!」
ここで、多分だが、俺の腕相撲効果も出ていたようである。
俺は、暇さえあれば、ミカーワの街で、腕相撲じゃなくて、レベル上げをしていたのである。
いつものように、お金を掛けてね。
そして、俺はいつも盛大に負けやってたのだ。10回に3回ぐらいね。
特に、お金の困ってそうな魔族に、重点的に負けてやってたから、俺、ミカーワの貧乏人達に、本当に人気になっちゃって、最近では、ミカーワの街を歩くのも大変になってたのである。
孤児の子供達には、腕相撲が弱いオッチャンと呼ばれる始末だし。
街の人達にも、貧しい魔族にわざと負けてるのバレちゃってるし、まあ、普通の魔族に対しては、ちゃんと勝負してると思われてるので良いのだけど。
兎に角、プラチナ冒険者として、この街で活躍するリーナと、腕相撲が弱いオッチャンとして活躍してる俺は、ミカーワの街で人気爆発インフレ状態なのである。
まあ、この街で俺達兄妹を悪く言う人は、1人も居ないと断言できるし、
俺達の事を悪く言ってた奴には、重点的に、俺は腕相撲を負けやって、俺の事を金の成る木かなんかと思わせる所まで、俺は頑張ったのである。
ん?何故、そんな事をしてたのかだって?
そんなのは、可愛いリーナの為に決まってるでしょ!
リーナが、冒険者の拠点にしてる街で、リーナが危ない目に遭ったら嫌じゃない。
俺は、リーナの兄として、気持ち良くミカーワの街で、リーナに冒険者活動してもらいたいだけなのである。
その為なら、どんな道化にもなると決めてるのだ。
お陰で、街を歩くと、毎回、腕相撲やろう!と、孤児に付き纏われるようになっちゃったけど、それも本望。
俺は、リーナの為なら、なんだってやるお兄ちゃんなのである!
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