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120. エルフ王国に天災が訪れる

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 俺達『銀のカスタネット』は、深き緑の森を守るエルフ達によって、人類が誰も招待された事が無いと思うエルフ王国に案内された。

 まあ、国と言っても300人くらいの集落で、エルフらしく木の上に住居を作って住んでるようである。

「これが、エルフが住まう住宅なのですね!」

 知識欲旺盛なサクラ姫が、エルフの家を見て感動してる。

「でも、崩壊してる家もあるね……」

 アマンダさんが、言わなくても良い事を言ってしまう。

 まあ、木も成長してるから、枝とかがあらぬ方向から伸びてきたりしたら、そりゃあ崩壊するよね。
 剪定とかすればいいのに、エルフ族は道とか作る時以外は、木を絶対に傷つけたりしないらしい。それで、家が崩壊するとか、本当に本末転倒である。

 でもって、俺達は、一際大きな大木に建つエルフ王の住居に案内されたのだが、これまた家に木の枝が侵食していて、家の中は本当に歩きにくい。
 だって、廊下に普通に木の枝が生えてるんだもん。
 幻想的と言えば幻想的にも見えるけど、これ、老人とかが歩いたら危ないだろ。
 老人って、コケただけで骨折とかして、それが原因で死んじゃったりするんだから。

 そんなしょうもない事を考えながら、エルフ王が居る部屋に行ったのだが、ここでもサクラ姫無双は続く。

「お初にお目にかかりますエルフ王。しかし、私達はマール王国代理として、アニエス神聖国へ女神様にお目通りする為に向かっている所なのです!
 本来なら、この世界の最高神に会いに行く訳ですから、寄り道など絶対に出来ません。それなのにエルフ王国の兵士が、なんとかエルフ王に会うようにと言うので、渋々参ったのですが、これは女神様にお目通りするよりも、大事な事なのでしょうか?
 私は、女神様に関する事以外に、この世界に大事な事など無いという認識だったのですけれど、エルフ王国では、女神様よりエルフ王の方が上という見解なのか、私はとても興味を持ち、エルフ王にも直接、見解を聞いてみようと、ここまで参上した次第でございます!」

 サクラ姫は、スラスラと上から目線で、多分、200歳を越えるであろうエルフ王に言い放つ。
 エルフ王は、想像を越えるサクラ姫の物言いに困惑してる。
 そりゃあ、いきなり、この世界の最高神である女神様より、一地域の小国の王様であるエルフ王の方が、立場が上なのか?なんて聞かれたら困るよね。
 そんなの絶対に女神様が上に決まってるもん。

 いつもなら、エルフ王国に迷い込んだ者を、上から目線で断罪してしてたんだと思うけど、今は逆に断罪されちゃってるんだもん。しかも、まだ9歳の幼女に。

 感じとしては、大人がいけない事をして、子供に注意されてる感じになってしまってるのだ。

 食事の前は、手を洗わないといけないんだよ!て、感じで、
 それとも、寝る前には歯を磨かないといけないんだよ!て、感じで、
 もっと言うと、人に会ったら、ちゃんと挨拶しましょう!と、言った感じに、エルフ王は、幼女に注意されてしまったのである。

「わしらエルフ族は世界樹を崇めてるから、女神様の件に関しては関係ない事だ」

 エルフ王は、サクラ姫に言い訳をする。
 その場で謝っておけばいいのに、サクラ姫に対して、この対応は悪手である。

「という事は、女神様より、世界樹の方がこの世界では立場が上で、地位が高いと仰りたいのですね!
 この世界は、女神様が創造したという言い伝えなのに。即ち、世界樹をも創造した女神様が、世界樹より立場が下というのが、エルフ族全体の見解と思って間違いないのですね!」

「それは……」

「この話は、直ちに、アニエス教を信じる国々に報告しなくてはなりません!
 エルフ王国は、世界を創造なされた女神様より、世界樹の方を上に見てるので、女神様に関するあらゆる事は、全て後回しで良いと考えてると!
 実際に、あらゆる事を後回しにして、女神様に早くお目通りしたい私共マール王国の使者を引き止めた訳ですから、その世界樹こそ世界の最高神であるというエルフ族の考えは、絶対の事なのでしょう!」

「違…う……」

 エルフ王は、青い顔して反論しようとするが、それを制止するようにサクラ姫は畳み掛ける。

「違いません!実際に女神詣に行く私達を止めたのですから、エルフ族は女神様を軽く見ているのです!」

 なんか分からないが、サクラ姫は戦闘モードに入っている。
 もしかして、やるの?
 エルフ王国と戦争?
 今、俺とサクラ姫とアマンダさんしか居ないんだよ?

 せめて、ナナミさんが起きてたら良かったのに。

 とか、思ってたら、いつの間にか巨大なハンマーを持ったナナミさんが、俺の後ろに立っていた。

 ナナミさん、起きてたのかよ。
 というか、もう昼過ぎだから起きてても良い頃か。

「サクラ、この壊れかけの欠陥住宅を解体していいの?」

 ナナミさん……サクラ姫に何聞いてるの?
 確かに、住居のあちこちに木の枝が侵食してしまってるけど、見方によっては幻想的に見えなくはないのだけど……
 というか、もう住居を解体する気満々で、巨大なハンマーを肩に担いじゃってるし。

「ですね。私も住居のあちこちに、枝が飛び出してて、エルフ王のような老人には危ないと思ってましたの。
 エルフ王国は、どうやら女神様を信仰する国ではなさそうなので、国自体を解体してしまっても良さそうですよ!」

「うん!」

 ナナミさんは、嬉しそうに返事をする。

 そして、巨大なハンマーになにやら付いているスイッチを、ポチッ!と、押した。

 するとハンマーの後ろ側が火を吹き、

 ナナミさんを中心として、巨大ハンマーがまるで駒のように高速回転しだした。

 俺達は身の危険を感じ、そうそうと、どこでも扉で馬車まで退避し、エルフ王国を離れる。

 その後、どうなったかって?
 小型ナナミ台風が、エルフ王国の住居という住居を破壊したんだよ。
 天災は誰にも止められないのだ。

 エルフ族もナナミさんに対応しようと頑張ってたが、天災には魔法も弓矢も何も効かないよね。全て、ナナミ台風に弾き飛ばされたし。

 こうしてまたもや、ナナミさんは国一つを崩壊させてしまったのだった。
 まあ、欠陥住宅ばかりだったから、これで新たな台風にも耐えれる家を建てる切っ掛けになっただろう。

 人という生き物は、天災を乗り越え成長していく生き物なのである。
 次はきっと、ナナミ台風にも耐えれる住居を建築するだろう。

 トト・カスタネットは、そう思う事で、心のモヤモヤというか、巨大過ぎる罪悪感を払拭したのであった。
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