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94. バツーダ帝国に潜入

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 俺達『銀のカスタネット』は、国境を渡り、晴れてバツーダ帝国に入国する事に成功した。

 相当、トランペット辺境伯に危ないから、バツーダ帝国に行くなと言われたが、行くなと言われると行きたくなるのが人というもの。

 俺達は、トランペット辺境伯を振り切ってバツーダ帝国の国境を越えたのだった。

 マール王国とバツーダ帝国の国境は、小さな小川一本を境になんとなく決められている。意外と国境とはそんなものらしい。
 全てを、壁で分断する事なんか出来ないし。

 それから、国境付近には、どちらも軍を置いてない。
 もし、どちらかが国境に軍を進めたら、それは戦争の合図となってしまう。
 なので、マール王国の場合は、国境に一番近いカスタネット辺境伯領に兵を集結させているのだ。

 そして、俺達は、国境に一番近いバツーダ帝国の都市、クレソン城塞都市に向かう。
 クレソン城塞都市も、マール王国のトランペット城塞都市と同じく、堅牢で大きな城塞都市である。

 思ってた通りというが、クレソン城塞都市も、これから起こるであろう戦争に備えてか、兵士が集まっていた。

 そして、俺達はというとスキルテイカーで、迷彩カメレオンから得た透明スキルを使って、クレソン城塞都市に侵入した。

 多分、俺達『銀のカスタネット』の鮮血姫が、マール王国第2王女サクラ・フォン・マールと身バレてると思われるから。

 だって、トランペット城塞都市から出る時、トランペット辺境伯が泣きながら、サクラ行かないでおくれ~とか、ずっと追い掛け来てたから。

 それを見てたトランペット城塞都市の人々は、最近、塔のダンジョンを完全攻略した『銀のカスタネット』の鮮血姫が、サクラ姫だと理解したと思うし。

 だって、トランペット辺境伯が孫バカだって事、トランペット城塞都市に住んでる人なら、誰でも知ってるから。

 何か知らんが、毎年、夏にサクラ姫が訪れる度に、兵士を引き連れて城塞都市の城門前で待ってたとか。
 そして、王家の馬車が来ると、トランペット辺境伯が毎回、王家の馬車を先導してパレードのような事をしてたらしい……

 ここまで来ると、孫バカを通り越して、猫可愛がりである。

 まあ、サクラ姫がトランペット辺境伯に懐いてた事もあり、トランペット辺境伯は、孫の中で一番お転婆なサクラ姫の事が可愛くて仕方がなかったのだろう。

 サクラ姫は、ただ、スライムの生き〆殺しをマスターしたくて、トランペット辺境伯領に通ってただけだったかもしれないけど。

 そんな訳で、透明スキルでクレソン城塞都市に潜入したのだが、思った通りというかクレソン城塞都市は警戒態勢。

 俺達、『銀のカスタネット』が、バツーダ帝国に行く事がバレてたようである。

 まあ、バツーダ帝国の密偵が、国境近くの大都市であるトランペット城塞都市に居ない訳ないし、絶対に泣きじゃくるトランペット辺境伯が、俺達の後を付いて来て、トランペット城塞都市の城門までお見送りに来てたの見られてたと思うし。

 本当に、透明スキルを持ってて良かったよ。
 でも、これで決定してしまった。
 俺達、バツーダ帝国では、大手を振って歩けない事が。

 やはり、バツーダ帝国が、サクラ姫を狙ってる事は確かのようだ。
 何故に、サクラ姫をピンポイントで狙ってくるかのは謎だけど。

 まあ、王族の中でサクラ姫を狙うのが一番簡単だったのかもしれない。
 多分、呪いを掛けるには、その者の体の一部。髪の毛やら唾液とか、その他にも身に付けたてた物など触媒が必要と言われている。

 その点、子供の頃からアグレッシブであったサクラ姫の髪の毛を手に入れるのは、思いのほか簡単だったのかもしれない。
 毎年、夏になると国境近くのトランペット辺境伯領に来てた訳だから。

 そして、サクラ姫が狙われたのだ。
 サクラ姫に掛かってた呪いは、結構強力だったので、髪や衣服の他にも、多分、サクラ姫の血とかも使われてたと思う。
 スライムの生き〆殺しをマスターする為に、生傷も耐えなかったと思うし。

 それを、トランペット辺境伯領に紛れこんでいた、バツーダ帝国の間者が採取したのだ。

 バツーダ帝国が、サクラ姫を殺す事に何がメリットがあったのかは謎だが、やはり、俺はサクラ姫に呪いを掛けたバツーダ帝国宮廷魔術師ヨセフ・アッカマンを、どうしても許せないのである。

 サクラ姫は、アッカマンの事を、俺と引き合わせてくれて愛のキューピットとか、頭が沸いたような事を言ってるが、また、いつサクラ姫を殺そうと刺客を送ってくるのか分からないのだ。

 やはり、これを機会に殺して置くべきだと、俺は思ってたりする。

 そう、俺は、俺の身内に手を出した奴は、絶対に許さないのだ。

 長男カーク以外は、絶対にね!

 ーーー

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