19 / 172
19. 騎士団
しおりを挟む俺は、武蔵野国三賢人が一人、坂田権蔵さんから、5000万マールもする十一文字権蔵を貰ってウキウキが止まらない。
「はぁ~早く試し斬りしたい」
俺が、城へ帰る道すがら独り言を言ってると、
「トト! それなら騎士団の訓練所に行こ!訓練所なら、試し斬りするものとか有ると思うよ!」
城の事をよく知ってるサクラ姫が提案する。
「なるほど。確かに、騎士団の訓練所なら、試し斬りできそうな丸太とか、なんか有りそうだしな! そこでできれば、少し剣の訓練もしてみたいし!」
剣を握ると『握手』スキルの効果で、形の上では、剣豪になるという事なのだが、如何せん、俺は今日生まれて初めて剣を握ったのだ。
剣豪になったと言われても、まだ、ピン!と来ないし、本当に、剣豪になったのかも疑心暗鬼なのである。
てな訳で、俺はサクラ姫に案内されて騎士団の訓練所に来たのだが、
「なんか、アウェイ感がハンパないんだけど……」
「仕方が無いよ。みんな、私の騎士になる事を狙ってたんだから!」
サクラ姫が、無頓着に答える。
「何、それ?」
「王族は、15歳になる前に、自分の護衛騎士を決める風習があるの! 王族直属の騎士になる事は、騎士の名誉だし。誰もが憧れる栄誉職なの。王族の護衛騎士だけが、ミスリルの鎧を装備できるしね!」
サクラ姫が、端折って説明してくれる。
「そうなの?」
「そうだよ! だから、トトも格好良いミスリルの鎧が着れて、良かったよね」
「いやいやいや、そこじゃなくて、正直、ミスリルの鎧なんかお金さえあれば誰でも装備できるし、王族直属の護衛騎士って、そんなに人気がある職業だって所!
王族の護衛騎士って、良いところの身分が高い貴族の子息なんかがなる、形だけの閑職かなんかじゃなかったのか?」
俺は、王族の護衛騎士って、自分の子供を戦争などで怪我を負わせたくない上級貴族達が、コネかなんかを使ってさせるものだと思ってたのだ。
「違うよ! 騎士にとってミスリルの鎧が着れるのは、名誉な事なんだから!
みんなミスリルの鎧を着る為に、切磋琢磨して自分を鍛えてるんだよ!」
なんか知らんが、サクラ姫は、ミスリルの鎧を強調する。
確かに、フルメイルのミスリルの鎧になると、とんでもないお値段になると思うけど、それほど、装備したいものなのか?
まあ、目立ちたがり屋は装備したいと思うけど。
だけれども、王族の護衛騎士だぜ?
ずっと、王族に付きっきりで自分の自由も無くなっちゃうし、普通の騎士団に所属してる方がいいと思うけど。
俺なんか、サクラ姫の子守りだぜ。
まあ、俺の場合、王都内限定でやりたい事やらせて貰ってるけどね。
逆に、そんな自由な感じで、サクラ姫の騎士をしてる俺の事を、修練中の騎士達は許せないのか?
まあ、確かに、今の俺の状況を見れば、俺がサクラ姫を連れ回してるようにしか見えないし……
俺は、剣の試し斬りをしたいばかりに、とんでもないアウェイに来てしまったようである。
「騎士団長! トトが初めて剣を手に入れたから、試し斬りさせてあげて!」
そんな俺の気持ちも知らないで、サクラ姫が空気を読まずに、騎士団長に試し斬りさせて貰う為に、掛け合ってくれている。
なんか、今の状況、俺がサクラ姫を使って命令してるようにしか見えないのだけど。
「ほほ~サクラ姫の騎士殿が、初めて剣を手に入れたと」
なんか、騎士団長が、値踏みするように俺を見てるし。そもそも、サクラ姫の騎士の癖して、今迄、剣を持ってなかった方が問題だったような……
なんか、サクラ姫の話を聞いていた騎士団の人達が、物凄く怒ってるような気がする。
まあ、サクラ姫の話を聞けば、俺は剣を握った事もないのに、サクラ姫の騎士になったという事だし。
剣の腕を磨いて、サクラ姫の騎士を狙ってた人達は、そりゃあ、怒るよね……
「何か、丸太とか無いですか?」
いやいやいや、サクラさん、空気読まな過ぎですから。
この何とも言えない、殺伐とした空気が解らないの?
「なるほど、丸太ですね。そしたら、王族であるサクラ姫様の騎士様に見合った、ぶっとい丸太を用意しましょう」
なんか、騎士団長、俺に恥をかかせる気、満々じゃないの?
そして、俺の無様な姿をサクラ姫に見せつけて、俺ではない、本来、サクラ姫に見合った新しい凄腕の騎士を、サクラ姫の護衛騎士に選んで貰おうという作戦なのではないのか?
そうこうしてるうちに話は進んで、ぶっとい丸太が何本か、騎士団の練習場に並べられた。
「それでは、アルフレッド! 見本として、サクラ姫の護衛騎士殿に、試し斬りを見せてやれ!」
「ハッ!」
アルフレッドとかいう、若手の、如何にも凄腕そうなイケメン騎士が、指名されて前に出て来る。
きっとコイツは、ずっとサクラ姫の護衛騎士になる事を狙ってたに違いない。
というか、俺の事を一瞥して、ニヤリとしやがった。
もう、俺を事を恥かかせる気満々である。
そして、丸太の前まで来ると、剣を構えて、精神を集中する。
やはり、これだけぶっとい丸太を一刀両断する為には、それなりの集中が必要なのだろう。だって、クマの胴体ほどの太さの丸太なんだよ。せめて、人の太さの丸太にしてくれよ……
「ハアァァ~チェイスト!!」
ズザン!!
変な掛け声と共に放たれた、鋭い斬撃によって、ぶっとい丸太は真っ二つ。
この若手のイケメン騎士が、相当な凄腕だという事が分かる。
「それでは、トト殿。剣を初めて手に入れたという貴方が、丸太が斬れるかどうかは分かりませんが、別に斬れなくても恥じる事でもないので、私のようにやってみて下さいませ」
口では、丁寧な言葉を並べて喋ってるが、このイケメン騎士の目は、俺に恥をかかせる気満々である。どうせ、俺が斬れないとも思ってるのだろ。
だけどな、イケメン君よ。俺が持ってる剣は、かの武蔵野国三賢人の一人坂田権蔵が、丹精込めて打った十一文字権蔵なんだぜ!
もし、俺の腕が劣ってたとしても、多分、俺の十一文字権蔵が、俺の剣の腕を補う余りある性能で、ぶっとい丸太を真っ二つにしてくれんだよ!
てな事を、内心思いながら、トトは精神統一し、腰に差してた十一文字権蔵の鞘を握った。
468
お気に入りに追加
868
あなたにおすすめの小説
おっさんの神器はハズレではない
兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。
成長チートと全能神
ハーフ
ファンタジー
居眠り運転の車から20人の命を救った主人公,神代弘樹は実は全能神と魂が一緒だった。人々の命を救った彼は全能神の弟の全智神に成長チートをもらって伯爵の3男として転生する。成長チートと努力と知識と加護で最速で進化し無双する。
戦い、商業、政治、全てで彼は無双する!!
____________________________
質問、誤字脱字など感想で教えてくださると嬉しいです。
勇者、追放される ~仲間がクズばかりだったので、魔王とお茶してのんびり過ごす。戻ってこいと言われても断固拒否。~
秋鷺 照
ファンタジー
強すぎて勇者になってしまったレッグは、パーティーを追放され、一人で魔王城へ行く。美味しいと噂の、魔族領の茶を飲むために!(ちゃんと人類も守る)
クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される
こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる
初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。
なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています
こちらの作品も宜しければお願いします
[イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。
幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』
電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。
龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。
そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。
盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。
当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。
今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。
ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。
ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ
「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」
全員の目と口が弧を描いたのが見えた。
一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。
作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌()
15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26
チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?
桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」
その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。
影響するステータスは『運』。
聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。
第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。
すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。
より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!
真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。
【簡単な流れ】
勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ
【原題】
『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる