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30. 聖戦

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「ミミ、どうしよう?」

 リーナは、慌てふためく。
 そもそも、荒事などしたくないのだ。
 ただ、リーナは、王城に引き篭って、読書したいだけなのに。

「現人神であらせられる、リーナお嬢様が治めるリーナ神聖国に攻め込むなど、そんな大それた事をする大罪国家など、天罰を下すほか有りませんね!」

 なんか、ミミがおかしな事を言っている。

「あの……天罰とは?」

「鑑定書き換えスキルで、『天から降る槍』を、10万本ほど作って下さい」

「それで、どうするの?」

「勿論、天から降らして、敵を殲滅します!」

「人、たくさん死んじゃうよね……」

「当然です。神であるリーナお嬢様に歯向かう大罪人ですから、死んで罪を償わなくてはなりません」

 ミミは、真顔で述べる。

「あの……そこまでしなくて、いいような……」

「流石は、リーナお嬢様!慈悲深い!
 ならば、石化する雨を降らしましょう。
 攻めて来た敵軍を、生きながらに石のオブジェにし、何千年も石が朽ち果てるまで、神であるリーナお嬢様に歯向かった罰を、反省させるのです!」

 また、ミミがおかしな事を言い出した。

「石化する雨?」

「『石化する水』を『鑑定書き換え』スキルで作って下さい
 それを敵軍に振りかけますから」

「雨って、降らせられるものなの?」

「陸からリーナ神聖国に入る為には、リーナ渓谷を必ず通らなければなりません。
 そこで、『石になる水』を、谷の上から敵に振り掛ける作戦です!」

 なんか、興奮して来たのか、ミミは鼻を膨らましながら言う。

「ん? リーナ渓谷?」

 なんか、聞いた事ない渓谷の名前が出て来た。

「旧アマン渓谷の事ですね!国名がリーナ神聖国に変わったと同時に、渓谷の名前も、アマン渓谷から、リーナ渓谷に変わったのです!」

「そ……そうなんだ……」

 なんか、ミミの目が輝いている。
 どれだけ、リーナの事が大好きなのだろう。
 完全に、狂信者のそれである。

「ですから、すぐに『石になる水』を、作って下さいませ!
 ここからは、時間との勝負です!
 早くしないと、神聖教会軍に、リーナ神聖国が滅ぼされてしまいます!」

 リーナは、ミミに急かされて、前に作っておいた、『水が湧くヤカン』を、『石化する水が湧くヤカン』に、『鑑定書き換え』スキルで書き換えて、ミミに渡した。

「リーナお嬢様! これで、この聖戦も勝ったも同然です!
 必ずや、リーナお嬢様に、勝利の報告が出来るでしょう!」

 ミミは、『石化する水が湧き出るヤカン』を持って、行ってしまった。

 これだけ……

 リーナは、ちょっと、呆気に取られる。
 戦争するというもんだから、もしかして、陣頭指揮をして戦わなくてはならないのかと思ってたのだが、リーナは、『石になる水が湧き出るヤカン』を作っただけ。

 その時間、僅か10秒。

 たった、それだけの時間を割いただけで、2日後、リーナ神聖国大勝利の報告が、リーナの耳に入ってきたのだった。

 話を聞くと、神聖教会3万の軍隊が、リーナ神聖国と隣国の国境にある、リーナ渓谷に入ると、突然、土砂降りのような雨が降って来て、前方に居た兵士約1万が、石化してしまったとか。
 そして、司令官まで石化してしまった事により、軍は崩壊、我先にとリーナ渓谷から逃げ出そうとした事により、ドミノのように人が倒れ、またまた兵士の大半が圧迫死してしまったようだ。

 石にもされず、圧迫死もせず、生き残ったのは、3万の軍隊のうち、たった100人程だったとか。

 リーナは、殺さないようにと言ったのに、結局、石にされた人を除いて、1万900人もの兵士が死んでしまったようであった。

 まあ、勝手に、慌てて逃げて、勝手に圧迫死したのだから、リーナの預かり知らぬ事なのだけど。
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