525 / 568
525. 真打ち登場
しおりを挟む「リコリット! 親戚だから今まで我慢してたが、これ以上の横暴は、ブリテン王国王位継承権第2位の僕が許さない!」
リコリットは、凄まじい冷や汗と共に覚醒する。
「嘘だろ……」
俺は、信じれられない気持ちでいっぱいになる。
今回は、相当、上手くいってた筈なのだ。
それなのに……。
ぐおぉぉぉーー!
どうすればいいんだよ!
どう運んでも、絶対にリチャード王子は、闇堕ちするというシナリオに突き進んでしまう。
糞! これが『恋愛イチャイチャ キングダム』のシナリオの力なのかよ!
というか、悪魔王ルシファー召喚は、『恋愛イチャイチャ キングダム』と全く関係無かった。
糞っ! 糞っ! 糞っ! 本当にどうすればいいんだよ!
これが、1週間後や1ヶ月後に死ぬのだったらまだ諦めもついて、その間、好きな事をやりたい放題して楽しめば良いと思うが、いきなり修羅場から始まって、5分で毎回死ぬ人生なんて、流石に気がおかしくなってしまう。
こんな時こそ、シロ助けてくれよ!
シロは、俺の無理難題を何でも叶えてくれる便利メイドじゃないのかよ!
俺は肝心な時に助けてくれないシロに、とても腹がたってきた。
もう、どうにでもなりやがれ!
どうせ5分後に死ぬのだ。
俺は、ヤケッパチになって、本気の闘気を漲らせ、今、自分が発動できるありったけ極大魔法を、至近距離にいるリチャード王子に向けて発動する。
「俺様は、何度もお前に殺されて、頭にきてるんだよ!」
ドッカーーン!
俺の極大魔法を、至近距離で受けたというのに、既に、悪魔王ルシファーの影響を受け始めてるのか、リチャード王子はノーダメージで、元いた位置に留まっている。
「リコリット様ーー!」
「オイ! リコリット!」
「何してんだ!」
流石に、俺の訳の分からない行動に、周りに居た者達がわちゃわちゃ騒ぎ出す。
「リコリット! お前という奴は!」
なんか、リチャード王子が、突然、極大魔法を浴びせられて滅茶苦茶怒ってる。
「そうだぞ! リコリット、お前、一体何やってるんだ!」
小カールも、俺の極大魔法を至近距離で受けたというのに、ノーダメージでしかも、完全に打ち消したリチャード王子の有り得なすぎる状態に全く気付いていない。
だって、リチャード王子は、バンパイアでなく、普通の人間なんだよ。
「何があった!」
そして、騒ぎを聞きつけたメアリーが、Sクラスの教室に慌てて飛び込んできた。
「先生! リコリットが!」
「フム。成程。リコリット、よくやった!」
メアリー先生が、この有り得ない状況を見て、俺を褒める。
そう、本物の天才で達人であるメアリーは、リチャード王子の異常性に直ぐに気がついたようだ。
「メアリー。リチャード王子は、異界の悪魔と契約して、異世界から悪魔王ルシファーを、この世界に召喚する為の贄になってしまっている!」
俺は、端折って、メアリーに今の状況を説明する。
「よく分からんが、そういう事な。確かに、あの禍々しい魔力は、リチャードのものじゃない。
というか、私の事は、メアリー先生と呼べと、何度も言ってるだろ!」
メアリーの野生の勘か、リチャード王子の物凄いヤバさに気付き、額から冷や汗を流しながらも軽口を叩く。
「で、リコリット、その悪魔王ルシファーは、どんだけ強いんだ?
今の、まだ、完全に召喚されてない段階から、冷や汗が止まんないのだが……」
「ブリトニーの十億倍強いな……」
俺は、適当だが、強さが分かるように説明する。
「そんなの無理だろ!私が、ブリトニーに手も足も出なかったの、シロとかに聞いて知ってるだろ!」
「だから、困ってんだよ! 俺が、コイツを抑えようと、今まで何回頑張ってきてると思ってんだよ!」
「そんなの知らねーよ! というか、お前、女の子の癖してセドリックみたいな話し方すんじゃないぞ!」
「うるせー!これが地なんだよ!」
俺とメアリーが、怒鳴りあって喋ってると、Sクラスの生徒達も、事の重大性に気付いたのか臨戦態勢を取り始めてる。
「オイ! リチャード、その禍々しい魔力を引っ込めろ!」
メアリーは、リチャード王子に話し掛ける。
「先生。それより、何で、僕に殺意を向けるんですか?」
リチャード王子は、禍々しいドス黒い魔力を、そのまま溢れ出しながら、メアリーに問い掛ける。
「それは、お前が悪魔と契約したからだ!」
「先生は、僕が強くなる事に、焼き餅焼いてるんですね。
僕が強くなっちゃうと、メアリー先生が、ブリテン王国の王位継承権第1位じゃなくなっちゃいますもんね!」
「リチャード、お前、何言ってんだ?」
「違うんですか?だって、そうでしょう!
貴方達姉妹が、いきなり現れて、僕の大事なモノを全部奪っていったんでしょうが!
そして、また、僕から全てを奪おうとしてるんでしょ!」
なんかヤバい。
リチャード王子の体から、今迄にない禍々しい魔力が渦巻いている。
というか、リチャード王子の本質的な闇は、元はと言えば、全て、アンとメアリーの姉妹が原因であるのだ。
始祖でブリテン女王であったアナスタシアの孫であるアンとメアリーさえ現れなければ、未だに、リチャード王子の父親がブリテン王国の王様で、リチャードが、ブリテン王国の第一王位継承者だった筈なのだ。
それなのに、アンとメアリーが現れて、全てが変わった。
世界もブリテン王国が中心にして動いてたのに、いつの間にかサセックス王国が、世界の3分の1を治めるサセックス帝国連邦の盟主になり、ブリテン王国の名声は地に落ちてしまっている。
「オイ! リチャード、ちょっと落ち着け!」
流石にメアリーも、最悪の事態が刻一刻と近付いてきてると察してるのか、リチャードの気を落ち着かせるのに必死になっている。
「そんなに、僕から全てを奪いたいんですか!」
「だから、私は、ブリテン王国の王位なんて狙ってないって!
狙ってたら、こんな所で、先生なんかしてねーよ!」
「五月蝿い! そんな話、信じられるか!
僕は知ってるんだ! お前達姉妹が性悪な鬼である事を!」
「まあ、鬼であるのは否定しないけど」
「やっぱりな!醜悪な鬼は、僕が成敗してやる!」
「だけど、鬼は鬼でも、私は、武士道を重んじる正義の鬼なんだよ!」
「そんな訳あるか! この性悪鬼姫が!」
リチャード王子の足元に、青白い魔法陣が現れる。
「メアリー! 何、リチャード王子を怒らせちゃってるんだよ!」
「だって、仕方がないだろ! 私は、本当の事を言っただけだし!」
「糞! この役立たず!なんて使えないバカ女なんだ!
栄養全て、その無駄にデカい乳に取られてんじゃねーのか!」
「お前だって、何もできてねーじゃねーか!」
「うるせーやい!」
「糞! こんな時に、頼れるセドリックやシロがいてくれたら……」
「俺はここにいるだろ! テメー舐めてんのか!」
「お前、何言ってんだ?」
思わず、セドリックと聞いて反応してしまった。
「クソーー!こんな時に、アホなメアリーじゃなくて、シロが居てくれたら」
俺は、心底、メアリーの役立たずさに辟易し、シロの有能さを噛み締めるのだった。
「シロじゃなくて、悪かったな!」
「本当にそう。シローー! 頼むから出てきてくれよ!
お前は、俺の無理難題に答えくれる、便利メイドじゃなかったのかよーー!」
俺は心の底から、自分の今の気持ちを叫ぶ。
すると、
「あの、ご主人様? 僕を呼びました?」
シロが、ひょっこっと、Sクラスの入口の扉から現れた。
ーーー
ここまで読んで下さりありがとうございます。
面白かったら、お気に入りにいれてね!
0
お気に入りに追加
636
あなたにおすすめの小説
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
異世界転生したらよくわからない騎士の家に生まれたので、とりあえず死なないように気をつけていたら無双してしまった件。
星の国のマジシャン
ファンタジー
引きこもりニート、40歳の俺が、皇帝に騎士として支える分家の貴族に転生。
そして魔法剣術学校の剣術科に通うことなるが、そこには波瀾万丈な物語が生まれる程の過酷な「必須科目」の数々が。
本家VS分家の「決闘」や、卒業と命を懸け必死で戦い抜く「魔物サバイバル」、さらには40年の弱男人生で味わったことのない甘酸っぱい青春群像劇やモテ期も…。
この世界を動かす、最大の敵にご注目ください!
転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ
如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白?
「え~…大丈夫?」
…大丈夫じゃないです
というかあなた誰?
「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」
…合…コン
私の死因…神様の合コン…
…かない
「てことで…好きな所に転生していいよ!!」
好きな所…転生
じゃ異世界で
「異世界ってそんな子供みたいな…」
子供だし
小2
「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」
よろです
魔法使えるところがいいな
「更に注文!?」
…神様のせいで死んだのに…
「あぁ!!分かりました!!」
やたね
「君…結構策士だな」
そう?
作戦とかは楽しいけど…
「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」
…あそこ?
「…うん。君ならやれるよ。頑張って」
…んな他人事みたいな…
「あ。爵位は結構高めだからね」
しゃくい…?
「じゃ!!」
え?
ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!
「お前のような役立たずは不要だ」と追放された三男の前世は世界最強の賢者でした~今世ではダラダラ生きたいのでスローライフを送ります~
平山和人
ファンタジー
主人公のアベルは転生者だ。一度目の人生は剣聖、二度目は賢者として活躍していた。
三度目の人生はのんびり過ごしたいため、アベルは今までの人生で得たスキルを封印し、貴族として生きることにした。
そして、15歳の誕生日でスキル鑑定によって何のスキルも持ってないためアベルは追放されることになった。
アベルは追放された土地でスローライフを楽しもうとするが、そこは凶悪な魔物が跋扈する魔境であった。
襲い掛かってくる魔物を討伐したことでアベルの実力が明らかになると、領民たちはアベルを救世主と崇め、貴族たちはアベルを取り戻そうと追いかけてくる。
果たしてアベルは夢であるスローライフを送ることが出来るのだろうか。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる