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525. 真打ち登場

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「リコリット! 親戚だから今まで我慢してたが、これ以上の横暴は、ブリテン王国王位継承権第2位の僕が許さない!」

 リコリットは、凄まじい冷や汗と共に覚醒する。

「嘘だろ……」

 俺は、信じれられない気持ちでいっぱいになる。
 今回は、相当、上手くいってた筈なのだ。

 それなのに……。

 ぐおぉぉぉーー!
 どうすればいいんだよ!
 どう運んでも、絶対にリチャード王子は、闇堕ちするというシナリオに突き進んでしまう。

 糞! これが『恋愛イチャイチャ キングダム』のシナリオの力なのかよ!
 というか、悪魔王ルシファー召喚は、『恋愛イチャイチャ キングダム』と全く関係無かった。

 糞っ! 糞っ! 糞っ! 本当にどうすればいいんだよ!

 これが、1週間後や1ヶ月後に死ぬのだったらまだ諦めもついて、その間、好きな事をやりたい放題して楽しめば良いと思うが、いきなり修羅場から始まって、5分で毎回死ぬ人生なんて、流石に気がおかしくなってしまう。

 こんな時こそ、シロ助けてくれよ!
 シロは、俺の無理難題を何でも叶えてくれる便利メイドじゃないのかよ!

 俺は肝心な時に助けてくれないシロに、とても腹がたってきた。

 もう、どうにでもなりやがれ!
 どうせ5分後に死ぬのだ。

 俺は、ヤケッパチになって、本気の闘気を漲らせ、今、自分が発動できるありったけ極大魔法を、至近距離にいるリチャード王子に向けて発動する。

「俺様は、何度もお前に殺されて、頭にきてるんだよ!」

 ドッカーーン!

 俺の極大魔法を、至近距離で受けたというのに、既に、悪魔王ルシファーの影響を受け始めてるのか、リチャード王子はノーダメージで、元いた位置に留まっている。

「リコリット様ーー!」

「オイ! リコリット!」

「何してんだ!」

 流石に、俺の訳の分からない行動に、周りに居た者達がわちゃわちゃ騒ぎ出す。

「リコリット! お前という奴は!」

 なんか、リチャード王子が、突然、極大魔法を浴びせられて滅茶苦茶怒ってる。

「そうだぞ! リコリット、お前、一体何やってるんだ!」

 小カールも、俺の極大魔法を至近距離で受けたというのに、ノーダメージでしかも、完全に打ち消したリチャード王子の有り得なすぎる状態に全く気付いていない。

 だって、リチャード王子は、バンパイアでなく、普通の人間なんだよ。

「何があった!」

 そして、騒ぎを聞きつけたメアリーが、Sクラスの教室に慌てて飛び込んできた。

「先生! リコリットが!」

「フム。成程。リコリット、よくやった!」

 メアリー先生が、この有り得ない状況を見て、俺を褒める。

 そう、本物の天才で達人であるメアリーは、リチャード王子の異常性に直ぐに気がついたようだ。

「メアリー。リチャード王子は、異界の悪魔と契約して、異世界から悪魔王ルシファーを、この世界に召喚する為の贄になってしまっている!」

 俺は、端折って、メアリーに今の状況を説明する。

「よく分からんが、そういう事な。確かに、あの禍々しい魔力は、リチャードのものじゃない。
 というか、私の事は、メアリー先生と呼べと、何度も言ってるだろ!」

 メアリーの野生の勘か、リチャード王子の物凄いヤバさに気付き、額から冷や汗を流しながらも軽口を叩く。

「で、リコリット、その悪魔王ルシファーは、どんだけ強いんだ?
 今の、まだ、完全に召喚されてない段階から、冷や汗が止まんないのだが……」

「ブリトニーの十億倍強いな……」

 俺は、適当だが、強さが分かるように説明する。

「そんなの無理だろ!私が、ブリトニーに手も足も出なかったの、シロとかに聞いて知ってるだろ!」

「だから、困ってんだよ! 俺が、コイツを抑えようと、今まで何回頑張ってきてると思ってんだよ!」

「そんなの知らねーよ! というか、お前、女の子の癖してセドリックみたいな話し方すんじゃないぞ!」

「うるせー!これが地なんだよ!」

 俺とメアリーが、怒鳴りあって喋ってると、Sクラスの生徒達も、事の重大性に気付いたのか臨戦態勢を取り始めてる。

「オイ! リチャード、その禍々しい魔力を引っ込めろ!」

 メアリーは、リチャード王子に話し掛ける。

「先生。それより、何で、僕に殺意を向けるんですか?」

 リチャード王子は、禍々しいドス黒い魔力を、そのまま溢れ出しながら、メアリーに問い掛ける。

「それは、お前が悪魔と契約したからだ!」

「先生は、僕が強くなる事に、焼き餅焼いてるんですね。
 僕が強くなっちゃうと、メアリー先生が、ブリテン王国の王位継承権第1位じゃなくなっちゃいますもんね!」

「リチャード、お前、何言ってんだ?」

「違うんですか?だって、そうでしょう!
 貴方達姉妹が、いきなり現れて、僕の大事なモノを全部奪っていったんでしょうが!
 そして、また、僕から全てを奪おうとしてるんでしょ!」

 なんかヤバい。
 リチャード王子の体から、今迄にない禍々しい魔力が渦巻いている。

 というか、リチャード王子の本質的な闇は、元はと言えば、全て、アンとメアリーの姉妹が原因であるのだ。

 始祖でブリテン女王であったアナスタシアの孫であるアンとメアリーさえ現れなければ、未だに、リチャード王子の父親がブリテン王国の王様で、リチャードが、ブリテン王国の第一王位継承者だった筈なのだ。

 それなのに、アンとメアリーが現れて、全てが変わった。

 世界もブリテン王国が中心にして動いてたのに、いつの間にかサセックス王国が、世界の3分の1を治めるサセックス帝国連邦の盟主になり、ブリテン王国の名声は地に落ちてしまっている。

「オイ! リチャード、ちょっと落ち着け!」

 流石にメアリーも、最悪の事態が刻一刻と近付いてきてると察してるのか、リチャードの気を落ち着かせるのに必死になっている。

「そんなに、僕から全てを奪いたいんですか!」

「だから、私は、ブリテン王国の王位なんて狙ってないって!
 狙ってたら、こんな所で、先生なんかしてねーよ!」

「五月蝿い! そんな話、信じられるか!
 僕は知ってるんだ! お前達姉妹が性悪な鬼である事を!」

「まあ、鬼であるのは否定しないけど」

「やっぱりな!醜悪な鬼は、僕が成敗してやる!」

「だけど、鬼は鬼でも、私は、武士道を重んじる正義の鬼なんだよ!」

「そんな訳あるか! この性悪鬼姫が!」

 リチャード王子の足元に、青白い魔法陣が現れる。

「メアリー! 何、リチャード王子を怒らせちゃってるんだよ!」

「だって、仕方がないだろ! 私は、本当の事を言っただけだし!」

「糞! この役立たず!なんて使えないバカ女なんだ!
 栄養全て、その無駄にデカい乳に取られてんじゃねーのか!」

「お前だって、何もできてねーじゃねーか!」

「うるせーやい!」

「糞! こんな時に、頼れるセドリックやシロがいてくれたら……」

「俺はここにいるだろ! テメー舐めてんのか!」

「お前、何言ってんだ?」

 思わず、セドリックと聞いて反応してしまった。

「クソーー!こんな時に、アホなメアリーじゃなくて、シロが居てくれたら」

 俺は、心底、メアリーの役立たずさに辟易し、シロの有能さを噛み締めるのだった。

「シロじゃなくて、悪かったな!」

「本当にそう。シローー! 頼むから出てきてくれよ!
 お前は、俺の無理難題に答えくれる、便利メイドじゃなかったのかよーー!」

 俺は心の底から、自分の今の気持ちを叫ぶ。

 すると、

「あの、ご主人様? 僕を呼びました?」

 シロが、ひょっこっと、Sクラスの入口の扉から現れた。

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