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501. 新たな敵
しおりを挟む「ご主人様! 一体、何なんですか?! この騒ぎ!」
シロが、横に広い階段の上の高台にある、荘厳なサセックス国教会総本山の正門前で、仁王立ちになって、俺を出迎えていてくれていた。
「何でって! 俺は大変だったんだよ!」
「見れば分かりますよ! この有様!
ご主人様は、ご主人様が想像するよりも、愛らしくて魅力的なんです!
このサセックス国教会総本山は、サセックス帝国連邦中から、人々が集まってくる大観光地!
リコリット様みたいな超絶有名人に慣れてない田舎者ばかりなんですよ!
そんな人々が、いきなり、ただの有名人を飛び越えて、いきなり、リコリット様を見たら、そりゃあ、失神もしますよ!」
「流石に、俺を見ただけでは失神しないだろ!」
俺は、反論する。
「僕、サセックス国教会から連絡を受けて、さっき来たばかりですけど、その間だけでも、ご主人様、何百人の人と目を合わせ、失神させてましたよね!」
「俺は、近付いて来た奴らを、睨みつけてただけだ!」
「それがいけないんですよ!
ご主人様のような超絶美少女に見つめられたら、誰しも失神しますよ!」
「それで……」
俺は、今更ながら、自分の魔性の幼女ぶりを理解する。
「そうですよ! その結果が、これでしょ!」
シロは、俺の通ってきた道を見渡し、俺に見るように言ってくる。
「やっぱり、これって、俺のせい?」
「間違いなく、ご主人様のせいです!」
シロは、ちょっと怒っている。
多分、報告を受けて、急いで、ここに戻ってきたのであろう。
「じゃなくて、シロ! 大変なんだよ!」
俺は、誤魔化そうと話を戻す。
というか、脱線し過ぎていた。
「今のこの状況より、大変な事とかあるんですか?
というか、サセックス帝国連邦の入学式を、ブッチして来るとか、何考えてるんですか!
ピーター君が、サセックス帝国学校の設立の為に頑張って来た事、ご主人様も知ってるでしょ!」
「それは知ってるけど、それより大変なんだよ!
というか、何で、サセックス帝国学校の校門前で待っててくれなかったんだよ!
3週目の時は、ちゃんと居てくれただろ!」
「ん? もしかして、ご主人様、死に戻りしてるんですか?」
シロの顔付きが変わる。
「してるよ! そして、今回。4週目のシロは、鈍感だよな!」
「鈍感って、睨むと人が失神すると気付かないご主人様より、鈍感な人なんていませんよ!」
「3週目の時は、俺が死に戻りしてると気付いて、お前は、サセックス帝国学校の校門前で、待っててくれたんだよ!
俺、その時、どんなに嬉しかったか!」
俺は、ちょっと涙目で訴える。
そう、あの時の俺は、少し感動したし、シロとの強い絆を実感したものだ。
「そうですか……」
なんかよく分からいが、シロは言葉を引っ込めた。
もしかしたら、思う所があったのかもしれない。
まあ、俺の下僕の癖して、俺が戻って来る事に気付けなかった鈍感なシロが、全て悪いんだけど。
そんでもって、そのままシロは瞑想に入り、俺の今までの記憶をチェックする。
「なるほど。シャトレーゼさんと、クラリスとウサウサとメアリーさんは、白で間違いないですね。
そして、ご主人様が殺されたのは、全て、メフィスト・フェレスに鑑定された後です!」
「何だって!」
シロが、簡単に、犯人を言い当てた。
俺には、全く分からなかったのに。
「メフィストが、犯人だと、まだ決まった訳ではありませんよ!
ただ、僕は、メフィストが、ご主人様を鑑定した後に、ご主人様が殺されたという事実を言ってるだけですから!」
俺はシロに言われて記憶を辿ってみる。
1周目の時は、無料の大食堂で、メフィストに俺本来のステータスを鑑定された後に殺された。
2週目は、生徒代表の挨拶の時に、メフィストに鑑定されて、俺の本来のステータスを覗き見された夜に殺された。
3週目は、職員室でメフィストに鑑定された直ぐ後に殺された。
「やっぱり、メフィストが犯人で、間違い無さそうじゃないかよ!」
俺は、シロに反論する。
「ご主人様が死ぬ時は、眠ってる時か、眠くなって気を失ってから死んでますよね?」
「ん? それって、もしかして……黒死病の魔笛が関係してるのか?」
勘のいい俺は、直ぐに、黒死病の魔笛の存在に気付く。
「関係してる確率は高いですね。サセックス帝国学校の生徒達は、みな優秀ですから、黒死病の魔笛ぐらいでしか、精神攻撃は効かないと思います!」
「という事は、犯人は黒死病?」
「さあ、どうでしょう? 黒死病に、ご主人様を殺すメリットは無いと思います。
メフィストは、この世界に悪魔王ルシファーを召喚したいと思ってそうですけど、黒死病は、ルシファーとか何とも思っなさそうですし……」
確かに、黒死病は、何を考えてるか分からない。
異界の悪魔の中でも、完全に別枠。
悪魔の格とか、階級とかも、グリモワールとかに出てこないので、全く分からないし。
「じゃあ、犯人は誰だよ!」
「分かりません。しかし、メフィストと黒死病、それから、デスサイズを持ってる魔女マーリンが、黒である確率はとても高いです!」
「じゃあ、奴らを捕まえろよ!」
「それはできません。彼らはサセックス帝国学校の治外法権の中にいて、部外者である僕には、どうする事もできません。
それに、彼らには、従属の首輪を付けてるので、本来、ご主人様に危害を加える事は出来ない筈なんですよ……」
「でも、実際、奴らは、俺を殺してるだろ!」
「ですね。ですが、僕が作った従属の首輪を無視して、ご主人様に危害を加える事は本当に不可能なんです!」
「じゃあ! どうやって、奴らは俺を殺したんだよ!」
俺は、逆ギレして、シロを怒鳴りつける。
「僕は、他に黒幕が居ると考えてます」
シロの口から、恐ろしい言葉が飛び出した。
「メフィストや黒死病より、更に大物が裏に居るのかよ!」
「その可能性が大ですね! その黒幕が、メフィスト達が付けてる従属の首輪をリジェクトしたと思われます!」
「そんな奴に、どうやって対抗すればいいんだよ!」
相手は、メフィストや黒死病を従える事が出来るほどの大物。
しかも、シロが製作した神級魔道具である従属の首輪をリジェクト出来るような……。
そんなヤツに、ステータスが低いリコリットの体では、絶対に太刀打ちできない。
「取り敢えず、ご主人様のステータスを、始祖βバージョンの本気の【超隠蔽】スキルで、完全ガードします。
これで、誰にも、ご主人様の本来のステータスは、誰にも気付かれずに、ご主人様の正体が、セドリック・A・サセックスだとは、絶対に気付かれ無くなる筈です!」
「それって、根本解決にはならないだろ!」
「ご主人様が、本来の姿である始祖βになって、僕も参戦すれば、敵を倒す事は可能でしょう。
しかし、前にも言ったように、ご主人様が始祖βになってしまうと、ご主人様は、そのうち、アラクネという種族の不倶戴天の敵である神の使徒になってしまうんです!
僕の敵になるなんて……それだけは、絶対に避けなくてはなりません!
そして、サセックス帝国学校は、部外者の学校への干渉は基本禁止!
僕が干渉出来るのは、女子貴族寮の中までが限界なんです!」
「じゃあ、俺を殺した殺人犯を、そのまま野放しにしろとか言うのかよ!」
「今は、それしか方法は無いです。相手が尻尾を出したら、学園からおびき出し、学園の外で、僕が責任を持って抹殺しますから!」
シロは、悲壮感を漂わせて宣言する。
「相手は、メフィストや黒死病を従える程の大物だぞ!」
「僕も、本気を出せば、ブリトニー姉様や、南の大陸の、本物の化物達に手伝ってもらうツテもありますから」
まさかの他力本願。
シロ的には、その黒幕を、絶対に抹殺しないといけない敵だと、本能的に感じているのだろう。
「確かに、『漆黒の森』の女王ガブリエルやアンさん。それからガブリエルの忠実な下僕である、1000匹を越えるGデーモン族が手伝ってくれれば、何とかなりそうだな」
「そうです! 兎に角、ご主人様は学園で黒幕を探って下さい!
絶対に、無茶はしないで下さいよ!」
シロは、俺に釘を刺す。
「分かった」
俺は、絶対に、黒幕を見つけてやると、強く決心する。
こうして、サセックス帝国学校での、俺のやるべき事が定まったのだった。
ーーー
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