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442. セイコ惚れられる
しおりを挟む「あの……ゲクランさん……そろそろ、止めろ、じゃなくて、おやめになって」
ゲクランは、情熱的に、俺の手の甲を吸ってくる。
「ゲクラン!」
シロに注意されて、やっとこさ手の甲を吸うのを止めてくれた。
『ウゲッ……』
俺は、心の中で辟易する。
手の甲が、ゲクランの唾でベトベトになってしまった。
というか、バッチリとキスマークが付けられている。
「セイコ殿、この戦争が終わったら、迎えに参ります!」
「え……ええ……」
迎えに来るって、何を言ってるのだろう。
俺も、一緒に、戦場で戦うのに?
「ご主人様、ゲクランに惚れられちゃいましたね!」
ゲクランが居なくなると、シロが嬉しそうに話し掛けてきた。
「エッ! 俺、ゲクランに惚れらてるの!」
青天の霹靂。寝耳に水。予想だにしない言葉に、俺はビックリする。
「そりゃあ、そうですよ! ご主人様のような超絶美人さんに、手を握られて好きですと告白されたら、誰だってイチコロです!」
「俺、ゲクランの事、好きとか言ってないぞ!」
「言いましたよ! ゲクランの手を両手で握り、至近距離で見つめて、好きだって!」
「えぇぇぇ! 俺は、どちらかというと、好みだと言っただけだろ!
ゲクランは、有能な部下だから好きであって、異性として好きな訳ないだろ!」
「異性じゃなくて、同性として好きなんですね!」
シロが、ニヤニヤしながら聞いてくる。
「確かに俺は、本来は男だな……。てっ! 違うだろ!
ゲクランの事は、部下として好きなんだよ!」
「ご主人様は、両刀だったんですね!」
「違うから! 俺は、女しか嫌いだし! 俺は、男に犯される事にトラウマがあるんだよ!」
そう、俺は、過去に黒髭海賊団の奴らに、犯された事が有るのだ。
それ以来、自分以外の男のチ〇コを見るだけで吐き気がするのだ。
「でも、どうするんですか?ゲクラン、本当にご主人様の事、好きになっちゃったみたいですよ!
この戦争が終わったら、迎え来るって言ってましたし!
それって、この戦争が終わったら、結婚しようという事ですよね?」
シロが、恐ろしい事を言ってきた。
しかし、問題無い。
「ん? それだったら大丈夫だろ?
完全にフラグになってるから、ゲクラン、確実にこの戦争で死んじゃうし!」
そう、戦争の前に、「戦争の後に結婚しよう!」という言葉は、フラグの中のフラグ、キングオブフラグなのである。
「僕のお気に入りのゲクランを、勝手に殺さないで下さい!」
なんか、シロが血相を変えて怒っている。
「奴が、勝手にフラグを立てたんだろ? 俺、知らないし!
ゲクランのチ〇コ、咥えたくないし!」
「ゲクランのオチンチンは、決して、ご主人様に咥えさせませんけど、ゲクランは、決して殺させません!」
「そうなの?」
「そうです! ゲクランは、僕のお気に入り英雄ですから、今回の戦争は、僕が責任を持って、ゲクランを守り抜きます!」
「英雄を守るって、もう、その時点、ゲクランは英雄じゃないだろ!」
「五月蝿いです! ゲクランは、ご主人様と違って生身の人間なんですよ!
ハッキリ言って、脆いんです!」
「じゃあ、俺は、今回、1人で行動するのかよ?」
「ですね!」
「1人なんかヤダよーー!俺は 1人っきりじゃ、怖くて外食できない人間なんだぞ!」
「怖いって、ご主人様、不死身じゃないですか!」
「確かに……」
「でも、敵に捕まったちゃったら、俺、犯されるんだろ?」
「大丈夫です! その為に、オリハルコンで貞操帯製作したんですから!」
「その為かよ!」
「何度も言ってます!」
シロは、冷たく言い放つ。
「ビキニアーマーって、お腹がガラ空きなんだぞ!」
「ご主人様、お腹刺されても死なないでしょ!」
「このビキニアーマーって、斬られる事、前提で作られてるの?」
「ご主人様、斬られても治るでしょ!」
「斬られたら、痛いんだよ!」
「その辺は、我慢して下さい!」
シロは、顔色1つ変える事なく言い切った。
シロ的には、俺が犯されなければ、傷を負っても平気らしい。
「言いかた悪いですよ! ご主人様、ブリトニー姉様に体切り刻まれても、ヘッチャラじゃないですか!
普通の人間は、発狂するんです!
ご主人様って、その辺、頭ぶっ飛んでますから! 僕は、全く心配してません!」
「心配しろよ!」
俺は、血も涙もない冷たいシロに、強めに突っ込んだ。
「異教徒のレッサー吸血鬼くらい、平気ですよ!」
「それは、俺が、始祖だったらだろ?
俺も、異教徒のレッサー吸血鬼と同じく、レッサーバンパイアなんだよ!」
「大太刀、渡したじゃないですか!」
「渡したって、これ、どう考えても重いだろ!」
「敵に当たれば、斬れますから!」
「重すぎて、振り回せないんだよ!」
「ご主人様って、そんなに筋力無かったですか?」
「女に変化して、筋力も落ちてんだよ!
というか、今回の俺は、パーフェクト・レッサーバンパイアじゃないんだぞ!
ただのレッサーバンパイア!
滅茶苦茶弱いんだよ!」
「だけど、死にませんよね!」
シロはニコニコしながら、言い放つ。
こんな感じで、シロとの話し合いは、決着が着く事なく、平行線で終わったのだった。
ーーー
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