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419. 契約
しおりを挟むとか、トイレの外で騒いでると、掃除が終わったアマイモンが、男子トイレから現れた。
「これはこれは、セドリック君!
今日は、お友達を連れてやって来たんですね!
お父さんは、とても嬉しいですよ!」
アマイモンは、相変わらずの80年イタリア風のド派手なファション。
紫色のダブルのスーツに、真っ赤なシャツ。
有り得ない柄と色使いの、目がチカチカするネクタイを付けていた。
「そんな格好で、トイレ掃除するのかよ!」
メアリーが、余りの衝撃に、思わず突っ込んでいる。
「ちゃんと、汚れないように、エプロン付けてるから大丈夫ですよ!」
「いや、そういう訳じゃなくて!」
メアリーは、完全に南の大陸に来てから、突っ込み役とかしている。
「で、セドリック君! 今日は、何しに来たんだい?」
アマイモンが、聞いてくる。
「ああ。お前、メフィスト・フェレスと、ハーメルンの笛吹き男というか、黒死病とかいう異界の悪魔と知り合いか?」
俺は、面倒臭いので聞きたい事だけ、ちゃちゃっと聞く。
「メフィスト・フェレスは、一応、顔見知りですけど、ハーメルンの笛吹き男とは、面識無いですね!
で、その2人がどうしたんですか?!」
アマイモンの圧が凄い。
多分、普段避けられてる俺に頼られて、興奮しているのだろう。
「第35階層に現れたんだよ!」
「それは大変ですね! メフィストは、私より格下ですけど、
黒死病、ハーメルンの笛吹き男は、堕天使系の高位悪魔じゃない、自然発生系の規格外の悪魔で、人の魂もたくさん食らってますから、物凄く強いと思いますよ!」
アマイモンが、黒死病について、端折って教えてくれた。
「アマイモンでも、どうにもならない相手なのかよ!」
「本気を出せば、何とかなるかもしれませんけど、セドリック君、もしや、僕に頼ろうとしてますか?」
「その、もしやだよ!俺達には、異界の悪魔の討伐なんて、手に余る難題なんだよ!
メフィストと知り合いだったら、何とか手を引くようにお願いしてくれよ!」
俺は、強気でお願いする。
シロと違って、日頃、全く頼ってないので、たまになら俺のお願いも聞き入れてくれるだろう。
「それは、無理ですね! 地球でない、異世界に来ている地球出身の悪魔同士は、不干渉の掟があるんですよ!
実際、南の大陸でも、姫様達は、ベルゼブブの一派と戦争してますけど、私達、姫様に味方してる異界の悪魔のグループは、直接、戦闘には参加してませんので!」
まさかの答え。
「お父さん! 僕のお願いでも、きいてくれないの?」
シロが、悲しそうに、アマイモンの顔を見る。
「掟ですから、どうしようもないんですよ。それに、メフィストは、ベルゼブブの配下ですから、私の頼みは聞いてくれないと思います……」
「だったら、ブリトニー達に助っ人頼むしかないな」
俺は、頭を切り替える。
別に、アマイモンに頼らなくてもいいのだ。
アマイモンレベルの奴が助けてくれるなら、それでいい。
ただ、俺は平和裏に解決したかっただけ。
「それも駄目ですね! 南の大陸の人間は、第35階層の争いに干渉させない契約になってますから!」
「えっ? どういう事だ?」
「アムルーダンジョンと、第35階層の異世界が繋がったのは、イレギュラーです。
最初は全く気付いて無かったんですが、いつの間にか、アナスタシアさんに利用されてたんですね!
そんでもって、昔、アムルーダンジョンの入口をたまたま発見した『犬の肉球』と赤龍アリエッタと、大賢者モッコリーナが、第35階層に到達してしまって、アナスタシアさんを助けてしまったんですよ!」
「そのような話があった事は、知ってるぞ!
その時のように、南の大陸の人間を使っても問題ないだろ!」
俺は、アマイモンに強く抗議する。
「そんなの大ありですよ! その当時の南の大陸の最強の一角が、一挙4人もレベルが劣る異世界に登場しちゃったんですよ!
第35階層に現れた大魔王なんて、瞬殺ですよ!
そして、あろう事か、南の大陸の問題やら、第35階層の問題が終わった後、『犬の肉球』のリーダーで勇者の男と、赤龍アリエッタが、アムルーダンジョンに住み着いちゃったんですよ!」
「そ……そうなんだ……」
よく分からない話の展開と、アマイモンの圧の強さに、思わず怯んでしまう。
「僕、あの二人を追い出すの大変だったんですよ!
強過ぎるし、実力行使が通用しないんだから!」
アマイモンは、当時を思い出したのか、涙目になっている。
「で、どうなったんだ?」
「結局、何とか出ていってもらって、アナスタシアさんとも、今後、南の大陸の住人を使わせない契約したんですよ!
勿論、勝手にアムルーダンジョンに、冒険者とかが迷い込まないように、入口を隠してね!」
アマイモンは、ニヤリと笑い、ウインクする。
「なので、アムルーダンジョンの入口は、アマイモンしか絶対に開けない、モフウフ王宮の便所掃除道具置き場に有ると……」
やっと、アムルーダンジョンの入口が、便所掃除道具置き場かの謎が分かった。
俺は、てっきり、モフウフ王宮の便所掃除係である、アマイモンの職場から近いからだと思ってたのだ。
「モフウフ王宮なら、色んな強者の魔力がゴチャゴチャしてるから、絶対にアムルーダンジョンの入口が発見されないですからね!」
「そしたら、俺達が、第35階層を助けるのも問題なんじゃないのか?」
俺は、疑問に思ったので、アマイモンに質問する。
「それは問題無いですよ! アナスタシアさんと、南の大陸の住人を使わない代わりに、アムルーダンジョンで生まれた子達は、自由に使っていいという契約を交わしてますからね!」
「何だそれ!」
「アナスタシアさん的には、手に余る第35階層の魔王が現れた時、アムルーダンジョンで生まれた子達を助っ人に使えて、僕的には、アムルーダンジョンで生まれた子達を、アナスタシアさんの所で、修行させて貰えるんですから、完全にウィンウィンの契約なんですよ!」
よく分からないが、再び、アマイモンにウインクされた。
悪魔って種族は、どんだけ契約好きなんだ。
悪の化身の悪魔の癖に、約束守ってんじゃねーよ!
とか、ウインクするキショい悪魔になど、一々言わないけど。
「成程……アナスタシアさんは、お父さんと協力関係にあったと……それなら、僕も本気を出さないといけないです!」
シロが、まさかの言葉を口にする。
「お前、俺が何度も死んでるのに、本気出してなかったのかよ!」
「アナスタシアさんが持って来た案件ですから、ヤル気が全く出なかったんですよ!」
「そんな理由!」
「でも、お父さんと、アナスタシアさんが協力関係と知ったからには、話は別です!
お父さんの娘として、お父さんを嘘つきにする訳にはいきませんからね!」
ファザコンのシロは、そう言うと、4つ目の神眼を、パッ!と見開いたのだった。
ーーー
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