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408. もぬけの殻
しおりを挟む「オイ! セドリック! 敵なんか、全く居ねーじゃねーかよ!」
何故かヤル気満々になってたメアリーが、愚痴ってくる。
今日の仕事のできで、魔道スマホを見る時間が増えると、勝手に思ってるのかもしれない。
「昨日は、たくさん居たんだよ!」
「本当に、どうしたんでしょうね?」
シロも、頭を捻る。
「もしかして、スタンピードが起きたというダンジョンで、何かあったのかもな?」
「お祖母様が、ダンジョンの入口で、出てくる魔物を全て倒してくれてるんだよ!」
メアリーは、アナスタシアに全幅の信頼を置いている。
メアリーにとって、アナスタシアは、尊敬するお祖母様であり、世界を救った勇者でヒーローなのだ。
「それでも、ダンジョンの周りの敵が全く居なくなるなんておかしいだろ?」
「ですね! 神眼で確認しても、ダンジョン付近に、魔物も、アナスタシアさん達も居ませんよ!」
「な……なんだと!」
俺は、びっくり仰天驚いてみせる。
何でも、必要以上に反応してしまうのは、脳ミソ無かったスケルトン時代の癖だから、気にしないでね!
「お祖母様達は、私達が到着するのに痺れを切らして、そのままダンジョン攻略してるんだよ!」
「だといいですけど……」
シロは、含みを持たせて押し黙るのだった。
そして、俺達は、急ぎ、スタンピードが発生してる筈のダンジョンに向かった。
「やっぱり、誰も居ませんね……」
「激しく戦った後があるぞ!」
ダンジョンの入口辺りには、戦闘によって倒れた木々や、巨大魔法を使った後、それから斬撃で地面が抉れたりしている所がある。
「アナスタシアさん達、ここで戦闘してますね」
「ああ。激しい戦闘な……」
アナスタシアやケンジレベルの達人になると、魔物も全て瞬殺してしまうので、そうそう戦闘痕など残らないのである。
「アナスタシアさん達が本気を出してるという事は、敵は相当な実力ですよ!」
「だな……」
「お……お祖母様が殺られる筈ないだろ!」
「お前が、魔道スマホに熱中なんかするから、アナスタシアは死んだんだよ」
「か……勝手に、お祖母様を殺すな!」
メアリーは、必死でダンジョンの周りを探し始める。
ダンジョンの周りに、人の気配などないというのに。
「これは、アナスタシア達、全滅したのか……」
俺は、メアリーが離れたのを見計らって、シロに話し掛ける。
「どうでしょう。確実に言える事は、ダンジョンの外には居ないという事だけですね。神眼でいくら探索しても、発見できませんから……」
「だというと、可能性が有るのは、ダンジョンの中だけか……」
「そのダンジョンの中も、怪しいですね。全く魔物が出てきてませんから!」
「もしかしたら、メアリーが言うように、アナスタシア達が、ダンジョンの攻略を始めてるんじゃないのか?」
「それは無いと思います。アナスタシアさん達だけで、ダンジョンを攻略出来るなら、わざわざ僕達を呼びませんよ!
まぁ、不測の事態が起こって、ダンジョンに突入したという事は有るかもしれませんけど……」
「だな……」
「セドリックー!お祖母様、何処にも居ないよぉ~!」
暫くすると、メアリーが目を真っ赤に腫らして戻ってきた。
相当、俺達が居ない所で、泣いていたのだろう。
「そりぁあ、居ないだろ! アナスタシア達の気配、全くしないし!」
「そんな事は、分かってたんだけど……もしかしたらって事が、有るだろ!」
「だったら、お前は、アナスタシア達の死体でも探してたのかよ!」
「そんな酷い事、言うなよ!」
メアリーの瞳から、ポロリと涙がこぼれる。
「お前が、魔道スマホに熱中して、1日無駄にしたのが原因だろうが!」
「それは……」
メアリーは、言葉に詰まる。
これで、暫くは、魔道スマホ見たいと言わないだろう。
「ご主人様、メアリーさんを虐めてないで、とっとと、ダンジョンを捜索しますよ!
外に居ないのは、確実なんですから、ダンジョンの中を探すしか有りませんし!」
「だな! 今日は遅いし、ここで野営するか!」
「何で、今の流れで野営する事になるんだよ!」
メアリーは、俺の胸ぐらを掴み突っかかってくる。
「だって、日が落ちてきてるし……」
「お前、お祖母様やケンジが心配じゃないのかよ!」
「心配だけど、肝心な時に、誰かさんのように、爆睡しちゃうと困るし!」
「ウッ……」
メアリーは、グーの音も出ないくらい、物凄く落ち込んでしまう。
「ご主人様。遊んでないで行きますよ!
エリクサー飲んでおけば、何日だって徹夜できるんですから!」
「お前、貴重なエリクサーを、眠気覚ましの栄養ドリンクのように使うなよ!」
「ブリトニー姉様にたくさん貰ってるから、大丈夫ですよ!」
「何で、ブリトニーは、事ある毎に、シロにエリクサーを渡すんだよ!」
俺は、とても気になってた事を質問する。
「それは、僕の事が大好きだからじゃありませんか?
ブリトニー姉様も、姫様に、たくさんエリクサー貰えると言ってましたよ!」
「愛情表現に、エリクサー渡すの、俺は間違ってると思う!」
「そうですかね……死んで欲しくない人に、エリクサー渡すのは普通の事だと思いますけど」
「だけど、お前、不老不死だろ!」
「不老不死ですけど、ご主人様と違って、頭をつぶされたら死んじゃいます!
ご主人様みたいに、ウ〇コになっても死なない、特殊な不老不死じゃないんですから!」
「俺だって、デスサイズで魂を狩られたら、死んじゃうんだよ!」
「デスサイズなんて、死神が使う神器を、そうそう誰も持ってないでしょ!」
「黒髭は、持ってただろ!」
「アレは、魔女マーリンの元々の武器でしょ!」
「魔女マーリンって、死神なの?」
「さあ? だけど、普通ではないですね!
オリ姫の攻撃受けても死にませんし!」
「だな……」
この時の俺とシロは、盛大なフラグを立ててしまった事に、全く気付いていなかった。
ーーー
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