上 下
398 / 568

398. 犬の肉球

しおりを挟む
 
「それじゃあ、行くわよ!」

 ニューヨークに降り立った俺達は、アナスタシアに引連れられて、スタンピードが起こっているというダンジョンに向かう。

「アナスタシアさん! スタンピードが起こってるというダンジョンまで、どれくらいかかるんですか?」

 シロが代表して、アナスタシアに質問する。

「歩きで1週間という所ね!」

「遠っ!」

 俺は、思わず突っ込みをいれる。
 まあ、よく考えたら、アメリカって広かった。

「一応、どの辺か把握しておきたいので、場所を教えて下さい!」

 シロは3つの神眼を開いて、魔道スマホで、アメリカ大陸の地図を開いてみせる。

「何?それ?何でシロちゃんが、この大陸の精巧な地図持ってるのよ!」

 アナスタシアが、滅茶苦茶驚いている。
 まあ、地図を持ってた訳じゃなくて、スマホで検索しただけなのだが。

 因みにアナスタシアが、シロ様から、シロちゃんに名前の呼び方を変えたのは、俺がアナスタシアの兄ちゃんじゃなくて、弟だと皆にバレたから。

「企業秘密です!」

 シロは、勿体ぶって答える。魔道スマホを見せてる時点で、秘密でも何でないんだけど。

「それって、南の大陸とかに売ってる魔道スマホよね!」

「僕のオリジナルですけど、まあ、大体、南の大陸のものと仕組みは一緒ですよ!」

「今度、南の大陸に行ったら買ってみようかしら……」

 アナスタシアは、真剣に悩んでいる。
 まあ、魔道スマホを持ってても、シロの神眼と併用しないと、地球のネットに繋がらないんだけど。

 でも、アナスタシアがあまり好きではない、シロは、その事を教えないのであった。
 どんだけ、性悪に育ってしまったんだ?
 もしかして、俺のせいなのか?
 まあ、シロ生来の気質という事にしておこう。
 だって、人間食う魔物だし!

「ご主人様、いつも言ってますけど、ご主人様の考えてる事、全て筒抜けなんですからね!」

 シロは、ほっぺを膨らましてプンプンだ。

「ほら! アナスタシアに聞きたかったんじゃないのか?
 スタンピードが起こってる、ダンジョンの場所!」

 俺は面倒臭いので、無理矢理、話を戻してやる。

「アッ!? そうでした! で、何処です?アナスタシアさん!」

「多分、ここだと思うわ!」

 アナスタシアが指し示した場所は、ワシントンD.C.
 アメリカ合衆国の首都であった。

「ワシントンだったら、もっと違う行き方があったんじゃないのか?」

「ですね! 船でギリギリまで行けますよ!」

 シロが、地図を見ながら指摘する。

「今、ワシントン周辺の海域は、凶悪な海の魔獣が大量発生していて近付けないの」

「スタンピードが、影響してるんですか?」

「そうよ」

「それにしても、よく、ワシントンでスタンピードが発生したって気付いたな?」

 俺は、少し気になってた事を質問する。

 というのも、まだ、ワシントン周辺にしかスタンピードの影響は出ていないのだ。
 ヨーロッパに普通に暮らしてたら、本来、気付くのは不可能なのである。

「北アメリカ大陸に潜伏してる協力者が居るのよ!
 その人達に、魔族の動向を探ってもらってるの!」

「成程!」

 俺は、大きく頷く。

「ご主人様! 成程! じゃないですよ!
 何も分かってないじゃないですか!
 その、何でも簡単に納得する癖、そろそろ治した方がいいですよ!」

「そうは言っても、脳ミソ無かったスケルトン時代の影響は、中々抜けないんだよ!
 何せ、脳ミソ使わないで、瞬発力だけで言葉を発してたからな!
 何も考えないで答えるのって、案外気持ちいいものだしな!」

「何ですか?それ?アホですか?
 まあ、スケルトン時代は、グズグズしてる性格が隠されてて良かったかもしれないですけどね!」

 シロの高度なディスり褒めがさく裂した。

「協力者は、南アメリカ大陸に住む亜人達よ!」

 アナスタシアが、空気を読んで答えてくれた。

「成程! 北アメリカ大陸と南アメリカ大陸は陸続きだから、必然的にスタンピードが起こると、真っ先に、溢れた魔物達が南アメリカ大陸に大挙して訪れると!」

「そういう事ね。 まあ、今回は、150年前の前回より、早く魔王が発生しそうなダンジョンを見つけられて良かったのだけど。
 前回は、魔王が誕生してしまって大変だったんだから!
 たまたま、南の大陸から、『犬の肉球』が、アムルーダンジョンに迷い込んできてくれたお陰で助かったけど!」

「やっぱり、『犬の肉球』の勇者は、アムルーダンジョンに来てたんですね!」

 シロの目が光り輝く。
 真っ赤な副眼も3つ開いてるので、凄く怖い。
 歴史裏話な好きなシロにとって、アナスタシアの話は眉唾物なのだ。

「ええそうよ! 前回は初動が遅れてボロボロだったけど、『犬の肉球』が、登場してからは一瞬だったわね!
 なにせ、当時の『犬の肉球』は、あの時代、あの惑星で、最強の一角と言われてた6人の内の2人が所属してた最強ギルドだったから!
 しかも、プラス、最強の一角だった赤龍アリエッタさんと、大賢者モッコリーナさんも、セットになってやって来たし!」

「フムフム。『犬の肉球』の最強の一角は、勇者さんと、アンさんのお父さんのドワーフ王ドラクエルですね!」

「そうよ」

「何で、『犬の肉球』に、最強の一角の、赤龍アリエッタと大賢者モッコリーナがくっついてたんですか?」

「確か、アリエッタさんの方は、『犬の肉球』のマスコット、エリスちゃんのお友達とか、言ってたな。
 それから、大賢者モッコリーナさんは、アリエッタさんの古くからの友達で、何故か、たまたま付いて来ていたみたい!」

「そんな都合の良い事も有るんですね!
 なんか、仕組まれた事のように思えますが、多分、気のせいでしょう!」

 シロは敢えて、突っ込まない。
 世の中、深く掘り下げ無い方が良い事もあると、頭の良いシロは分かっているのである。

「まあ、この世界としては、ラッキーだったとしか言えないわね!
 もう、あの時は、私の力だけでは対処出来ない所まで行ってたし、
 本当に、スタンピードが発生したダンジョンに、聖剣エクスカリバーもちゃっかりゲットした『犬の肉球』と、プラスアルファの2人が、ひょっこり現れた時は、ビックリしたもの!」

 アナスタシアが、感慨深げに話す。

「まあ、ガブリエル レベルの最強の一角が4人もいっぺんに現れたら、ビックリするだろうよ!
 俺なんて、最強の一角より劣る、サイコにゃん娘ブリトニーたった1人に玩具にされてるし……」

 ーーー

 ここまで読んで下さりありがとうございます。
 面白かったら、お気に入りにいれてね!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

異世界転生したらよくわからない騎士の家に生まれたので、とりあえず死なないように気をつけていたら無双してしまった件。

星の国のマジシャン
ファンタジー
 引きこもりニート、40歳の俺が、皇帝に騎士として支える分家の貴族に転生。  そして魔法剣術学校の剣術科に通うことなるが、そこには波瀾万丈な物語が生まれる程の過酷な「必須科目」の数々が。  本家VS分家の「決闘」や、卒業と命を懸け必死で戦い抜く「魔物サバイバル」、さらには40年の弱男人生で味わったことのない甘酸っぱい青春群像劇やモテ期も…。  この世界を動かす、最大の敵にご注目ください!

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ

如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白? 「え~…大丈夫?」 …大丈夫じゃないです というかあなた誰? 「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」 …合…コン 私の死因…神様の合コン… …かない 「てことで…好きな所に転生していいよ!!」 好きな所…転生 じゃ異世界で 「異世界ってそんな子供みたいな…」 子供だし 小2 「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」 よろです 魔法使えるところがいいな 「更に注文!?」 …神様のせいで死んだのに… 「あぁ!!分かりました!!」 やたね 「君…結構策士だな」 そう? 作戦とかは楽しいけど… 「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」 …あそこ? 「…うん。君ならやれるよ。頑張って」 …んな他人事みたいな… 「あ。爵位は結構高めだからね」 しゃくい…? 「じゃ!!」 え? ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

売れない薬はただのゴミ ~伯爵令嬢がつぶれかけのお店を再生します~

薄味メロン
ファンタジー
周囲は、みんな敵。 欠陥品と呼ばれた令嬢が、つぶれかけのお店を立て直す。

「お前のような役立たずは不要だ」と追放された三男の前世は世界最強の賢者でした~今世ではダラダラ生きたいのでスローライフを送ります~

平山和人
ファンタジー
主人公のアベルは転生者だ。一度目の人生は剣聖、二度目は賢者として活躍していた。 三度目の人生はのんびり過ごしたいため、アベルは今までの人生で得たスキルを封印し、貴族として生きることにした。 そして、15歳の誕生日でスキル鑑定によって何のスキルも持ってないためアベルは追放されることになった。 アベルは追放された土地でスローライフを楽しもうとするが、そこは凶悪な魔物が跋扈する魔境であった。 襲い掛かってくる魔物を討伐したことでアベルの実力が明らかになると、領民たちはアベルを救世主と崇め、貴族たちはアベルを取り戻そうと追いかけてくる。 果たしてアベルは夢であるスローライフを送ることが出来るのだろうか。

転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです

青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく 公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった 足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で…… エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた 修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく…… 4/20ようやく誤字チェックが完了しました もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m いったん終了します 思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑) 平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと 気が向いたら書きますね

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

処理中です...