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394. 遺伝

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 シロが、ブヒブヒ言ってるのを宥め、ブリテンカラー(イングランド国旗カラー)にされてしまった、メアリーアン海賊団の元母船に乗ると、そこには、何と、つい最近まで戦っていたカール大帝が、土下座をして待っていた。

「も……申し訳ございませぬ! 猊下!」

 全く、意味が分からない。

「何で、お前が俺に謝るんだ?」

「それは、貴方様が、始祖様のお兄様であらせられるからです!」

「そんな事、最初から分かってた事じゃないのか?
 神聖ローマ帝国も、サセックス公国の事、こそこそスパイを送り込んで調べてただろ?」

「そ……それは……」

 カール大帝は、額からボタボタ滝のような汗を流す。
 それほど、俺というか、始祖は絶対なのかもしれない。

「そもそも、そのド派手な衣装で謝るって、どうなのよ?
 おたく、本当に、俺に謝る気ある訳?」

 そう、カール大帝は、有名なトランプのkingの衣装。金色と黒と赤の衣装に王冠まで被っているのだ。

 トランプのカードだと、金色の部分が黄色だから目がチカチカしないけど、実際は、キンキラキンで眩しいのである。

「それを言われると……」

「ご主人様、カール大帝は、トランプのキングはキングでも、一番下っ端のハートのキングだから、あんまり衣装持ってないんじゃないですか?」

 衣装に厳しい、シロが指摘する。
 シロ的に、いつも同じ衣装のカール大帝が、信じられないのかもしれない。

「そりゃあ、そうか! 唯一、口髭がないカマキングだからな!
 戦闘の時でも、謁見の間で着るような煌びやかな衣装が着たいんだろうよ!」

 俺は、ここぞとばかりに、カール大帝を貶してやる。
 コイツが、いつの間にか消えたせいで、俺は全く目立てずに、不完全燃焼になってしまったのだ。

「セド君。その辺で、カール君を虐めるのは止めてあげて」

 カール大帝で遊んでいたら、ラインハルトとケンジを従えたアナスタシアが、船室から現れた。

「ぷッ! カール君って! カールのオジサンかよ!」

「ご主人様! それ、 全く、突っ込みになってませんよ!」

 俺のよく分からないツッコミに、シロがツッコミを被せてくる。

「カールのオジサンが何だか分からないけど、多分、日本のネタなのね」

 アナスタシアは、何だか分かったふうを装う。

「ご主人様が、訳の分からない事言うから、アナスタシアさんまで訳の分からない事、言ってるじゃないですか!
 今はもう、カールは、関西でしか売ってないんですからね!
 関東の若い読者は、何の事話してるのか、きっと、分かってませんよ!」

「俺のせい?」

「ご主人様のせいです!」

 シロに、強めに怒られた。

「始祖様、庇って頂き、誠にありがとうございました!」

 カール大帝が、アナスタシアに土下座する。

「ん? 始祖様? アナスタシア師匠は、お祖母様じゃないぞ?」

 会った事もない、お祖母ちゃん大好きっ娘を公言してるメアリーが、カール大帝の言葉に反応する。

「何を、仰ってるので御座いますか!
 メアリーお嬢様、私をからかってるので御座いますか?
 私が、始祖様を間違える筈は御座いません!」

 何故だか、カール大帝が憤る。

「えっ? でも、師匠は師匠だし、そもそもお祖母様の顔と全然違うし?」

「始祖様! 何を遊んでらっしゃるんですか!
 実のお孫様まで、謀るとは、少々おいたが過ぎますよ!」

 何か、カール大帝が激怒している。
 腰が低いのか、怒りん坊なのんか、全く分からない。
 もしかしたら、怒りん坊なのが素なのかもしれない。

「ほんと、カール君は真面目だなー!
 そんなだから、バチカンなんかに利用されるのよ!」

 アナスタシアは、そう言うと、本来の姿、始祖で勇者アルトリア・ペンドラゴンに姿を変えた。

「えっ? 何? どう言う事? 師匠がお祖母様に変身した?」

「まだ、分かんないのかよ! 俺なんか、最初から、アナスタシアが始祖だと分かってたし!」

 俺は、これみよがしにメアリーに、最初から知ってたと自慢する。

「何言ってるんですか! ご主人様がアナスタシアさんを始祖だと知ったの3日前ですよね!
 それも、僕が説明して!」

 シロが、言わなくても良い事を指摘してくる。

「アホか! 言うなよ!」

 俺は、シロに文句を言う。

「お祖母様?」

 メアリーは、完全に、俺とシロの漫才プレイを無視して、始祖に変身したアナスタシアを、頭の先から爪先まで凝視している。

「ええ。そうよ。私の可愛いメアリー!」

「うえぇ~ん! お祖母様ぁ~!」

 メアリーは、子供のように泣きじゃくり、アナスタシア?アルトリア?の乳か出そうなほど、豊満な胸に飛び込んだ。

 しかし、実際には、オーガの血を色濃く引き継ぎ、2メートル近い身長のメアリーの爆乳に、アルトリアが顔を埋める事になっていた。

「大きくなって!」

 アルトリアは、メアリーのパイ乙に顔を埋もらせながら、必死に手を伸ばし、メアリーの頭を優しく撫ぜる。

「遺伝だな」

「遺伝ですね!」

「そりゃあ、遺伝だろ!」

「セド兄の意見が正しい!」

「私は、メアリーお嬢様の豊満な胸を見て、直ぐに始祖様の血族と分かりました!」

 この、祖母と孫の感動のシーンに居合わせた全てのメンバーが、アルトリアの「大きくなって!」という言葉を、違う意味で捉えてしまったのは、どうしようも無い事であった。

 ーーー

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