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369. シロの野望
しおりを挟むノルマンディー公国と、ブルターニュ公国のインフラ事業が終わり、束の間の平和が訪れる。
というか、このまま他国を侵略していけば、大陸全土に高速道路網が出来てしまう勢いだ。
「ご主人様が、世界征服を成し遂げたら、世界全土に高速道路網を作った、偉大な皇帝と言われるようになるんじゃないですか!」
シロが、なんか壮大な話をしてくる。
「このまま世界征服したら、国民の洗脳が解けた後、国民に人肉食わせた歴史上もっとも残忍な皇帝として、歴史に名が残るかもと思ってたけど、大陸全土に高速道路網を作った偉大な皇帝と言われるようになるのか!」
俺は、自分の事ながら、少し嬉しくなる。
残忍な皇帝と言われるより、やっぱり良い皇帝と言われたいのだ。
『悪名は無名に勝る』という言葉があるが、俺の中では悪名が残るくらいなら、名前なんか残したくないというのが、本当の所だったりする。
だって、俺は、皆にチヤホヤされるであろう、勇者である事を隠したかった男なのだ。
まあ、結局は、【超隠蔽】スキルのせいで、骨になるまで忘れちゃうという、オチが付いてくるんだけど。
「言ったでしょ! 僕は、ご主人様を、歴史に名を残す偉大な英雄にしてみせるって!」
「これも、シロの作戦通りなのか?」
「勿論!」
シロは、無い胸を張って、エッヘンとする。
「なので、頑張って、世界征服しましょうね!」
最近、シロの野望が、ますます大きくなっている。
もしも、このまま、この第35階層が地球並に発展し、テレビゲームとかが発明されたら、『信長の野望』ならぬ、『シロの野望』という、歴史シュミレーションゲームが発売されるかもしれない。
「日没処の島国から、世界征服を成し遂げるんです!
信長が、日出処の島国から、世界を目指したように!」
「もし、織田信長が、明智光秀に本能寺の変で、殺されていなかったら、信長は絶対に世界征服を目指してた筈だもんな!」
「明智光秀大嫌いです!」
多分、明智光秀がシロの前に現れたら、エドワード黒大使と同様、間違いなく抹殺されるだろう。
「絶対、殺します! というか、今からビチ糞トーマス君の部隊のイエローを、東の端にあるであろう、日本?に送り込もうかと、本気に考えてます!」
シロならやりかねない。
エドワード黒大使が、黒色だからという理由で暗殺した幼女なのだ。
明智光秀の場合は、黒色とか関係無く、本当に嫌いのようだし。
多分、この世界で、絶対に殺したい人物No.1なのは間違いないであろう。
シロは、相当、織田信長が好きだ。
織田信長が本能寺で殺されなければ、絶対やってたであろう、世界征服を、極西のブリテン島を、極東の日本に見立て、同じ軌跡で辿ろうとしているのだ。
「僕が好きな歴史上の人物は、織田信長、高杉晋作、劉邦、黒田官兵衛ですね!
高杉晋作と劉邦が好きなのは、ご主人様が大好きな司馬遼太郎先生の影響を多分に受けてます!」
シロが、聞いても居ないのに、自分が好きな歴史上の人物を宣言する。
まあ、シロが好きな歴史人物を聞いて、大体分かった。
シロは、勝手に、俺を百敗一勝将軍 劉邦に重ね、織田信長がやったであろう島国からの世界征服を成し遂げさせたいのだ。
そして、自分は、三英雄に天下を取らした黒田官兵衛を目指している。
じゃあ、高杉晋作は?
「高杉晋作は、やる時はやる男なんです!
長州藩の絶対的ピンチの時に、颯爽と現れて全てを解決してしまうんです!
ご主人様も、ピンチの時まで本気をださないんでしょ!」
シロの期待が、俺に重くのしかかる。
俺は、シロやアナスタシアが思ってるような凄い男なのか?
過大評価過ぎる。
俺は、勇者の力は手に入れたいのに、勇者の責務をやりたくなかった、ただの狡い男なのに。
「信長も劉邦も晋作も、みんな最初は、穀潰しの うつけ者だったんです!
ご主人様は、アホっぽいですけど、やる時はやる男の人なんです!
実際、骨になる前の冒険者時代、ケンジに追い付きたくて、必死に無茶な修行をしてたのを、僕は知ってます!
ただ、ご主人様は、恐れてるだけなんです!
また、骨になる前の冒険者時代の時のように、天才ケンジの駄目な兄貴分、優秀なギルド長の駄目な弟と思われるのが怖くて……」
迂闊にも、ちょっと感情を揺さぶらされた。
こういう話は、無しだった筈なのに。
「俺は、そんな大層な男じゃないさ。ミジンコのような男なんだよ。
ウジウジするのは、元からの性格だしな!
俺は、女の子とS〇Xしまくれれば、それでいいんだよ!
そのつもりで、俺、異世界転生したんだし!」
「何で、自分を卑下して、貶めるんですか!」
今日のシロは、引かない。
多分、俺が話を落とし切れていないのだろう。
自分自身は、だいぶ落としてるんだけど。
「何でですか!」
シロが、感情を爆発させて聞いてくる。
くぅー。いいオチが思い浮かばない。
シリアス展開を、見事に笑いに変える最高のオチが!
考え過ぎて、頭が破裂しそうじゃねえかよ!
とか、考えてると、
「何、考えてるんですか!
アホらしくなりました。もう、この話は止めにします!」
俺は今日初めて、シロに頭の中を読まれた事を、良かったと思えたのだった。
ーーー
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