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364. 英雄ゲクラン
しおりを挟むシロ率いる半月騎士団は、城壁を駆け落ち、疾風の如く馬を駆り、そのまま英雄ゲクランの元に、合流した。
「相手は、バンパイア公爵です!ここは、僕達に任せて下さい!」
シロは、緊張気味に、英雄ゲクランに話し掛ける。
どうやら、玄人好みのシロは、英雄ゲクランのファンであったようだ。
「バンパイア公爵?」
「ハイ! 人間じゃ有りません!」
「成程、そう言う事か」
この世界では、バンパイアが人に混じってヨーロッパを支配してると、一般市民に知られていないのだ。
しかしながら、英雄ゲクランは、今までの経験により、何か違和感を感じていたのだろう。
ゲクランは、シロの命令を聞き入れ、部隊の進軍を停止させた。
『流石、英雄ゲクラン。僕の意見を簡単に受け入れてくれた。
普通の将なら、手柄欲しさに、自分の意見など聞き入れないであろうに』
と、シロは、心の中で思う。
そして、ますます英雄ゲクランの評価が爆上がりするのだった。
シロ率いる半月騎士団は、そのまま敵フランク王国軍の総大将の元に突撃する。
「多少、斬り刻んでも構わぬ! 相手はバンパイア公爵だ! 簡単には死なぬ!
兎に角、生け捕りにしろ!」
シロは、軍師のように格好良く、威厳に満ちた物言いで、半月騎士団に命令する。
英雄ゲクランに、格好良い所を見られたいのだ。
「「オオーー!」」
半月騎士団の妹系少女達は、雄叫びを上げる。
バンパイア公爵であろうとも、サディステイックサイコニャン娘、ブリトニーの元で鍛えられた半月騎士団は、全く怯まない。
しかし、
「ぐわっはっはっはっはっ! 愚かな愚民共め!
たかが人間風情が、このバンパイア公爵に敵うと思っておるのか!
とくと見よ! 偉大なる始祖様から頂いた至高なる魔法の力を!
第6階位闇属性魔法ザラキ!」
イキナリの、超反則系範囲即死魔法ザラキ。
集団をランダム即死させる、ジェノサイド魔法。
多分、誰も到達していない第10階位くらいになれば、ランダムじゃなく、そこに居る全ての生物を即死させる力を持つと思われる。
「不味い!僕の後ろに隠れて!」
シロが、半月騎士団に指示を出す!
そして、シロは両手を広げて、第6階位闇属性魔法ザラキを、自分一人で受止めた!
「「シロ様ぁーー!」」
第6階位闇属性魔法ザラキのヤバさを知ってる、半月騎士団が絶叫する!
「大丈夫だよ! ザラキの対処法は、既に確立してるから!」
シロのくぐもった声が聞こえてくる。
そう、シロは全身を対魔法防御用の糸を自分自身に何重にも巻いて、蚕のようになっていたのだ。
「な……何だとーー!」
フランク王国軍の総大将は、有り得ないザラキの対処に、ビックリ仰天している。
「人じゃないのは、アンタだけではないんだよ!」
そう、シロは、魔物を越える神獣アラクネ。
かつて、神話時代、神との勝負にも勝った事もある伝説の魔物なのだ。
まあ、戦闘力で勝ったというより、タペストリー作りで、勝っただけなのだけど。
シロが無傷と知って、半月騎士団は、そのまま突撃する。
「ザラキなんて、反則級の魔法使ってんじゃないよ!」
バキッ!
「こちとら、サS〇X騎士団のお姉様達と違って不死じゃないんだから!」
スパッ!
「でも、シロ様って、不老不死じゃなかったっけ?」
バキッ!
「だよね……」
スパッ!
「不死者には、ザラキ効かない筈なのに……」
バキッ!
「もしかして、自分が不死者だと、忘れていたとか?」
ズダン!
「シロ様に限って、そんな筈ないでしょ!」
スパパパパーーン!
「だよね! だってシロ様だもん!
シロ様が、絶対、忘れる筈ないよ!
多分、敵をビックリさせる為の演出だよ!」
ズダダダダダダダーーン!
「「だよね!」」
シロは、半月騎士団が、敵総大将を斬り刻んでるのを見ながらも、恥ずかしさのあまり顔を真っ赤に紅潮させていた。
そう、シロは、自分がブリトニーによって不老不死にされた事を、完全に失念していたのだ。
初めてザラキを見た時、ザラキのヤバさに驚いて、対策方法を考えだしたのだが、その時はまだ、シロは不老不死じゃなかったのである。
『シロ! 平常心だよ! 軍師の僕が、テンパってたら、部下達の士気に関わるんだよ!』
シロは、心の中で呪言のように、何度も同じ言葉を呟やき、何とか平常心を保つのだった。
ーーー
「シロ様! 敵総大将の首を確保しました!」
暫く惚けていると、シロの元に、半月騎士団No.1の少女が、敵総大将の首を持ってやって来た。
「少しぐらい斬り刻んでもいいって言ったけど、ここまで……」
シロは、敵総大将の、あまりに変わり果てた姿に、気を動転させる。
「何度かシロ様に確認したんですが、ずっと考え事してたようだったので、相手が喋れなくなるまで、バラバラにしてみました」
確かに、敵総大将は、手足を斬られて達磨になっており、喋れなくする為か、口にナイフが突き刺さっていた。
「まあ、ギリギリ生きてるようなので、良しとします!
さあ、勝ち名乗りを上げて下さい!」
シロは気持ち悪かったのか、そのまま敵総大将の生首を半月騎士団No.1に返す。
生首を受け取った半月騎士団No.1は、仲間の方を振り向いて、ゆっくり深呼吸する。
そして、
「サセックス公国、半月騎士団サセ子が、敵総大将を討ち取ったぞーー!」
と、絶叫気味に勝ち名乗りを上げた。
すると、それと同時に、
「「ウオオォォォォォォーー!」」
「「サセックス公国の勝利だぁぁーー!」」
ついさっきまで、ノルマンディー公国の兵士だったサセックス兵士が、なんの躊躇もなく、サセックス公国軍の勝利を祝ったのであった。
(今回の戦争のまとめ)
サセックス公国軍(元ノルマンディー軍)死者6200人。
半月騎士団、死者0人。
ビチ糞トーマス忍者部隊、死者0人。
フランク王国軍死者1万8000人。
半月騎士団No.1の名前は、サセ子。
サセックス公国 国王セドリック、激しい突っ込みにより喉負傷。
まあ、こんな感じで、自前の兵士は全く失わず、軍師シロの計略によって、見事、フランク王国との戦争を勝利したのだった。
ーーー
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もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m
いったん終了します
思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑)
平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと
気が向いたら書きますね
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