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345. 開戦
しおりを挟む「暇だな……」
俺は、サセックス公国の独立に成功し、気が抜けてしまっている。
「暇じゃないです! やる事だらけです!
いつまた、十字軍が攻めてくるかもしれませんし、内政や軍備も整えなければなりません!」
シロは、何やら毎日、忙しそうに動き回っている。
「そんなに直ぐに、攻めてこないだろ?」
「十字軍が攻めてこなくても、十字軍との戦争で疲弊したブリテン王国を狙って、フランク王国が攻めてくるかもしれませんよ!」
「フランク王国は無いだろ?攻めて来るとしたら、ノルマンディー公国だな!」
「ご主人様、結構、この世界の事も調べてますね!」
「俺を誰だと思ってる! 歴史大好きセドリック様だぞ!
この世界は、地球と歴史が被ってる所がたくさんあるから、すんなり覚えれるんだよ!」
「ご主人様! 遂に異世界無双が発動するんですか!」
「まあな! この世界は、俺が知ってる事が沢山有る!
これは、遂に、異世界無双しちゃうな!」
俺は鼻高々に、胸を張り反り返る。
「そんな訳で、もう既に、ビチ糞トーマス君率いるサセックス忍者部隊に情報収集して貰ってます!」
「早っ!」
「当たり前です! ノルマンディー公国は、海を挟んで、サセックス公国の対岸にあるんですよ!
情報収集してない方が、おかしいです!」
「だな」
確かに、ノルマンディー公国は侮れない。
前世の元の世界では、アーサー王の王国は、とっくに滅んで居る筈なのに未だに現存している。
それはひとえに、ブリテン王国の中枢を握ってた、元円卓の騎士(バンパイア)の力が強かったからに他ならない。
本来なら、ブリテン王国は、ノルマンディー王朝が起こっても良い時代なのである。
しかしながら、ノルマンディー公国は、未だに、フランク王国の臣下をしており、パッ!としていない。
絶対に、ノルマンディー公国は、ブリテン王国を征服する機会を狙っている筈なのである。
「で、ノルマンディー公国の今の状況は、どうなってるんだ?」
「数日前まで、十字軍との戦争で疲弊したブリテン王国に攻め込む気満々だったらしいです。
しかしながら、昨日の会議で、ブリテン王国に攻め込むのをやめて、サセックス公国と戦争をする事に決めたようですね!」
「えっ!? 昨日決まった情報が、もう、入ってきてるのかよ!」
「ええ。今は、これが有りますからね!」
シロは、お手製の魔道式スマホを取り出す。
「確かに」
この時代、オーバーテクノロジーの魔道式スマホ。
衛星も飛んでないのに、繋がっちゃう魔法の魔道具。
「ノルマンディー公国は、ブリテン王国より、サセックス公国の方が弱っちいと思ってるみたいですね」
「チッ! 舐めやがって!」
「相手の作戦としては、サセックス公国をササッと滅ぼして、ブリテン島内に陣地を築き、ブリテン王国と本格的にやり合うつもりらしいです!」
「イスパニア海軍や十字軍を壊滅させた、俺達の恐ろしさが、全く伝わってなさそうだな……」
「僕達、殆ど、単独行動でしたし、殆どの敵を瞬殺してますから、やられた敵でさえ、どうやって倒されたか分かってないと思います……」
「糞ッ! すっごく、舐められてると思うと癪に障る!
俺達、本当は、結構強いのに!」
「今回は、嫌でもサセックス公国の実力が分かりますよ!」
シロは、ニヤリと笑う。
「こうなったら、俺達の実力を分からせる為に、日本人お得意奇襲攻撃トラトラトラだ!」
「いえ。敢えて、ノルマンディー公国に攻め込ませましょう!
ここ数日、たくさんノルマンディー公国のスパイが、侵入してきてますけど、全て民衆に捕まえられて食べられてますし!」
「嘘だろ! サセックス公国の国民、人肉食べてるのかよ!」
「忘れちゃいました?サセックス公国の国民は、他国の人間は豚にしか見えないんですよ?」
「けど、だからって……」
「相手国からしたら、人間を食べるヤバい国だと思われますね!」
シロさん、ヤバすぎる。
やる事が、もう、人間じゃない。
「忘れてないですか?僕は魔物ですから」
まあ、確かに、魔物からみれば人間は餌だし、普通か。
人間からみたら、豚は、家畜で食料だし。
よく分からなくなってしまったが、俺は、シロに言い含められたのだった。
ーー
数日後、ノルマンディー公国が、サセックス公国に宣戦布告してきた。
相変わらずノルマンディー公国は、サセックス公国にスパイを何人も送り込んで来ていたが、全てサセックスの国民に捕らえられ、夕食のご馳走になっている。
そんな訳で、ノルマンディー公国は、サセックス公国の情報を入手出来ないまま、戦争を仕掛ける羽目になってしまったのである。
ノルマンディー公国が持つ、サセックス公国の情報は、ブリテン王国と十字軍の戦争時まで。
まあ、最近の情報と言えば最近の情報なのだが、今のサセックス公国の戦力は、その時の数千倍だ。
砲撃も魔法も効かない、不落の要塞国家。
不老不死である、100人のサS〇X騎士団。
しかも、シロが製作した精神と時の部屋を使って、既に数十年間も修練してる。
因みに、常人は、精神と時の部屋で修行出来るのは50年が限界のようだ。
それ以上、精神と時の部屋で過ごすと、みんな廃人になってしまうらしい。
「余裕そうだな」
「余裕ですね! なので、今回、僕達は、部下達の戦いを観戦する事にします!」
シロが、まさかの作戦を披露する。
「それは余裕過ぎないか?」
俺は、チョット不安になる。
サS〇X騎士団が、どれ程の実力か分かってないし。
「ノルマンディー公国程度の小国を、余裕で倒せないでどうするんですか!
取り敢えず、今回の総指揮は弟子のセーラに任せてるんで、僕達は大人しく観戦しましょうよ!」
てな感じで、無理矢理歴史に例えると、うつけ者だった織田信長の名が天下に轟くキッカケとなる桶狭間の戦いのような、天下取りへの最初の戦いが幕を開けたのだった。
ーーー
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