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241. ハロハロ

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「アマイモンの奴、南の大陸の地図ぐらい持たせろ!ってんだよ!」

 俺とシロは、宛も無いまま漆黒の森を放浪している。
 途中でダンジョンらしき、整備された公園の公衆便所のような場所を幾つか見つけたが、全てスルーしている。

「お父さんは、僕達に南の大陸を楽しんで欲しいから、敢えて地図は渡さないと言ってましたよ」

「何だそれ? 地図ぐらいどっかの街を見つけたら、直ぐに買えるだろ!
 アマイモン奴、アホなのか?」

「街を見つけて、地図を買うのも冒険の内ですよ!
 あんまり、お父さんの事を悪く言わないで下さい!」

 なんかムカつく。
 シロは、俺が一番じゃなかったのかよ。
 アマイモンの事を、いつまでもムカついてるのは、実はシロの態度も影響してたりするのだ。

「ご主人様、焼き餅妬いているんですね!
 心配しなくてもいいですよ!
 僕も結構悩んで考えたんですが、お父さんより、ご主人様の方が少しだけ愛情が勝りますから!」

 シロが、俺の心を勝手に読んで教えてくれた。
 何か、凄く嬉しい。
 アマイモンの事も、ちょっと許せる気がしてきた。

「ご主人様は、単純ですね!」

「五月蝿いわい! 人の頭の中を勝手に読むな!」

 とかやってたら、何やら城塞都市のような建造物が見えてきた。

「ご主人様! 城塞都市が見えてきましたよ!
 お父さんが言うには、南の大陸はダンジョンが沢山あるので、結構、強力な魔物が突然、ダンジョンの中から溢れ出す事があるらしく、冒険者の国『ムササビ自治国家』以外は、全て城塞都市らしいですよ」

「そうなんだ」

 俺は、そんな豆知識を聞くより、早く街で休憩したいのだ。
 だって、移転魔法陣で飛ばされてから、魔物を倒しつつ、ずっと3時間も歩きっぱなしだったのだ。

「嘘だろ……」

 俺は、城塞都市の正面玄関に着いて、ガックリ来る。

 正面玄関の正門前には、100人以上の人が並んでいたのだ。

「これ、並ばないといけないのかよ……」

「ルールですからね! 豪に入れば郷に従えですよ!」

「人口、凄く多いのな……」

 俺が住んでいたアトレシア大陸は、所詮、アムルーダンジョンの中の世界。
 意外と国も小さかったし、俺が住んでいた
 ハルマン王国なんて、砂丘で有名な鳥取県ぐらいの大きさだったのだ。

「そうですね。そして、普通の人っぽい人達も結構強いですよ!」

 シロは、鑑定眼でチェックしながら、俺に伝えてくる。

 確かに、普通に出てくる魔物でも、アムルーダンジョンの10階層に居る魔物と同レベルの強さであった。
 これは、アトレシア大陸に住む一般人に倒せるレベルの魔物ではない。

 第35階層で、強い奴らをいっぱい見たが、あれは戦闘を生業とする海賊だったからで、流石に、ただの一般人がこれほど強い人揃いという事はないであろう。

「ご主人様、それは南の大陸がダンジョンだらけなのが理由らしいですよ!」

 シロが俺の頭を読み、教えてくれる。
 確かに、ダンジョンの多さは異常だった。
 たった3時間歩いただけで、ダンジョンが10個以上有るって、おかし過ぎるだろ。

 その中に、俺達が住んでたアムルーダンジョンも有ると思うのだが、こんなにダンジョンが多いとなると、探すのは不可能だ。
 だって、南の大陸の住人でさえ、全てのダンジョンを把握してないと思うし。

「これはわざとだな」

「どういう事です?」

「だって、普通にアムルーダンジョンから南の大陸に出れば良いだけなのに、わざわざ移転魔法陣で、他の場所に転移させる理由なんてあったのかよ!」

「成程、ご主人様が『三日月』の無料優待券を使い切ってから、アムルーダンジョンに帰ろうとするのを阻止したんですね!」

「そうだ! アマイモンは、俺達に、何がなんでも南の大陸で冒険させたいんだよ!」

「何ででしょうか?」

「奴がやってるのは、育成ゲーム! 俺達は、所詮、奴の玩具に過ぎないんだよ!」

 悪魔の遊びと言うか、暇潰しなんかに付き合ってられない。
 俺は、自由に生きたいのだ!

「別にいいじゃないですか。お父さんがアムルーダンジョンを作らなかったら、僕達は生まれなかったんですから!」

 完全にシロは割り切っている。

 とか話をしてると、あっという間に、俺達の順番がやって来た。

「お前達、ハロハロは初めてか?」

 侍のような格好をした衛兵が聞いてくる。
 どうやら、このハロハロという城塞都市は、侍が治める国であるらしい。

「ああ」

「武者修行か何かで、ハロハロを訪れたのか?」

「どうして、そう思うんだ?」

「そなたが腰にしてる日本刀レプリカ、結構な業物に見えるのでな」

 そう言えば、道中、結構魔物に襲われたので、シロが作ってくれた日本刀を腰に差したままだった。

「鞘にしまってるのに分かるのか?」

「ああ。鞘の意匠を見れば大体分かる。それに刀から溢れんばかりの魔力が漂って見えるのでな!」

 どうやら、シロ製作した日本刀は、見る人が見れば分かってしまう程の業物だったらしい。
 というか、この衛兵のお兄さん。相当強い。

 完全に内から溢れる闘気を抑えているのに、一瞬だけ、俺達にだけ分かるように闘気を開け放ってみせたのだ。

「見てみるか?」

 俺は、何故かその侍に親しみを感じて、シロが打った刀を見せてやった。

 侍は、丁重に刀を受け取り、鞘から刀をスッ! と抜く。

「こ……これは……」

 どうやら、シロが打った刀は、本場の侍をビビらす程の逸品だったらしい。

「こんな綺麗な波紋は見た事がない。
 稀代の名匠オイドン·トラデアルが打った刀と少し似てるな。
 女性的というか、魔力も相当込められている。
 格付けは、聖級と言った所か」

 なんか勝手に、シロが打った刀の格付けをされてしまった。

「銘は白蜘蛛? 聞いた事ない名前だな?」

 衛兵の侍は首を傾げる。

「その刀は、コイツが打ったんだ!」

 俺は、鼻高々にシロを指差す。
 身内が褒められると、凄く嬉しい。

「何と! こんなに若い娘が! しかもドワーフじゃないじゃないか!」

 衛兵の侍は相当ビビっている。
 というか、ドワーフ以外の種族が刀を打つのが珍しいのか?
 とか言う、衛兵の侍も中々の業物を腰に差してる気がする。

「あんたの刀も相当な業物じゃないのか?」

「これか? これは最近、『漆黒の森』の王都、モフウフのダンジョンで手に入れた日本刀レプリカだ!
 名は無いが、ドワーフ族の至宝ドン·ドラニエルの弟子が打った刀だと思われる。
 鑑定に出したら、A級の評価だったのだ!」

 何か、よく分からないが嬉しそうだ。
 掘り出し物をゲットして、誰かに自慢したかったのだろう。

 それにしてもモフウフのダンジョン?
 こんな業物の刀がゲット出来るのかよ?
 アムルー城塞都市の武器屋で売ったら、多分、300万は越える逸品だ。

「モフウフのダンジョンって凄いんだな」

「ああ、入場料を払ってでも入る価値があるダンジョンだぞ!
 ある程度の強さなら、確実に元は取れる!」

 何か、早く『漆黒の森』の王都モフウフに行きたくなってきた。

 南の大陸への興味は、サキュバス嬢がいるソープランド兼デリヘル『三日月』だけだったのだが、お宝ザクザクのモフウフダンジョンにも興味が湧いたのであった。

 ーーー

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