上 下
228 / 568

227. ゴールデンスカル連合軍VS黒髭海賊団第2回戦最終回

しおりを挟む
 
 メアリーの必殺、鬼神斬りをマトモに受けた黒髭は、その余りに凄まじ過ぎる剣圧で、潰れて死んでしまったようである。

 黒髭がいた筈の場所には、魂を刈るデスサイズと、数秒前には黒髭だったであろう、グロテクスな赤黒い肉片が残っただけであった。

「呆気なかったな……」

「メアリーさんが強過ぎるんですよ」

 俺の感想に、シロが答える。

 メアリーと黒髭の戦いを見ていた鬼ヶ島の民衆は、全員腰を抜かしガクガク震えてる。
 メアリーが黒髭を倒したという感情より、鬼ヶ島を消滅させる勢いであった、メアリーのおバカ過ぎる攻撃を回避できた安堵の気持ちの方が強かったのだろう。

 それ程、メアリーの鬼神斬りは、ヤバかったのだ。
 というか、放ったメアリーも、目を泳がしてダラダラ冷や汗を流してるし。

 本当に、結界を張って俺達を守ってくれた、魔女マーリンとセバスチャン兄弟様々である。

「やっぱり魔女マーリンって、凄いですね」

「そりゃあ、そうだろ。あのヤバ過ぎるメアリーを倒した女だぞ。弱い筈無いだろ!」

「というか、マーリンさん、黒髭が持ってたデスサイズを拾ってますよ?」

 シロに言われて、メアリーの鬼神斬りによって、地面が抉られ、血染みができた黒髭がいた辺りを見ると、ちょうど魔女マーリンが、デスサイズを拾って自分の魔法の鞄にしまっている所だった。

「そうだな……」

 俺は、その、一見、何も変哲のないように見える行動を疑う事なく見ていた。
 デスサイズのような、ほぼ神器とも言えるヤバ過ぎる武器は、魔女マーリンのような強者が保管しておくべき物だと思っていたからだ。

「アッ! 消えた!」

 シロが、突然消えた魔女マーリンに驚く。

「エッ……まさか、瞬間移動魔法を使ったのか?
 ていうか、俺も瞬間移動魔法使いたい!」

「ご主人様! そんな事より、デスサイズ!」

 意味か分からない。
 何で、デスサイズを持って消えるんだ?
 まだ、大将戦が残ってるのに?

「この状況って、魔女マーリンが、デスサイズをパクったようにしか見えないんだけど……」

 まさかの展開に、俺は驚く。
 今の流れでは、誰がどう見ても泥棒にしか見えないのだ。
 何も言わないで、普通消えるか?
 というか、そんなにデスサイズが欲しかったのか?

「確かに、この状況じゃ、デスサイズをパクったって事になりますね……」

 シロも、俺の意見に賛同する。

 別に、持って逃げなくても、魔女マーリンが欲しいと言えば、だれも逆らえないと思うんだけど、だって、魔女マーリンって、この中で一番強いと思うし……。
 まあ、よく分からないが、魔女マーリンは、俺達の前から姿を消した。

 もしかしたら、魔女マーリンは、黒髭が持っていたデスサイズが欲しくて、黒髭を手伝っていたのかもしれない。
 それとも、魔女マーリンは、実は死神で、黒髭にデスサイズを奪われ、それを取り返す為に、渋々従わされていたのかもしれない。

 まあ、全ては、魔女マーリンに直接聞いてみないと解らない話だし、元々、俺的に何もしてないので、デスサイズを貰える立場でも無い。

 そんな訳で、この時の俺は、魔女マーリンが、デスサイズを奪った事を、それほど気に留めていなかったのだ。

 しかし、このデスサイズ持ち逃げ事件が、後に起こる悲劇の伏線になっているとは、誰も気付けない事だった。

 ーーー

「それでは大将戦! ゴールデンスカル海賊団のペット、オリ姫ちゃんVS黒髭海賊団カネコの試合を始め!」

 事実上の決勝戦であった、メアリーVS黒髭の試合が終わった後、一応、大将戦が始まった。

 詳しい解説をしても良いが、めんどくさいので省略する。

 とは、言っても、やっぱり簡単なので解説はしておこう。

 黒髭海賊団のカネコが、10分程頑張ってオリ姫に攻撃を仕掛けていたが全く効かず、逆に剣が折れた所で、オリ姫が体から礫を飛ばし、それが心臓を貫通してカネコは即死した。
 オリ姫は、結構無慈悲なスライムだったようである。

 でもって、この大将戦の結果により、ゴールデンスカル連合軍VS黒髭海賊団の試合は、2対3になり黒髭海賊団の勝利が決定したのだ。
 まあ、ゴールデンスカル連合軍が最初に3連敗した所で、本当は勝負が付いてたんだけど。

 カネコさんは、折角の生き残るキップを手にしてたのに、ミスミス逃がしてしまったという事になる。
 誰もマトモに見てなかったので、死んだフリすれば、普通に負けれたのに……。

 というか、オリ姫を舐めてたカネコさんが悪い。

 オリ姫だって、本当は優しい子だ。
 カネコさんが、あんなに必死になって、何度も斬りつけなければ、優しく倒してくれたであろう。

 しかし、カネコさんは違ったのだ。
 奴はサイコ。
 オリ姫を、これでもかと痛めつけた。
 全く、ノーダメージだったけど。

 それで、優しいオリ姫に火がついた。
 剣が欠けても、オリ姫を斬り続け、剣が折れるまで、ひたすら斬り続けたのだ。

 もしかしたら、最弱の筈のスライムに傷一つ付けられない事に、傷ついたのか?

 しかしながら、この第35階層にも、アダマンタイトスライムとか、硬いスライムは居る。

「それにしても、あのスライムベス硬かったよな」

 オーガの子供が話してるのが聞こえてきた。

 どうやら、カネコさんは、オリハルコンスライムのオリ姫の事を、ドラ〇エに出てくるスライムベスと勘違いしてたようだ。

 スライムベスに負ける、黒髭海賊団の幹部。
 多分、とっても恥ずかしかったのだろう。

 それで、あそこまで必死に、オリ姫を斬りつけたのか……。

 少しだけ、カネコさんが可哀想に思えてきた、セドリックであった。

 ーーー

 ここまで読ん下さりありがとうございます。
 面白かったら、お気に入りにいれてね!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

異世界転生したらよくわからない騎士の家に生まれたので、とりあえず死なないように気をつけていたら無双してしまった件。

星の国のマジシャン
ファンタジー
 引きこもりニート、40歳の俺が、皇帝に騎士として支える分家の貴族に転生。  そして魔法剣術学校の剣術科に通うことなるが、そこには波瀾万丈な物語が生まれる程の過酷な「必須科目」の数々が。  本家VS分家の「決闘」や、卒業と命を懸け必死で戦い抜く「魔物サバイバル」、さらには40年の弱男人生で味わったことのない甘酸っぱい青春群像劇やモテ期も…。  この世界を動かす、最大の敵にご注目ください!

売れない薬はただのゴミ ~伯爵令嬢がつぶれかけのお店を再生します~

薄味メロン
ファンタジー
周囲は、みんな敵。 欠陥品と呼ばれた令嬢が、つぶれかけのお店を立て直す。

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ

如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白? 「え~…大丈夫?」 …大丈夫じゃないです というかあなた誰? 「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」 …合…コン 私の死因…神様の合コン… …かない 「てことで…好きな所に転生していいよ!!」 好きな所…転生 じゃ異世界で 「異世界ってそんな子供みたいな…」 子供だし 小2 「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」 よろです 魔法使えるところがいいな 「更に注文!?」 …神様のせいで死んだのに… 「あぁ!!分かりました!!」 やたね 「君…結構策士だな」 そう? 作戦とかは楽しいけど… 「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」 …あそこ? 「…うん。君ならやれるよ。頑張って」 …んな他人事みたいな… 「あ。爵位は結構高めだからね」 しゃくい…? 「じゃ!!」 え? ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

冷宮の人形姫

りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。 幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。 ※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。 ※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので) そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。

「お前のような役立たずは不要だ」と追放された三男の前世は世界最強の賢者でした~今世ではダラダラ生きたいのでスローライフを送ります~

平山和人
ファンタジー
主人公のアベルは転生者だ。一度目の人生は剣聖、二度目は賢者として活躍していた。 三度目の人生はのんびり過ごしたいため、アベルは今までの人生で得たスキルを封印し、貴族として生きることにした。 そして、15歳の誕生日でスキル鑑定によって何のスキルも持ってないためアベルは追放されることになった。 アベルは追放された土地でスローライフを楽しもうとするが、そこは凶悪な魔物が跋扈する魔境であった。 襲い掛かってくる魔物を討伐したことでアベルの実力が明らかになると、領民たちはアベルを救世主と崇め、貴族たちはアベルを取り戻そうと追いかけてくる。 果たしてアベルは夢であるスローライフを送ることが出来るのだろうか。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

処理中です...