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161. 突入

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 誰にも気付かれず、聖剣エクスカリバーを手に入れた俺達は、パブロフ公爵家の邸宅に向かっている。

 どうしても、ドレークが、ハルマン国王にお目通りする前に、カタをつけないとならないのだ。

 ドレークがハルマン王にお目通りすれば、必ず、ドレークは魅了スキルを使って、ハルマン王国の貴族になってしまうだろう。
 そんな事になってしまったら、俺達は、面と向かってドレークに手出しが出来なくなってしまう。

 自国の貴族を、冒険者風情が殺したら大事になっちゃうしね。
 まあ、アムルーダンジョンに逃げ込めば何とかなると思うけど。

 しかし、自由にアムルー城塞都市でショッピング出来なくなるのは、厄介だ。
 ダンジョンで手に入らない物もあるし、たまには、外に飲みにとか行きたいしね。

 兎に角、今夜中に、ドレークを倒さなければならないという訳である。

「オイ! セドリック、バンパイア共は殺すとして、パブロフ公爵家の連中は、どうするんだ?」

 ラインハルトが、俺に質問してきた。

「どうするって、ハルマン王国の貴族を殺したらダメだろ。
 ドレークに、魅了で操られてるだけだしな」

「でも、襲ってきたらどうするんだよ?」

「気絶させろ」

「そんな手加減できねーよ!」

「だったら、剣を使うな」

「剣を使うなって、どうやって戦えばいいんだよ!」

「ひたすら、耐えればいいだろ!」

「無理に決まってるだろ! 俺はバンパイアかパブロフ公爵家の人間か、見ただけでは分からないんだぞ!
 もし、公爵家の人間だと思って耐えていたら、実はバンパイアだった時、どうするんだ?
 俺、バンパイアに殺されちまうよ!」

 脳筋のラインハルトが、最もな事を言う。
 俺やアナスタシアは鑑定持ちだから、バンパイアがどうかは鑑定で調べればすぐ分かる。
 メアリーは、元々、バンパイアといつも戦っていたので簡単に見分けがつくだろう。

 シロも魔物なので、人間と魔物の違いなど、すぐ分かる。
 ケンジは、天才なので分かってしまうだろう。
 そうなると、凡人のラインハルトだけは、誰が人間で、誰がバンパイアか、全く分からないのだ。

「仕方がない……オリ姫。フルメイルの鎧と大盾にactチェンジして、ラインハルトに装着しろ!」

「キュイ!」

 オリ姫は、ラインハルトに包み込むように飛びつき、フルメイルの鎧と大盾にactチェンジした。

「有り難い!」

 ラインハルトは、とても嬉しそうだ。
 聖剣エクスカリバーと同じ、オリハルコン製の武器や防具は、戦士の憧れ。
 そのオリハルコンの鎧と大盾を装備できてしまうのだ。嬉しくない訳がない。

 まあ、いつもだったら男のラインハルトにオリ姫は絶対貸さないが、今回俺は、聖剣エクスカリバーを手にしている。
 見た目や刀身の輝きは、オリ姫ソードと変わらないが、何やら不思議な魔力を纏って居るのを感じる。
 この魔力が、魔の者を滅するキモなのだろう。

 まあ、オリ姫ソードとの違いは、魔の者を滅せれるかどうかの違いで間違いない。
 斬れ味は、同じオリハルコン製なので全く変わらなかったし。

 とか、考えてると、先頭を走っていたシロが、立ち止まった。

「ご主人様、パブロフ公爵家の門の前に、見張りがいます」

「ああ。見えてる」

 見張りは3人。
 鑑定スキルでチェックすると、2人がバンパイアで、もう1人が人間のようだ。

「盾役のラインハルトを先頭にして、そのまま門を突っ切るぞ!」

「俺が先頭?」

「当たり前だろ! お前は盾役だし!」

「でも、俺は誰がバンパイアか分かんないんだぜ?」

「取り敢えず、盾でぶつかれ。そして起き上がった奴がバンパイアで、そのまま気絶した奴が普通の人間だ!」

「成程。セドリック、お前、アタマが良かったんだな」

「馬鹿者! 俺は元々頭はいいんだよ!
 ちょっと最近、脳ミソを失ってからアホになってただけだ!」

 とても、心外だ。

 みんな、俺がアホだと勘違いしている。

 確かに、人間だった時の性格と、スケルトン時代の性格が混ざってしまってアホっぽくっなってしまったと感じてるが、俺は絶対にアホではないのだ!

「セドリック、お前は、やっぱりアホだよ。
 もし、アホじゃなかったら、人間時代にもっと上手く立ち回れたんじゃないのか?」

「確かに……」

 脳筋のラインハルトの癖に、少しだけ解ったような事を言う。

 しかし、どんだけ、俺の事を見てたんだよ!

 人間だった頃は、ラインハルトがこんなに気遣いが出来て、人情味がある奴とは気付けなかった。

 俺はケンジを避けてたので、『鷹の爪』のメンバーも同じように避けていた。

 ラインハルトという人間が、どんな奴か全く知らなかったし、知ろうともしなかったし、要するに興味が無かった。

 俺が、複雑な表情をしていると、

「まあ、そう言うこった!」

 ラインハルトは、照れくさそうに言いながら、パブロフ公爵家の門に突撃して行った。

 そして、

 ドッカーン!

 ラインハルトの大盾にぶつかった門番が、見事にぶっ飛ばされた。
 思った通り、1人だけ気絶し、2人の門番はユルリと立ち上がる。

「ヨシ! 作戦通りだ! メアリー、ケンジ!」

「「了解!」」

 ラインハルトの盾の後ろで待機していたメリケンコンビが、飛び出し、まだふらついていたバンパイアの首を、スパン!と、撥ねた。

「シロ!」

「了解!」

 シロは、首を探そうとしていたバンパイアの体を、素早く糸で簀巻きにする。

 俺は安全を確認した後、バンパイアの頭を聖剣エクスカリバーでスイカ割りしていく。

「ギャアァァァァーー!」

「クギャァァァァーー!」

 頭を真っ二つにされたバンパイア達は、まるで、屋敷の仲間に知らせるような、大きな叫び声を発しながら、煙になって消えた。

 それと同時に、パブロフ公爵家の邸宅の中が騒がしくなる。

「気付かれたな……」

「そりゃあ、そうだろ!」

 ラインハルトが、即座に突っ込む。

「クックックックッ腕が鳴るぜ!」

 戦闘狂のメアリーは、嬉しそうだ。
 早速、虎柄のセーラー服を、シロに作って貰った紐でタスケ掛けにし、本格的な戦闘準備に入っている。

 アナスタシアも、シロにおねだりして作って貰った、アダマンタイト鋼とミスリルで製作した杖を握りしめている。
 魔法使い用の杖に、アダマンタイト鋼の硬度がいるかは、疑問の所だけど……。

 兎に角、それぞれ準備は出来てるようだ。
 後は、バンパイア共を皆殺しにし、ドレークからミレーネの生死を聞き出すのみ!

 勿論、俺はミレーネが生き延びていると信じて疑わない。

「それじゃあ! 邸宅内に突入するぞ!」

「「オオーー!」」

 俺達は、門番を倒した勢いのまま、吸血鬼の巣窟と化している、パブロフ公爵家の邸宅に突入した。

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