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155. 王都ハルマン

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 兎に角、俺達の方策は決まった。
 変装して、王都の中央公園に向かい、聖剣エクスカリバーを岩から抜き取る事。

 そして、その聖剣エクスカリバーで、俺をここまで苦しめたドレーク親子を殺す事。

 ドレーク親子は、絶対に殺す。
 八つ裂きにする。
 そうしないと、俺の心は収まらない。

 何せ俺は、ドレーク親子のせいで、メアリーに、身内の敵討ちもしない血も涙もない酷い奴だと思われてしまったのだ。

 俺の荒んだ心は、骨になった事がある奴しか分からない。
 誰も、骨をペロペロシャブられた事など無いだろ。

 俺だって、ミレーネの敵討ちがしたかった。
 しかし、人にこき使われる勇者には、絶対になりたくなかったのだ。

 最低勇者の糞野郎だって?

 そんな事言う奴は、毎日、犬にオシッコを引っ掛けられて、ウ〇コを踏んでしまえ!

 そんな不幸も、俺の不幸に比べたら、大した事ではない。

 俺は、生きるのもやっとの最弱スケルトンだったのだ。
 駆け出し冒険者の獲物、ホーンラビットでさえ、オシッコを引っ掛けられなければ倒せない程の、貧弱で貧相な肉の無い体。
 靴も履いてなかったから、ウ〇コを踏むと、直接骨の間にウ〇コが、ムギュっ!て、入ったりする。

 思い出すと、自然と涙が溢れてくる。

「ご主人様の気持ちは、僕が一番分かってます。
 ご主人様の骨の間のウ〇コを取ってあげたのも、ご主人様のオシッコまみれの骨を磨いてあげてたのも僕ですからね!」

 シロが、俺の心を読んで慰めてくれる。
 というか、最後の方は、自分の仕事ぶりのアピールだった気がするが、シロがいなければ、自分でウ〇コを取らないといけなかったのでモーマンタイ。

「シロー! やっぱり、俺の事を分かってくれてるのは、お前だけだよぉ~!」

「そうです。だからご主人様は、僕だけを大切にして下さいね!」

「うん!」

「お前達、一体、何言ってるんだ?
 オシッコとか、ウ〇コとか、チビッ子の会話かよ?」

 メアリーに、俺とシロの心通わす感動の会話をディスられてしまった。

 俺も魔物になってから、ウ〇コやらオシッコやらの、子供っぽい単語をよく使ってしまう事は気になっていた。
 それも、脳ミソがなかったからだと思っていたが、脳ミソが復活した今でも使ってしまうのは、由々しき問題だ。

「俺はもう、ウ〇コという単語は使わない!」

「だったら、何て言うんだよ!」

 メアリーが、喧嘩腰で言葉を返してきた。

「糞」

「糞って……ウ〇コより、汚い言葉使いじゃないのか?」

「そしたら、やっぱり、ウ〇コって言う」

 そんな、取り留めもないおバカな会話をしながら、ブルースが用意してくれた早馬を繋いだ馬車で、まる2日。
 俺達は、遂に、ハルマン王国王都、ハルマンに到着した。

 ーーー

 ハルマン王国は、アトレシア大陸中央にある王国だ。
 勇者だけが持つ事が許される、聖剣エクスカリバーが祀られてる国として知られている。
 因みに、ハルマン王国の初代王も、岩から聖剣を引き抜いた勇者だったらしい。

 そんな聖剣エクスカリバーが、岩から引き抜かれたのは、ハルマン王国の初代王を含めて3度だけ。
 勇者が亡くなったら、岩に戻す事が義務付けられているのだ。
 まあ、簡単に言えば、勇者判定装置としても使っているので、貸し出し制の聖剣なのである。

 そんなハルマン王国王都ハルマンは、城塞都市。
 聖剣エクスカリバーが、岩に刺さってる国なので、魔王が復活すると真っ先に狙われる。

 普段は、聖剣エクスカリバーを見に来る観光客や、勇者判定に訪れる強者で賑わって、平和な観光立国に見えるのだが、その城壁は高く堅牢。
 どんな屈強な魔物も、その圧迫感がある城壁を目の前にすると、思わず畏怖の念を抱いてしまうような、目に見えぬプレッシャーを常時、発し続けているのだ。

「これは、スゲーな……」

 一応、魔物に分類される鬼人族のメアリーが、普通にビビっている。

「前に来た時は、気付きもしませんでしたけど、本当に凄いですね……」

 何度もハルマン王都に訪れてる筈の、アナスタシアまで驚いている。

「オイ、何がスゲーんだよ?
 俺達、依頼で何度もハルマン王都に訪れてるだろ?」

 ラインハルトが、不思議な顔をしてアナスタシアに質問する。

「この城壁、ただの岩で出来た城壁だと思ってたのだけど、全てアダマンタイトで出来てたのよ……」

 どうやらアナスタシアは、賢者になって取得した鑑定スキルで、城壁を調べたようだ。

「アダマンタイトって、俺やケンジの剣の素材に使われてる、ミスリルより硬いという、あのアダマンタイトかよ?」

「ええ。そうよ。それに、そのアダマンタイトの城壁には、魔法攻撃を相殺する古代ルーン文字が刻まれてるわ!」

「あの、オシャレな装飾のような模様が、失われた古代ルーン文字だって!」

 ラインハルトは、口をアングリ開けて驚いてしまっている。

「ん? 何言ってるんだ? 古代ルーン文字?
 あの文字は魔法陣とかで普通に使われてる、のルーン文字だろ?」

 メアリーが、驚愕事実を口走る。

「何だと? 第35階層では普通に、古代ルーン文字が使われてるのか?」

 俺は、逆にメアリーに質問する。

「ああ、普通、魔法使いならルーン文字を使って魔法陣を刻むだろ?」

 確かに、魔法使いは魔法陣をルーン文字で刻む。
 だが、ルーン文字であっても、古代ルーン文字ではないのだ。

 古代ルーン文字は、難解過ぎる為、現在の文字に変換されて使われるようになって数百年。
 今では、古代ルーン文字を使う者は疎か、解読も不可能と言われているのだ。

「もしかして、メアリーさん。古代ルーン文字を読めるのですか?」

 アナスタシアが、メアリーに、恐る恐る質問する。

「ああ。普通に読めるぜ!
 メッチャ難しい魔法陣は、本職の魔法使いじゃないと描けないけど、この城壁に描かれてるような魔法相殺の魔法陣ぐらいなら、余裕で描けるぜ!
 だけど、このやたら長い城壁に魔法陣を刻むのは、絶対にお断りだけどな!」

 第35階層では、ルーン文字の何十倍も威力があると言い伝えられている、古代ルーン文字が、普通に使われているようだった。

 ーーー

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