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141. 謎解き

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 で、ネムラムの話は、こんな感じだ。

 ドレークがまだ、トランシルヴァニアでヴラド・ドラキュラ公爵を名乗っていた頃まで遡る。

 その頃のドレークは、まだ人間だった。
 しかし、異民族との戦いで、籠城戦を強いられた時に、城にいた全ての人間に呪いを掛けられてしまったのだ。

 その呪いは、恐ろしい呪いで、無性に人の血を飲みたくなる呪いであった。
 最初は、呪いを掛けられても、まだ正気を保っていたのだが、籠城戦が長引き食料が尽きてくると、城にいる人間同士で血の飲み合いが始まる。

 しかし、この血の飲み合いは、血を飲む方も飲まれる方も、とても性的に興奮して気持ち良くなってしまうのだ。

 それにより、城の中は乱れに乱れた。
 みんながみんな、城の中を血を求めて彷徨い続け、狂喜乱舞酒池肉林の血の飲みあいが始まった。
 そして、至る所で、血を飲み過ぎて相手を殺してしまう事件が多々起こってしまう。

 そんな中、まだ12歳の双子の娘達の貞操を、城の者達から守る為にドレークは奮闘した。
 奮闘の仕方は、城にいる全ての人間の血を吸い尽くし、殺す事。

 ドレークは、結局、城にいた全ての自分の部下を殺した後、城の外に居た異民族の兵も、全て串刺しにして殺してしまう。
 吸血鬼は、血を飲めば飲むほど強くなる性質があったのだ。

 しかしながら、敵も味方も全員殺したからといって、ハッピーエンドにはならなかった。
 完全な吸血鬼になってしまったドレークと双子の娘達は、太陽の光が浴びれなくなり、トランシルヴァニアの城の奥深くにひっそり暮らす羽目になってしまったのだ。

 そんな日々を、2年ほど過ごしていたある日。

 トランシルヴァニアの城に、冒険者のような出で立ちをした、一人の美しい少女が現れた。

 その少女は、城の薄暗い地下で、ドレークと双子の少女を見つけるやいなや、こう言ったそうだ。

「すまない。来るのが遅れてしまって……」

 しかし、ドレークは、その助けに来た少女の事を、化物になってしまった自分達親子を殺しにきたバチカン関係者と勘違いして、少女に襲い掛かった。

 しかしながら、少女は、ビックリする程強かった。
 バンパイアになって、人間離れした強さになっているドレークを手玉に取り、難無く抑えつけたのだ。

 そして、ドレークを抑えつけた少女が言った。

「また、太陽の日に当たりたいか?」

「当たり前だろ!」

「血の衝動を抑えたいか?」

「抑えたいに決まってる!」

「また、普通の人間のように暮らしたいか?」

「暮らしたい!」

「ならば、私の血を吸え!
  しかし、私の血を吸ってしまえば、悠久の時を過ごす本物の化物になってしまうが、それでも良いのか?」

「再び、太陽の光を浴びれるなら、何にだってなってやる!
 元より、私達親子は、もう化物なのだから!」

 ドレークは、泣き叫びながら答えた。

「後悔するぞ」

「後悔などしない!」

「ならば、私の血を吸え!」

 少女は、そう言うと、左手首を剣で切り、血をドレークと双子に分け与えた。

 こうして、ドレークとネムラム姉妹は、始祖の血族になり、太陽光と血の衝動を克服したバンパイア公爵になったのだ。

 ここまでが、ドレークとラムレム姉妹が、吸血鬼になってしまった悲しくも感動のお話。

 で、始祖の話なのだが、始祖は、元、ブリテン王国の勇者だったらしい。

 名を聞いても頑なに名乗らなかったので、ドレーク親子は、そのブリテン王国の勇者の事を、親愛を込めて始祖様と呼ぶようになったとか。

 で、その始祖様なのだが、極東にあるという伝説の国、日ノ本に行く旅の途中で、たまたまトランシルヴァニアのドレーク親子の噂を聞きつけて、立ち寄っただけだったという話らしい。

 そんな始祖が、トランシルヴァニアを立ち去る前に、ドレーク親子に、こう告げたそうだ。

「この世界が、魔の者に支配されそうになった時、勇者と思われる者が必ず現れる筈だ。
 そしたら、お前達は、その者に、始祖の指輪を探すように導いて欲しい。
 その仕事は、私の血を飲んで不死者となったお前達親子にしか出来ない」

 と、

 そんな話も有りつつ、始祖と別れたドレーク親子は、再び太陽の下で活動できるようになり、最終的に滅んでしまった自らの領地を捨て、ブリテン王国の庇護下に入ったという話だ。

 そして、数百年後、一大発起し、恩人である始祖を探す旅を始め、アフリカ大陸の喜望峰を経て、ユーラシア大陸の南側を航海し、そして始祖が訪れると言っていた日ノ本の国を訪れ、そこで、始祖が太平洋を渡ったという情報を得て、太平洋を渡って、獣人大陸に到着し、始祖の情報を求めながら、獣人大陸も南下しながらグルッと回って、最終的に鬼ヶ島に到着したとの事だ。

 そこで、始祖の子供達であるハーフオーガ。
 即ち、鬼人族を見て、ドレークは我を失った。

 それまでのドレークは、自分達だけが、始祖に愛された特別な一族だと思っていたのだ。

 それなのに、鬼ヶ島の蛮族は、血を分けて貰うだけでは飽き足らず、始祖を犯して、始祖の子供まで無理矢理産ませていたのだ。

 それからというもの、鬼ヶ島の鬼人族とオーガVSバンパイアの、血を血で洗う数百年にも渡る長い戦いが始まったという訳だ。

 で、ドレーク達は、カリブ海に長期滞在する為の資金を稼ぐ為に、ブリテン人で初めて航海世界一周を成し遂げた偉業を引っ提げて、ブリテン王国と敵対しているカスティーリャ王国の商船に限って、海賊行為を行っても良いという免罪符を、ブリテン王国からゲットして今に至るとか。

 勿論、始祖の行方と、始祖の指輪の在り処も、ずっと探しており、始祖の方は、鬼ヶ島を訪れた後の痕跡が、パッタリと無くなっており、ドレーク的には、ずっと鬼ヶ島の近くにある、今まで誰も攻略できていないスライム島が怪しいと見ていたらしい。

 誰も攻略できないスライム島なら、始祖の指輪を隠すのに打って付けだしね!

 それから、始祖は、誰かが始祖を探せば、自然とスライム島に導かれるよう、誘導してた節があった。
 何故なら、始祖が訪れたと思われる場所に行くと、必ずといってよいほど、スライムの銅像が地面に打ち込まれていたのだ。

 これは、暗に、始祖の指輪は、スライム島に有ると言っているようなものだ。

 まあ、話を統合すると、始祖が鬼ヶ島に長期滞在した理由は、鬼ヶ島とスライム島が近かったのが、1番の理由だろう。
 そして、鬼ヶ島からセッセとスライム島に通い、スライム島の真ん中に、始祖の指輪を隠す穴を掘っていたのだ。

 多分、聖剣エクスカリバーで……。

 ここまでの話で、みんな分かっただろう。

 全ての謎が。

 分かんない人は、読み続ければ自然に分かるかも。

 ーーー

 ここまで読んで下さりありがとうございます。
 面白かったら、お気に入りにいれてね。
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