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124. 始祖?

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「鬼人流剣術。必殺、鬼居合斬り!」

 メアリーの必殺技、鬼居合斬りの間合いから外れてる筈なのに、雷を纏った斬撃波が、俺目掛けて迫ってくる。

 ヤバい!

「オリ姫、actチェンジ、オリ姫盾!」

 操舵にいたオリ姫の頭を掴んで、オリ姫盾にactチェンジさせ、メアリーの斬撃波を受け止める。

 ズダ…ビリビリ……ダダ…ビリダダーーン!

 メアリーの斬撃波を、オリ姫盾で真正面から受け止めた筈なのに、強烈な痺れと共に体ごと吹っ飛ばされた。

 オリ姫はノーダメージのようだが、俺は相当酷い事になっている。
 全身真っ黒焦げで、体中が打撲と痺れで痛い。
 後ろを振り返ると、ミスリルコーティングされてる筈の甲板に傷が付いていた。

 オリハルコンのオリ姫では、電撃は通電して防げないのか……。

 それに、このミスリルまで斬り裂く斬撃波は何だ?
 もうしかて、雷魔法の他に風魔法まで付与されてるのか?

 これ、俺以外の奴が受けたら、絶対死ぬ奴だ。

 俺は、オリ姫盾を持ってたから体は斬れなかったけど、ミスリル盾しか持って無かったら真っ二つだろう。
 まあ、何とか斬撃波を盾で受け止められたとしも、ヤバ過ぎる雷撃まで付いてくるのだ。

 だって俺、真っ黒焦げだぜ。

 俺は不老不死だから死なないだけで、普通の奴なら死んでるから。
 この攻撃を受けて死なないのは、ゴム人間のモ〇キーDルフィーぐらいのものだろう。

「嘘だろ? お前、何で俺の攻撃を受けて死んでないんだよ!」

 なんか、メアリーがめっちゃ驚いている。

「カッハッハッハッハッ!
 俺様は、勇者でバンパイア紳士だからな!
 その辺の鬼っコロの攻撃なんて、効かないのだよ!」

 俺は、ここぞとばかりにノーダメージのフリをする。

「嘘つきやがれ! お前の皮膚なんて、炭化してボロボロじゃねえかよ!
 お前、何でそんな状態で立っていられるんだよ!」

 メアリーは、訳わかんないといった感じで、喚き散らしている。

「何せ俺は、不老不死のバンパイアだからな!」

「オイコラ! 舐めてんじゃねえぞ!
 無学な俺でも、バンパイアが日光に弱い事ぐらい知ってるんだよ!
 ま……まさか……お前、大公、公爵クラスのバンパイアか?」

 何か、メアリーが勘違いしてる。
 ウン。これは乗っかっておこう。
 だって、俺がパーフェクト·バンパイアだと説明しても、きっと分かんないだろうし。

「大公? 公爵? ノンノン、俺様は、始祖様であるぞ!」

 俺は、乗っかるついでに、盛っておく。

「嘘だろ? 始祖って本当に居たのか?
 というか、御伽噺に出てくる始祖は、女の筈じゃなかったか?」

 何か、ヤバいぞ。
 まさか、第35階層での始祖は、御伽噺に出てくる程の有名人だったとは。

 どうやって誤魔化そう……。

 今更、
『始祖じゃなくて、パーフェクト·バンパイアだよ!』
 とは、言えないし、
『実は、始祖は女では無く男だったのだよ!』
 と、押し通せば何とかなるか?

 だけど、もし、始祖が生きていたら……。

 第35階層での始祖は、御伽噺に出てくるくらいのメジャーな存在らしいし、絶対に昔、存在してた筈だ。
 それに始祖は、バンパイアと同じく不老不死で、滅多な事では死なないし、太陽光などの弱点もない。

 死んでるかもしれないけど、生きてる可能性が限りなく高いのだ。

 俺と始祖が、兄妹だったという設定じゃ駄目か?
 というか、良く考えたら、始祖なのに二人いたらおかしいよな。

 だったら、双子設定じゃ駄目かな?
 双子なら、始祖が二人いてもギリギリセーフだろ?

 イヤ、やっぱり駄目だ!
 始祖が生きてて、公衆の面前で、
「お前など知らぬ!」
 とか、言われちゃったら終わりだし。

 とか、悩んでいたら、シロが小声で、

「ご主人様。普通に、御伽噺に出てくる始祖とは、違う始祖と名乗ればいいんじゃないんですか?
 実際、違うのですし」

 と、言ってきた。
 確かに、シロの言う通りだ。
 今は始祖では無くても、俺は将来、始祖に進化する予定なのだ。

 実際、始祖になってしまえば、俺は正真正銘の始祖なんだし、ただ胸を張って始祖と名乗れば良いだけなのだ!

 俺は、かなり『始祖』という名前に囚われていたようである。

 始祖だから、一人でないといけないと。

 でも、実際は、俺も始祖になる予定だから、始祖は二人になってしまう。

 まあ、進化の枝に、始祖が無ければ、俺は始祖に進化できないのだけど。

 しかし、俺は、何故か知らないが始祖になれるという確信がある。
 厳密に言うと、始祖ではないけど。

 そう、俺が進化するのは、始祖を超越したパーフェクトな始祖なのだ!

「ムフフフフ……」

 妄想してたら、思わず笑いが込み上げてきた。

「姉者! アイツ、始祖では無いと思うけど相当ヤバいぜ!」

「そうですね……。始祖様なら、鬼人族のルーツになりますから、それなりの対応をしなければなりませんが、ただの爵位持ちのバンパイアなら、不倶戴天の敵になりますからね!」

 どうやら鬼人族も、バンパイアやサキュバスと同じく、始祖をルーツに持つ種族らしい。

 それなら、益々、俺が始祖であると、アピールしなくては!

 俺が始祖だと分かれば、ゴールデンスカル海賊団と同盟を結んでくれそうだし、俺のハーレムにも無条件で入ってくれると思うしね。

 と、俺がムフフと、妄想してると、

「まだ、ご主人様は始祖様では無いのですけどね……」

 と、シロが、俺にだけ聞こえるように、ボソリと、言った。


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