上 下
102 / 568

102. 邁進

しおりを挟む
 
 結局、俺は、火山スライムキングにやられて、消沈した気持ちを引きずったまま、キャンプ地である第32階層に帰ってきた。

「ご主人様、そんなに気を落とさないで下さい!夕食が終わったら、僕が裸でマッサージをして上げますから!」

 シロが、俺を慰めてくれる。
 というか、シロの裸のマッサージは魅力的だが、俺のチ〇コがもたないだろ!

「シロ。お前の気持ちだけは、受け取っておく」

「やっと、ご主人様、喋ってくれましたね!」

 シロは嬉しそうに、俺に抱きついてきた。
 どうやら、俺を喜ばさせる為に、今日はノーブラらしい。
 背中に、シロのコリコリのサクランボを感じる。

「グッ!」

 俺は、思わず勃起し、悶絶する。

「ご主人様! 元気になりましたね!」

 どう見ても、悶絶してるだろ!
 確かに、下半身の暴れん坊将軍は元気になったが、もう既に、元気になり過ぎて破裂寸前なのだ。

「気持ちは分かったから、俺から離れろ!」

 俺は、シロの首根っこを掴み、投げ飛ばす。
 しかし、シロは空中で器用に糸を出し、華麗に着地した。

「ご主人様の愛情表現は、日増しにどんどん激しくなりますね」

 シロは、俺がぞんざいに扱えば、扱う程、俺への愛情が増していくな……。

 とか、頭の中で考えていたら、

「おっ! セドリック! もう進化終わったのか!」

 どうやら、ラインハルト達も、第33階層の探索という名のゴキ退治から戻ってきたようだ。

「まあな」

 俺は、妙になれなれしいラインハルトに、まだ慣れていない。
 本当に、俺とラインハルトは仲が良かったのか?
 ラインハルトの事は、脳ミソが復活して以来、少しづつ思い出してきているのだけど、仲良くしてた記憶など全く無いのだが……。

「お前、本当にビックリしたぜ!
 昨日、ダンジョン探索中に、いきなりぶっ倒れるんだからな!
 姐さんが説明してくれなかったら、本気で死んだと勘違いしてた所だぞ!」

 確かにな……。
 俺も、いつもの感覚で進化してしまっていた。
 最近は、どこで進化してもシロが何とかしてくれているので、気を許し過ぎてたかもしれない。
 これからは、もっと気をつけた方がいいかな……進化中は無防備になるし。

「悪かったな。いつもの感覚で進化してしまっていた」

 俺は、一応、心配してくれたみたいなので、頭を下げる。

「まあ、別にいいけどよ。
 で、セドリック! 進化して、何が変わったんだ?
 見た目は、変わってないようだが?」

 何故だかよく分からないが、ラインハルトは、進化に興味津々であるようだ。
 まあ、殆どの男の子が変身願望があるのと同じか。
 俺も、地球で子供だった頃、バッタ男に変身するアニメに興奮してたものだ。

「パーフェクト·レッサー·バンパイアから、パーフェクト·バンパイアに進化したんだ」

「パーフェクト·レッサー·バンパイアから、パーフェクト·バンパイア?
 何だそれ? やたら、長ったらしいな」

「兎に角、パーフェクト·バンパイアになったんだよ!」

「まあ、劣化版のバンパイアから、パーフェクトなバンパイアになったって事だろ?
 で、どこが変わったんだよ?」

 やはり、ラインハルトは進化に興味津々だ。ガンガン聞いてくる。

「あまり変わってないな……。
 元々、パーフェクトなレッサー·バンパイアだったから、バンパイアの欠点は元々、克服出来てたし……」

「何だ、それ?」

 ラインハルトは、明らかに落胆している。
 俺は聞かれたから、教えたのだぞ。
 シロに頭が上がらないラインハルトの癖に。
 俺は、シロのご主人様なんだぞ。俺に対しても、敬いやがれ。

 俺がラインハルトに対して、イラついてると、

「流石、セド兄!」

 ケンジの無駄なヨイショに、また、イラッ!と、する。
 このタイミングで、ヨイショなんか要らんわい!

「そうね。確かに、それ程、ステータス自体は、変わってなさそうね。
 だけど、スキルに『変化』ていうのが、新たに増えてるようね」

 アナスタシアが、俺のステータスを勝手に確認したようだ。

「ああ、それな。どうやら、蝙蝠に変化できるようになったみたいだぞ!」

「セドリック、お前、ますます人間離れして来たな!」

 ラインハルトが、失礼な事を言ってきた。
 というか、スケルトンやリッチー時代の方が、人間離れしてた気がするんだけど。

「『変化』なんて、普通だろ? アナスタシアだって、第5階位闇属性魔法を使えば、何にだって変身できるだろ!」

「闇属性魔法の場合は、幻惑を見せてせるだけで、本人自身が本当に変身してる訳ではないわ。
 セド君の『変化』のように、本当の蝙蝠になれる訳ではないの」

 アナスタシアが、わざわざ説明してくれた。
 まあ、賢者になったアナスタシアなら、その内、本当に変身できる魔法ぐらい開発しそうだけどな。
 賢者魔法で、若くなったし。

「ご主人様は、凄いんです! ご主人様が蝙蝠に変身したお姿は、神々しく、とても美味しそう……じゃなかった、魅力的なお姿だったのです!」

 シロが、涎を垂らしながら、俺を褒め称える。
 というか、涎を垂らしてる時点で、俺の事を完全に、美味しそうなデザートや何かと思ってやしないか?
 やはり、絶対にシロの前では蝙蝠にならない方が良いだろう。

「まあ、俺の方は、こんな感じだったけど、お前らの方はどうだったんだよ!」

 俺は、進化の事を、これ以上聞かれるのが面倒くさくなってきたので、話を変える。

「ハッハッハッハッハッ! やっと聞いてくれたか!
 俺達は、今日、怪しいデカい扉の部屋を発見したんだぜ!」

 ラインハルトが、よっぽど話したかったのか鼻高々で自慢してきた。

「ボス部屋か?」

 俺は、ラインハルトに質問する。

「ああ、間違いないな」

 アムルーダンジョンの各階層には、一応フロアーボスがいる。
 まあ、倒す実力があれば倒してしまってもいいのだが、フロアーボスは、別に、下層に下る階段前にいる訳ではないので、スルーしてしまってもいいのだ。
 というか、フロアーボスが、冒険者から逃げ回ってる場合もあるしね。

 オリ姫とかも、第29階層のフロアーボスだった気がするが、火山スライムキングに虐められてたし……。
 兎に角、アムルーダンジョンのフロアーボスは、RPGゲームのように、必ずフロアーボス部屋に鎮座してる訳ではないのである。

「第33階層のフロアーボスは、何か有りそうな気がするのよね」

「確かにな」

 俺は、アナスタシアの意見に同意する。
 というか、アムルーダンジョンでは、今まで、下層に下る階段前に部屋を構えたフロアーボスなど居なかった。
 確かに、他のダンジョンでは、RPGゲームと同じように、必ず階段前にフロアーボスがいるダンジョンもある。

 しかし、ここはアムルーダンジョン。
 他のダンジョンの常識など当てはまらない。

 まあ、常識に当てはまらないといえば、アムルーダンジョンは、魔王が巣食うダンジョン。
 これまでのダンジョンとは、そもそも全く当てはまらないのが当たり前なのだ。

 しかも、第33階層からは、何者も絶対に通らせないという強い意思が感じられた。
 第33階層のその先こそ、もしかしたら魔王が統治する領域なのかもしれないのだ。

「これは、気を引き締めなきゃならないな」

「だな」

「ですね」

 歴戦の猛者である、ラインハルトとアナスタシアも同意する。

「ご主人様なら、余裕ですよ!」

「キュイ!」

「流石、セド兄!」

「お腹減ったニャ~」

 最後に、駄猫が何か言ったが、気にしない。
 俺は、心を引き締め、ハーレム勇者を目指し邁進するだけなのだから。

 ーーー

 ここまで読んで下さりありがとうございます。
 面白かったら、お気に入りにいれてね!
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!

暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい! 政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

慟哭の時

レクフル
ファンタジー
物心ついた時から、母と二人で旅をしていた。 各地を周り、何処に行くでもなく旅をする。 気づいたらそうだったし、何の疑問も持たなくて、ただ私は母と旅を続けていた。 しかし、母には旅をする理由があった。 そんな日々が続いたある日、母がいなくなった。 私は一人になったのだ。 誰にも触れられず、人と関わる事を避けて生きていた私が急に一人になって、どう生きていけばいいのか…… それから母を探す旅を始める。 誰にも求められず、触れられず、忘れ去られていき、それでも生きていく理由等あるのだろうか……? 私にあるのは異常な力だけ。 普通でいられるのなら、こんな力等無くていいのだ。 だから旅をする。 私を必要としてくれる存在であった母を探すために。 私を愛してくれる人を探すために……

転生先ではゆっくりと生きたい

ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。 事故で死んだ明彦が出会ったのは…… 転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた 小説家になろうでも連載中です。 なろうの方が話数が多いです。 https://ncode.syosetu.com/n8964gh/

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である

megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

幼女と執事が異世界で

天界
ファンタジー
宝くじを握り締めオレは死んだ。 当選金額は約3億。だがオレが死んだのは神の過失だった! 謝罪と称して3億分の贈り物を貰って転生したら異世界!? おまけで貰った執事と共に異世界を満喫することを決めるオレ。 オレの人生はまだ始まったばかりだ!

異世界転生~チート魔法でスローライフ

リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...