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82. 妄想

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 結局、虹色カエルを6匹捕まえる事ができ、俺達は無事、クエストを終了する事ができた。

 残り、4つのクエストも順調にこなし、俺達は、アジトの第22階層の湖畔のログハウスに帰還した。

「ニャ~」

「キュイ!」

 ログハウスに入ると、留守番していたミーナとオリ姫が俺達を迎えてくれる。

「元気でしたか~ミーナタン! 変な人は来ませんでしたか~」

 俺は、ミーナを思う存分モフりながら、話を聞く。

「ニャ~」

「そうでちゅか。何も無かったんでちゅか~。そいつは良かったでちゅね~」

「ご主人様、ミーナさんの言葉が分かるのですか?」

 シロが首を傾げて聞いてくる。

「分からん! でも、何となく分かる!」

「そうですよね……そんな事だろうと思いました」

「なんか棘がある言い方だな」

「ただ、ミーナさんの言葉が分かるようになればと思っただけですよ!」

「ミーナタンの言葉が分かったら最高だよな!」

「そうですかね……あの毒舌なミーナさんですよ。ミーナさんが喋ってる言葉が分かったら、きっと、ご主人様、凹むと思いますよ!」

「そんな筈は無い! ミーナタンは天使なのだ! そうだよね、ミーナタン!」

「ニャ~」

 ミーナは、俺の言葉を返すように「ニャ~」と、鳴く。

「多分、今だって、『いつまでモフってるんだよ、モスキート野郎!』とか、言ってるんですよ!」

 シロが、酷い事を言ってくる。

「ミーナタンは、そんな事言わない!」

「言いますよ! 可愛らしい猫になったって、元は、あの自堕落でお金に意地汚いミーナさんなんですよ!」

「確かに……」

 俺は、猫耳族だった頃のミーナを思い出す。
 あの頃のミーナは、本当にどうしようもない奴だった。

「やっぱり、このままの方がいいな!」

「そうですよね!」

 ーーー

 そんなこんなで、俺達は、早速、レベル上げに向かう。

 今回は、勿論、ミーナとオリ姫も連れていく。
 少しでも戦力アップしたいのだ。

 あの、第33階層のゴキ野郎は、それ程厄介なのだ。
 倒しても倒しても湧いて出てくる。

 圧倒的な強さを身に付けなければ、攻略不可能。もう、猫の手も借りたいぐらいなのである。

 俺達は、レベル上げ道場の第29階層に到着すると、早速、戦いを始める。

 今回は、俺も実戦感覚を取り戻す為に、しっかり刀を振るう。
 刀は、シロに製作して貰った日本刀もどき。
 前世で剣道をやってた事を思い出した俺には、しっくりくる得物だ。

 俺は、大地を踏みしめ、地面の感触を確かめる。

「よし! 行けそうだ!」

 俺はそのまま、すり足で前に進み、火山スライムキングの間合いに入って様子を見る。

 火山スライムキングは、俺が間合いに入ったとみると、怒涛の触手攻撃を仕掛けて来た。

 パン! パン! パン! パン!パン!

 俺は、その触手攻撃を、全て刀で払い除ける。

「見えてる」

 パン! パン! パン! パン! パン!

「ご主人様! 助太刀した方が宜しいですか!」

 シロが、いつまで経っても攻撃しない俺を見兼ねて話し掛けてきた。

「必要ない。ちょっと久しぶりの実戦で、目を慣らしてただけだ」

 俺は、そう言うと、一気に火山スライムキングの懐に踏み込んだ。

 そして、中段から火山スライムキングの魔核目掛けて、鋭い突きを放つ。

 パキン!

 俺の刀の切先は、見事に火山スライムキングの魔核にヒットして、火山スライムキングが溶けるように地面に散らばった。

「ご主人様! 凄いです!」

 興奮したシロが、いきなり抱きついて来た。

「当たり前だろ! 俺は冒険者時代は戦士で、尚且つ、前世では、剣道3級って言ってただろ!」

「本当だったんですね! 肉が付いたら、大賢者並に頭が良くなると言ってたのに、それほど変わらなかったから、剣の腕もそんなに変わらないと思ってたんで」

 シロが、悪気なくディスってきた。

「お前、失礼な奴だな! 兄貴も言ってだろ! 俺の本来の実力は、A級冒険者並の実力だったって!
 そのA級冒険者の実力と、剣道3級の実力が合わされば、俺の実力は最早、剣聖並の実力なのだ!」

「そうなんですか……。剣聖が何だか分かりませんけど、兎に角、凄いんですね……」

「俺も、剣聖が何だか知らんけど、大体、異世界モノのラノベには、剣聖やら剣姫やら剣神やら、何やら凄い奴が沢山でてくるんだよ!」

「なので、ご主人様は、勝手に剣聖を名乗ると……」

 シロが、俺の下僕であるまじき失礼な事を言ってきた。

「そんな事、一言も言ってないだろ!
 二つ名とは、自然発生的に、誰かが言い始めて、勝手に広がる物なのだ!
 それなのに、自分で言って広めるなんてカッコ悪いだろ!」

 俺は、シロの考えを正す為に、全力で否定する。

「では、僕に広めろと?」

「ん…まあ……そういう事だな……その辺の事はシロに任せる。
 兎に角、お前は、俺の偉大さや凄さを、その目に焼け付けておくのだ!」

「分かりました。ご主人様! 
 僕は、この8つの目で、ご主人様の格好良い姿をしっかり記憶します!」

 どうやら、シロは、俺の意図が分かってくれたようだ。

 剣聖とか、格好良い二つ名は欲しいけど、自分で広めたらカッコ悪いしね。

 なので、俺は、下僕のシロを使う。
 俺の事が大好きなシロなら、俺の勇姿を確実に3倍増しに広めてくれる筈なのだ。

 そして、俺は、剣聖と呼ばれるようになる未来の自分を想像しながら、無心に火山スライムキングを倒し続けるのであった。

 ーーー

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