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80. 血の誘惑
しおりを挟む俺とシロは、無事、A級冒険者カードをゲットし、アムルーダンジョンに帰る所である。
そう、俺達は魔物なので、アムルーダンジョンが、俺達の住処なのだ。
勿論、兄貴のブルースから、数年間未解決のクエストを、ここぞとばかり任されてしまっている。
そんな訳で、俺とシロは、任されたクエストを解決しながら、第22階層のアジトに戻るという訳だ。
「ご主人様、それでは、お兄さんから渡されたクエストを読み上げていきますよ!
まず、最初のクエストは、アラクネのオシャレなスカート!」
「オイ! それって、ただの注文だろ!」
俺は、思わずツッコミをいれる。
「そうですね……まあ、僕の場合、今まで上下セットで服を作ってきたので、スカートだけを作った事が無かったので貴重なのでしょう!
これは、お家に戻ったら内職する事にします!」
「次のクエストを読みますね!」
「おお」
「次のクエストは、アラクネのカーテン。縦1メートル、横60センチを10枚。白地に花柄希望」
「それも、クエストというか、シロへの注文だろ!」
兄貴の奴……シロと仲良くなったからって、ここぞとばかりに注文を入れてきている。
「確かに、今まで、カーテンを冒険者にあげた事はありませんね!
ちょうど、アジトのカーテンの模様替えもしたかったので、お家に帰ったら一緒に作ってしまいましょう!」
シロは、全く気にしていないようだ。
どうやらシロは、兄貴にも甘いようである。
「それではどんどん読み上げていきますよ!」
結局、シロに対するクエストが殆どで、冒険者らしいマトモなクエストは、5つ程しかなかった。
「それでは、まず7階層に向かいましょうか!
第7階層で、虹色カエルから取れるガマの油をゲットしにいきます!」
「おお!」
やっと、冒険者らしいクエストが登場した。
まあ、アラクネの服をゲットするのも、冒険者らしいクエストといえばクエストなのだが、俺達にとっては、クエストというより、ただの注文だ。
普通の冒険者にとっては、超難関なクエストかもしれないが、俺達は依頼書を見てただ作るだけ。楽な商売だとも言えるけど。
しかし、俺は本来冒険者。
心躍る冒険がしたいのだ!
「シロ! 急ぐぞ!俺達の目の前に、新たな冒険が待っているのだ!」
「ハイ! ご主人様!」
俺は、心を震わせ、久しぶりに冒険者気分を味わうのだった。
そんな感じで、意気揚揚と下層に下って行き、遂に、目的地の第7階層に到着した。
第7階層は、沼地と森のステージ。
薄暗くジメジメするステージである。
暫く、虹色カエルを探し回るが、全く見つからない。
ポイズンフロッグやビッグフロッグなどのカエル系の魔物は沢山いるのだが、虹色カエルだけは、どうしても見つからないのだ。
まあ、簡単に見つからないから、何年も未解決クエストとして残っていたのだろう。
確かに、俺が骨になる前の冒険者時代も、虹色カエルのクエストは、常時クエストの壁に張られたまんまだったけ。
それ程、誰も壁から剥がしたがらない、難しいクエストなのである。
まあ、しかし、俺にはシロがいる。
古来からカエルの天敵は、蜘蛛と相場が決まっているのだ。
「シロ、森中に蜘蛛の巣の罠を張れ!」
「了解!」
シロは、セッセッと第7階層の森という森に、蜘蛛の巣を張る。
というか、こんなに張ったら、俺まで蜘蛛の巣に引っ掛からないか不安になるが、何故か、俺が触っても蜘蛛の巣に引っ付かなかった。
「シロ、この蜘蛛の巣どうなってるんだ?」
「アッ! それは、虹色カエルだけがくっつくように調整してるんです!」
「お前、そんな糸まで出せるのか?」
「僕の自在糸は、僕が想像できるどんな糸でも出せますからね!」
「そうなの、凄いな」
糸を硬くしたり、粘着力を付けたり、魔法付与ができる事は知ってたが、まさか、くっつく物まで指定できるとは思わなかった。
確かに、虹色カエル以外のカエルがくっついても面倒くさい。
だって、虹色カエル以外は要らないもん。
シロは、元々蜘蛛だからカエルを食べたいかもしれないけど、俺は元日本人。
カエルなど、出来れば食べたくない。
まあ、スケルトンの時なら、カエルの肉でも喜んで食べたかもしれないけど、
今はバンパイアだし、それ程、肉に執着はしてないのだ。
そんな訳で、蜘蛛の巣も張ったし、後は待つだけ。
明日の朝には、虹色カエルが蜘蛛の巣に引っ掛かってるだろう。
俺達は、やる事もないので、野営の準備を開始する。
「ご主人様、夕食は何が食べたいですか?」
「う~ん……。強いて言うなら血が飲みたいな!」
「血ですか……」
「ああ。真っ赤な血が飲みたい!」
「飲み物以外の食べ物は要らないんですか?」
「普通に食べたいけど」
「なるほど。そしたら、食事と血を用意すればいいんですね」
「そういう事だ」
「でも困ったな……血なんて持ってないし、カエルの血でいいですか?」
「カエルだけは、ちょっと無理!」
「本当ですか?」
「そうだと思うけど……」
「じゃあ、実験しますね!」
シロはそう言うと、指先から糸を飛ばし、近くに居たカエルの魔物を捕まえて、その場で首を撥ねた。
カエルの首からは、ボタボタと大量の血が流れ出ている。
「ウッヒョォーー! ウマソーー!」
俺は、シロからカエルを奪い取り、カエルの血を吸いまくる。
「ゲロウマーー!!」
カエルの血は、思いのほか美味かった。
「ご主人様、オチンチンは、大丈夫なんですか?」
「そういえば、そうだな?」
「もしかしたら、カエルの血は、ご主人様のオチンチンに反応しないのでは?
これで、EDになる心配が無くなりましたよ!」
「そうだとしても、俺はカエルの血など飲みたくない!」
俺はキッパリ、カエルの血を拒否する。
「エッ!? 今、美味しそうに飲んでませんでした?」
「カエルの血など、気持ち悪くて飲める訳ないだろ!」
「そしたら、もう一度、試してみますか?」
「止めろ!」
シロは、俺の制止を無視して、再び、近くにいたカエルを捕まえて、俺の目の前で首を撥ねてみせた。
「ウッヒョォーー! カエルの血ウマソー!」
どうやら、バンパイアにとって、血を飲みたいという衝動だけは、絶対に抑えられないようである。
例え、それが、カエルの血であったとしても。
ーーー
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