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78. 日産

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「シロ様、ギルド長室にお越し下さいませ!」

 暫くすると、真っ青な顔をした受付のお姉さんが戻ってきて、シロに話し掛けてきた。
 どうやら、俺達というか、シロをギルド長室に案内してくれるみたいだ。

「最初から、そうしとけば良かったんだよ!」

 シロは、ブツブツ言いながらも、受付のお姉さんの後に着いて行く。

 ギルド長室は2階にあるらしく、俺達は受付のお姉さんに案内されて、階段を上がる。
 2階に上がると長い通路が有り、通路の両側にたくさんの個室がある。
 どうやらギルド長室は、他の部屋より少しだけ豪華な扉の部屋であるようだ。

 トントン!

「シロ様と、お連れの方をお連れしました!」

「部屋に入ってもらえ!」

 ギルド長室の中から、昔、聞き覚えがある懐かしい声が聞こえてきた。

「それでは、こちらにどうぞ」

 受付嬢のお姉さんは、扉を開け、俺達をギルド長室に招き入れる。

「おお! これはシロ様、よくお越しになられましたな!」

 奥のデスクに座っていた、ギルド長と思われる、髭面で頭がツルッピカのガタイの良い男が立ち上がり、深々とお辞儀をして、ツルッピカの頭頂部を俺達に向けた。

「久しぶりだね!」

 シロは、ギルド長と知り合いなのか、軽い感じで挨拶する。

「どうぞどうぞ、立ち話もなんですから、お座り下さいませ!」

 ギルド長は、俺達を応接用のソファーに座るよう即してきた。

 シロと俺は、ソファーに座る。
 やはりと言うか、ギルド長室のソファーは、フカフカだった。

 俺が、前世も含めて、今まで座ってきたどのソファーよりも、座り心地がよくフワフワだ。
 多分、羊スライムをクッション材に使っているのだろう。

「で、シロ様、今日は、どのようなご用件で?」

 シロに対して、ギルド長の腰が低い。
 初めて会った時に、相当、ガツン! とやられたのであろう。
 滅茶苦茶、シロにビビってるみたいだし。

「前来た時に話した、僕のご主人様の件なんだけど」

「シロ様、ちょっと待って下さい!  君、ちょっと席を外してくれるか」

 ギルド長は、慌てて受付のお姉さんに目配せする。

「あ! ハイ。失礼します」

 受付のお姉さんが、部屋から出て行くのを確認すると、
 ギルド長が、襟を正して話し始めた。

「シロ様の主様である金色の魔王のお話は、私と、『鷹の爪』と、ハルマン王国の王しか知らない内密の話なので、申し訳ございません!」

 ギルド長は、ツルッピカの頭頂部を俺達の方に向け、深々と頭を下げる。

「そうなんだ」

「そうで御座います。シロ様とシロ様の主様の案件は、この国の極秘事項ですから」

 ギルド長は、真剣な顔をして答えた。

「ふーん。まあ、どうでもいいや!
 そのご主人様なんだけど、連れて来たよ!」

 シロは、軽い感じでギルド長に話す。

「えっ! 連れてきたって!?」

 ギルド長が、まさかという顔をして驚いている。
 どうやら、俺の事を、シロに着いて来た下僕か何かだと思ってたのかもしれない。

「この方が、僕のご主人様の……ええと……名前は……忘れちゃって、まだ決まってないか……」

 シロが、カッコ悪過ぎる紹介をしてくれた。
 こんなカッコ悪い紹介の仕方をされたら、滅茶苦茶ギルド長と話しにくくなるだろ。

「あのぉ……私は、シロ様に、確か……シロ様の主様は、リッチーだと聞いていたような……」

「アッ! 今は、あれから進化して、パーフェクトレッサーバンパイアに進化したんだよ!」

「パーフェクトなのに、レッサー? 完璧なのに劣ってるんですか?」

 どうやら、みんなそこが引っ掛かるようだ。

「違う違う。完璧なレッサーバンパイアって意味だよ!
 ご主人様は、バンパイアなのに、太陽光を克服してるんだよ!」

「それは凄いですね!」

「そう、僕のご主人様は、とても凄いだよ!
 なんてたって、魔物なのに勇者なんだから!」

 シロは、ギルド長に、俺が褒められて とても嬉しそうだ。

「シロ様! 改めて、シロ様の主様に、私の自己紹介をさせてもらって宜しいですか?」

「えっ? 自己紹介まだだった?どうぞ! どうぞ!」

 シロに確認をとった、アムルー冒険者ギルド長が、改めて俺に頭を下げる。

「私は、アムルー冒険者ギルドで、ギルド長をしているブルース·モレルと申します。
 以後、お見知り置きを!」

 ギルド長が、慇懃に挨拶してきた。
 俺も、元日本人なので、礼儀はわきまえている。

「俺は、アムルー冒険者ギルドで、元B級冒険者だった男だ。
 名前を名乗りたいのだが、暫くスケルトンだったせいか、人間だった時の名前は忘れてしまった。申し訳ない。」

 俺は、名前を名乗れない事を詫びつつ、丁寧に挨拶する。

「そうでしたか、しかし、私はアムルー冒険者ギルドに所属していたB級冒険者なら、全員、顔を覚えていた筈なのですが、どうしても貴方の事が覚えだせないのですが……」

 アムルー冒険者ギルド長、ブルースが首をかしげて考え込んでいる。

「それは、俺の見た目が変わったからかもしれません。
 スケルトンから、新たに肉が付いたせいか、年齢が30歳から18くらいに若返ったのと、頭髪が茶髪から黒髪に変わったようです。
 それから、筋肉も落ちてヒョロくなった気がします」

「そうでしたか……見た目が若返って、茶髪が黒髪に……てっ! お前、もしかして、セドリックか!」

 急に、ギルド長が豹変して、タメ口になった。

「セドリック? 日産?」

「ハッ? 日産ってなんだ? お前は、セドリックだよ!」

「俺の名前ですか?」

「そうだよ! 何で、兄貴の俺の事まで忘れてるんだよ!」

「兄貴?」

「そうだよ! 俺とお前は、同じ孤児院出身なんだよ!
 そしてお前は、俺に憧れて、冒険者になったんだ!
 因みに、『鷹の爪』のケンジも、同じ孤児院出身で、お前の弟分だったんだぞ!」

「エッ……そうだったの……だから、やたらに、ケンジの個人情報だけは覚えてたのか……」

 俺は、遂に、この世界での自分の名前と出自が分かった。
 それと、ケンジが通ってる風俗が、『ロリッ娘クラブ』だという事を知ってた謎も解けたのであった。

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