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67. 金色の魔王VSレスター王国軍(3)
しおりを挟む「来た! 奴らが来た!
『テンペスト』早く、奴等をやっつけてくれ!」
レスター王国の王子が狼狽しながら、S級パーティー『テンペスト』に命令する。
「流石に無理だろ……あんな規格外の化物なんて……」
『テンペスト』のリーダー、ギブソンも腰が引けている。
思えば、ギブソンもおかしいと思ってたのだ。
アムルー城塞都市は、冒険者の街として知られている。
S級パーティーの『鷹の爪』を始め、凄腕の冒険者がたくさん集まる街なのである。
それなのに、アムルー冒険者ギルド所属の冒険者が、こんな美味しいクエストに誰も参加してなかったのだ。
さらに、アムルーダンジョンに近い街に所属する冒険者も、もっと言えば、ハルマン王国を活動拠点にしている冒険者も一人も参加していない。
クエストの参加報酬は、破格の一人100万ゴル。
蜘蛛の魔物とかいうアラクネを倒せば、1000万ゴル。
そして親玉だという、金色のスケルトンを倒せば、3000万ゴル。
更に日当まで出て、1日につき1万ゴルまで貰えるのだ。
こんな美味しいクエストに参加しない奴など、最早、冒険者とは言えない。
だって、新種の蜘蛛の魔物と言っても、蜘蛛種の最高種と言われているレッドタランチュラ程ではないだろう。
『テンペスト』は、レッドタランチュラが根城にしているツクシー帝国にあるルルルダンジョンを拠点に活動している冒険者パーティーなのだ。
自慢じゃないが、あのアトレシア連合軍を持ってしても倒せなかったレッドタランチュラの脚を、不意打ちで1本だけ切り落とした事だってある。
まあその後、反撃を食らって、命からがら逃げ帰って来たのだけど……。
兎に角、アラクネは、蜘蛛種最高種のレッドタランチュラ程では無いという事だ!
金色のスケルトンだって、所詮は最弱のスケルトン。
動きは遅いし、魔法も使えない。
持ってる武器も錆びてボロボロ。
そんなスケルトンが、少しばかり強くなったとしても、S級パーティーの『テンペスト』が、負ける訳ないと思っていた。
そう、ついさっきまでは……。
俺達の目の前に現れた金色のスケルトンは、スケルトンと聞いていたのに、実際はリッチーだったし、尚且つ、あの不快な叫び声は何だ?
状態異常阻害魔道具が、殆ど効いていないし。
少し前の遭遇情報によると、状態異常阻害魔道具が効果を発揮していたんじゃなかったのか?
というか、そもそもあの口元だけ金色のリッチーが、金色の魔王と言われている金色のスケルトンなのか?
もしや、金色のスケルトン以上の存在?
あのリッチーは、普通の第4階位火属性魔法メテオアタックより数倍の威力の魔法を、普通に放っていたし。
金色の魔王の更に上を行く魔王……奴は、伝説の大魔王なのか……。
そうこうギブソンが、ハイスピードで頭を回転させている間にも、金色の大魔王が、ドンドン近づいて来ている。
ツクシー帝国最強冒険者パーティー、『テンペスト』の事を、全く脅威と思っていないかのように。
「何をしている! さっさと攻撃を仕掛けろ!
お前達に、いくら払ってると思ってるんだ!」
狼狽しているレスター王国の王子は、『テンペスト』に大声で喚き散らす。
そう、ギブソン達は、もう前金100万ゴルを受け取っているのだ。
ここで、逃げ帰ったとしたら、S級パーティー『テンペスト』の名折れになる。
へたしたら、ツクシー帝国の冒険者全体が笑われてしまう。
『テンペスト』が、レスター王国主催のクエストに参加している事は、アムルー冒険者ギルド所属の冒険者達に知られているのだ。
そんな『テンペスト』が、1度も金色の大魔王に攻撃せずに逃げ帰って来たと知れたら、奴らに一生笑われてしまう。
そう、『鷹の爪』に……。
『鷹の爪』とは同じS級パーティーなので面識もあり、会えば話もする仲だ。
そして、その『鷹の爪』なのだが、
今回のクエスト前に、情報収集を兼ねて、アムルー冒険者ギルドに行った時に、
「お前達じゃ無理だから止めとけよ!」
と、『鷹の爪』団長のラインハルトに忠告されたのだ。
しかし俺は、そんな忠告を鼻で笑い、
「俺達、『テンペスト』は、お前らのような腰抜けパーティーじゃないからな!
いつも最強の魔物、レッドタランチュラと殺り合ってるんだよ!
まあ、見てろ! 俺達『テンペスト』が、腑抜けたアムルーの冒険者の代わりに、金色のスケルトンを討伐してやるよ!」
と、調子こいて、言ってしまったのだ。
そんな俺を、ラインハルトとアナスタシア、それと誰だっけ……影が薄い黒髪の侍……サンジ? だったか……。奴らは、馬鹿な男だという顔をして、俺の事を哀れみの目で見てきたのだ。
そんな大口を叩いてしまった俺が、今更、何もしないで逃げ帰る事なんか出来ないだろ。
もうやるしかない。
引くに引けない。
前金も、貰ってるし!
『テンペスト』団長ギブソンは、覚悟を決めた。
「よしやるぞ! お前達、ツクシー帝国最強冒険者パーティー『テンペスト』の実力をみせてやるぞ!」
「「おおーー!!」」
パーティーメンバーが、雄叫びを挙げる。
こうして、ツクシー帝国最強冒険者パーティー『テンペスト』の戦いが、今、始まったのだ!
ーーー
それから5分後。
ツクシー帝国最強冒険者パーティー『テンペスト』は、シロの糸によって、呆気なく簀巻きにされていた。
「お前ら、一体なんだったんだよー!
弱過ぎるだろ! 前金返しやがれーー!!」
レスター王国の王子が、発狂して喚き散らしている。
「君、ちょっと五月蝿いよ。また、おしりの穴に木の枝、突っ込まれたいの?」
シロが、レスター王国の王子に注意する。
「畜生ーー! そんな事、人前で言うなよぉ~! 絶対、お前だけは許さないんだからなーー!」
レスター王国の王子は、駄々っ子のように涙目で、ブー垂れている。
「王子、お下がり下さい!」
そんなレスター王国の王子の言葉を遮るように、シスターの格好をした、聖女と思われる少女が王子の前に出て来た。
まあ、聖女が、王子の言葉を遮るのは正解であろう。
あんな、しょうもない事で騒がれたら、軍隊の指揮に関わるしね。
とは言っても、指揮できる兵隊……残り30人しかいないけど。
そしてそんな、レスター王国軍の事までしっかり考えてる聖女は、シロの方をキリッと見る。
「貴方を倒すのは無理だとしても、貴方の主だけは、私が倒してみせるわ!」
聖女は、そう言うと、杖を、俺の方に突き出してきた。
これは、俺に対する宣戦布告か?
それなら、俺は、それに応えるしかないな。
「クワッハッハッハッハッ! やりたいだけやるが良い! 偉大なるハーレム勇者の俺様が、光魔法など全て受け止めてみせるぞ!」
(骨語)
「ギィギィギィギィギィ! ギィギィ……ギィギィギィギィギィ……ギィギィギィギィギィギィギィギィギィ……!」
俺は、聖女に、格好良すぎる戦前の口上を垂れてやった。
「不快!」
そんな俺の会心な口上を、聖女は、「不快!」の一言で、簡単に片付けた。
俺は、ショックのあまり相当なダメージを受け、立っていられずに四つん這いになってしまう。
「ご主人様、気を落とさないで下さい!」
すかさず、シロが慰めてくれる。
まさか、光属性魔法じゃなくて、言葉でダメージを与えてくるとは……。
どうやら俺は、聖女を舐めていたようだ。
そんな感じで、俺VS聖女の、性?聖なる戦いが始まったのだった。
ーーー
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