上 下
4 / 568

4. 電柱

しおりを挟む
 
 ティッティティーン!

 突然、頭の中でレベルの上がる音が聞こえて来た。

 ステータスを確認すると、lv.3になっていた。
 剣を振り回すと、先程までより、少し早く振れるような気がする。

 剣を魔法の鞄にしまい、その場でシャドーボクシングをしてみる。

 やはり、思いの外、身体が軽い。

 これならホーンラビットをもっと簡単に狩れるかもしれない。
 1匹目は、足にオシッコを引っ掛けられながら倒したが、次は、オシッコを引っ掛けられる前に倒すのだ。

 まだ、面と向かって倒す自信がないので、また、ホーンラビットの通り道で白骨死体のフリをする。

 そして数分後。

 俺の前にホーンラビットがやって来た。

 ホーンラビットは、迷わず俺の足にオシッコを掛けてきた。

「……」

 何でだ……何でホーンラビットは、俺の足にオシッコをするのだ?
 1匹目を倒す前は、中々ホーンラビットは俺の前に立ち止まらなかったのに、2匹目は数分でやって来て、迷わず俺の足にオシッコした。

 ハッ! もしや……俺の足から発せられている1匹目のオシッコの匂いに釣られて、ホーンラビットがやって来たのではないのか?
 前の世界で飼っていた犬も、何処かの犬がオシッコした電柱に被せるようにオシッコをしていた。

 という事は、俺の足は電柱と同じという事か……。

 俺は、1回目にオシッコをされた時より、更に深いダメージを受けた。

 しかし、俺は立ち直らなければならない。
 折角、目の前に獲物がいるのだ。
 俺は目の前のホーンラビットの首を刎ねる。

 ティッティティーン!

 再び、頭の中でレベルが上がる音がした。

 ステータスを調べると、今度はlv.4になっていた。

 取り敢えず、剣を振ってみる。
 とても早く振れる。

 調子にのって、剣を振り回していたら手からすっぽ抜けた。
 やはり肉が無いので握力が弱い。

 そうだ。肉だ!
 肉を食わねば!

 俺は再び、生のままホーンラビットを食べた。

 やはり美味い!

「人肉食いてー!」

(骨語)
「キィキィキィー!」

 再び、5階層に不快な音が響き渡った。

 肉を食べれば食べる程、人肉が食べたくなる。
 人肉の味、知らないけど。

 そんな感じで、俺は白骨死体の振りを続け、甘んじてホーンラビットのオシッコを受け続けた。
 やはり、簡単に狩れる誘惑には敵わないのだ。

 実際、1匹目を狩るのに、まる2日間掛かったのに、俺の足に染み付いたホーンラビットのオシッコの匂いを利用すれば、数分でホーンラビットが狩れてしまうのだ。

 肉の誘惑と、ホーンラビットにオシッコを掛けられるという屈辱を天秤にかけたら、俺の中で肉の誘惑が勝ったのである。

 どうやら、スケルトンという種族は、肉の誘惑に抗えない種族のようだ。

 しかしだ……。

 ホーンラビットの肉を食べれば食べる程、人肉が食べたくなる衝動が抑えられなくなる。

『人肉食べてー!』

 不快な音を発してしまうので、今回は心の中で叫んでみた。

 もし人間を見たら、俺は、人肉を食べたくなる衝動が抑えられなくなると感じている。
 だが、この階層には、少しばかり冒険者も探索しているのだ。
 嫌でも、いつか冒険者に出会ってしまう。

 出来るだけ、冒険者に出会わないようにしていたのだが、遂にその時は来た。
 俺は、たらふくホーンラビットを食べて眠くなってしまったのだ。

 ハッ! と気付いた時は、冒険者のパーティーが、俺の魔法の鞄を物色していた。
 今の俺に、人肉を食べたいという衝動は現れない。
 ただ、助かりたい。
 俺の魔法の鞄を物色している冒険者は、見るからに格上だったのだ。

 冒険者パーティーは、俺の事をタダの白骨死体だと思い込んでるみたいだ。

「ケッ! こいつロクなもの持ってねえな!」
 シーフ風の男が、悪態をつく。

「真っ裸だから、既に別の冒険者に金目の物は剥ぎ取られてるのよ!」
 魔法使い風の女が、俺の状態を見て推理する。

「刃こぼれしたボロボロの剣に、やたらと汚いマップラーしか持ってないし。それも、5階層までしかマッピングされてないから価値もそれ程無いな。
 魔法の鞄も30キロしか入らないし、血がベットリ染み付いててコレは売れねーや!」
 戦士風の男も、俺の持ち物を見てガッカリしている。

「行きましょ! もう金目の物は、誰かが奪った後よ!」
「そうだな!」

 どうやら冒険者パーティーは、俺が大したものを持って無いと思い込み、諦めてくれたようだ。

 マップラーに、超隠蔽を掛けておいて良かった。
 こんな事もあろうかと、新たにマッピングした部分は、俺以外は見えないように隠蔽しておいたのだ。

 俺のマップラーは、人間がまだ到達していない28階層までマッピングされている1000万ゴルオーバーのお宝なのだ。
 居眠りしてたせいで奪われていたら、死んでも死にきれなかった。

 骨なので、殆ど 死んでるようなものだけど。

 ーーー

 ここまで読んで下さりありがとうございます。
 お気に入りに入れて貰えたら嬉しいです。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

異世界転生したらよくわからない騎士の家に生まれたので、とりあえず死なないように気をつけていたら無双してしまった件。

星の国のマジシャン
ファンタジー
 引きこもりニート、40歳の俺が、皇帝に騎士として支える分家の貴族に転生。  そして魔法剣術学校の剣術科に通うことなるが、そこには波瀾万丈な物語が生まれる程の過酷な「必須科目」の数々が。  本家VS分家の「決闘」や、卒業と命を懸け必死で戦い抜く「魔物サバイバル」、さらには40年の弱男人生で味わったことのない甘酸っぱい青春群像劇やモテ期も…。  この世界を動かす、最大の敵にご注目ください!

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ

如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白? 「え~…大丈夫?」 …大丈夫じゃないです というかあなた誰? 「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」 …合…コン 私の死因…神様の合コン… …かない 「てことで…好きな所に転生していいよ!!」 好きな所…転生 じゃ異世界で 「異世界ってそんな子供みたいな…」 子供だし 小2 「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」 よろです 魔法使えるところがいいな 「更に注文!?」 …神様のせいで死んだのに… 「あぁ!!分かりました!!」 やたね 「君…結構策士だな」 そう? 作戦とかは楽しいけど… 「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」 …あそこ? 「…うん。君ならやれるよ。頑張って」 …んな他人事みたいな… 「あ。爵位は結構高めだからね」 しゃくい…? 「じゃ!!」 え? ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

売れない薬はただのゴミ ~伯爵令嬢がつぶれかけのお店を再生します~

薄味メロン
ファンタジー
周囲は、みんな敵。 欠陥品と呼ばれた令嬢が、つぶれかけのお店を立て直す。

「お前のような役立たずは不要だ」と追放された三男の前世は世界最強の賢者でした~今世ではダラダラ生きたいのでスローライフを送ります~

平山和人
ファンタジー
主人公のアベルは転生者だ。一度目の人生は剣聖、二度目は賢者として活躍していた。 三度目の人生はのんびり過ごしたいため、アベルは今までの人生で得たスキルを封印し、貴族として生きることにした。 そして、15歳の誕生日でスキル鑑定によって何のスキルも持ってないためアベルは追放されることになった。 アベルは追放された土地でスローライフを楽しもうとするが、そこは凶悪な魔物が跋扈する魔境であった。 襲い掛かってくる魔物を討伐したことでアベルの実力が明らかになると、領民たちはアベルを救世主と崇め、貴族たちはアベルを取り戻そうと追いかけてくる。 果たしてアベルは夢であるスローライフを送ることが出来るのだろうか。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

処理中です...