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第2話
088. ポップコーンの準備はいい?5
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「あれ、ここって……」
「そうよ」
ボクらが目の前にしていたのは、見覚えのある入り口の狭い坑道だった。
「確か、山の方からソルトイルの街に来るときに、通ったよね。
またここを通るの?」
「ん~、通るのというのが正しいのか……」
「潜る、じゃないかなー」
潜る!?
「え、え、どういうこと?」
「いいから行くわよ」
ハクはそんな風にまた、洞穴の間に身を滑り込ませていってしまった。
続くアニーも、マグも何のためらいも無く。
「ほぉら、ビビってるのはお前だけだよー」
「うっさいなぁ。
仕方ないじゃないか……
あ、待ってよぉ」
あのジメジメとした移動用の坑道に入るのは嫌だったが、置いてけぼりもゴメンだったので、ボクは手にした木刀をいっそう強く握りしめてから後に続いた。
「ほら、見える?」
ハクが手にした松明でかざして見せたのは壁に走った一本の亀裂だった。
「これが、何?」
行動の中は入り口に反して広めになっていて、移動には十分だが気をつけないと壁肌や突き出た岩に体を擦ってしまうくらいではあった。
ボクが以前ここを通った時には服を引っ掛けて破いてしまったことがある。
「マグ、お願いよ」
うん♪ と返事をしたマグは帽子から木の枝を取り出した。
彼女がヤオを使う時にかざす、指揮棒のようなロッドだ。
木の枝の先端に緑の葉っぱが一枚揺れるそのロッドが、彼女の武器であり、ヤオを操る際の魔術的アイテムにもなっている。
マグはゆっくりと木の枝の先を亀裂に近づけた。
「お願い……」
いつもの無邪気なマグが目を閉じ、真剣に願うように呟く。
杖の先の葉っぱからヤオの光がこぼれ落ち、亀裂に吸い込まれていく。
すると、壁の裂け目にヤオの光が充満した。
ゴゴゴ……
重厚な岩の足音が聞こえると、亀裂はボクが潜れる程の大きさの門となってその口を開いたのだった。
「これも、マグの術なの?
ヤオってこんな使い方もできるんだね」
「ここは元々そういう仕掛けがあってね。
ただ、一般人が悪さをしないようにヤオで術をかけてもらってるのよ」
「それは仕掛けを作って悪さができないようにしなくちゃいけないような、何かがあるってこと?」
「そういうことね」
ハクは大きく屈んで門をくぐった。
さぁさぁ
と、アニーたちも続く。
その後は、起伏のあるなだらかな下り坂だった。
坑道の本筋と同じように、目立った罠もなく、襲ってくるモンスターこそいなかったが、人の顔よりも大きな蠢く虫や、引き合いに出すのもちょっとかわいそうだけど、ジャコくらいの大きさの蝙蝠が頭の上でぶら下がっているのを避ける際に目があったこともあった。
彼らは総じて、前にも教えてもらった通り、こちらから危害を加えることがなければ牙を剥いてくることはなかった。
「でも、ねぇ?
少し、暑くない、かな……」
亀裂の門をくぐってから20分ほど進んだ頃から、周りの岩肌どころか地面からも熱を感じるようになった。空気は蒸気を帯びて、今はすでにセイロの中で蒸されている中華饅頭の気分だ。
顔と言わず、全身から吹き出る汗が着ている服を湿らせる。
「この辺りは、すこーしだけ、蒸すのだ。
サウナは好きなのだ?」
アニーも着ているオレンジのシャツの胸元に汗のしみを作って、換気をしようとパタパタと空気を送り込んでいる。
その密度のある胸元では無理もない。
ボクが目のやり場に困って、自然と反対の方向を見ると、マグがすでに黄色のシャツを脱いでいた。
キャミソールのようなものなのだろうけれど、そのフリフリ加減と彼女の体の幼さから、逆にいけないものを見てしまったようにも思った。
「ちょっとぉ!?
マグ、なに脱いでんの!?」
「だってー
暑いんだもーん」
「そうか、上を脱げばいいのか」
隣を歩く女性は、自分のシャツに手をかけ、すでに健康的に引き締まった腹部をあらわにしていた。
「あ、アニー!?
ハクゥ!
二人を止めてっ!」
ボク自身も暑さと色香に頭が回らず前を歩くリーダーに助けを求めた。
「そうよ」
ボクらが目の前にしていたのは、見覚えのある入り口の狭い坑道だった。
「確か、山の方からソルトイルの街に来るときに、通ったよね。
またここを通るの?」
「ん~、通るのというのが正しいのか……」
「潜る、じゃないかなー」
潜る!?
「え、え、どういうこと?」
「いいから行くわよ」
ハクはそんな風にまた、洞穴の間に身を滑り込ませていってしまった。
続くアニーも、マグも何のためらいも無く。
「ほぉら、ビビってるのはお前だけだよー」
「うっさいなぁ。
仕方ないじゃないか……
あ、待ってよぉ」
あのジメジメとした移動用の坑道に入るのは嫌だったが、置いてけぼりもゴメンだったので、ボクは手にした木刀をいっそう強く握りしめてから後に続いた。
「ほら、見える?」
ハクが手にした松明でかざして見せたのは壁に走った一本の亀裂だった。
「これが、何?」
行動の中は入り口に反して広めになっていて、移動には十分だが気をつけないと壁肌や突き出た岩に体を擦ってしまうくらいではあった。
ボクが以前ここを通った時には服を引っ掛けて破いてしまったことがある。
「マグ、お願いよ」
うん♪ と返事をしたマグは帽子から木の枝を取り出した。
彼女がヤオを使う時にかざす、指揮棒のようなロッドだ。
木の枝の先端に緑の葉っぱが一枚揺れるそのロッドが、彼女の武器であり、ヤオを操る際の魔術的アイテムにもなっている。
マグはゆっくりと木の枝の先を亀裂に近づけた。
「お願い……」
いつもの無邪気なマグが目を閉じ、真剣に願うように呟く。
杖の先の葉っぱからヤオの光がこぼれ落ち、亀裂に吸い込まれていく。
すると、壁の裂け目にヤオの光が充満した。
ゴゴゴ……
重厚な岩の足音が聞こえると、亀裂はボクが潜れる程の大きさの門となってその口を開いたのだった。
「これも、マグの術なの?
ヤオってこんな使い方もできるんだね」
「ここは元々そういう仕掛けがあってね。
ただ、一般人が悪さをしないようにヤオで術をかけてもらってるのよ」
「それは仕掛けを作って悪さができないようにしなくちゃいけないような、何かがあるってこと?」
「そういうことね」
ハクは大きく屈んで門をくぐった。
さぁさぁ
と、アニーたちも続く。
その後は、起伏のあるなだらかな下り坂だった。
坑道の本筋と同じように、目立った罠もなく、襲ってくるモンスターこそいなかったが、人の顔よりも大きな蠢く虫や、引き合いに出すのもちょっとかわいそうだけど、ジャコくらいの大きさの蝙蝠が頭の上でぶら下がっているのを避ける際に目があったこともあった。
彼らは総じて、前にも教えてもらった通り、こちらから危害を加えることがなければ牙を剥いてくることはなかった。
「でも、ねぇ?
少し、暑くない、かな……」
亀裂の門をくぐってから20分ほど進んだ頃から、周りの岩肌どころか地面からも熱を感じるようになった。空気は蒸気を帯びて、今はすでにセイロの中で蒸されている中華饅頭の気分だ。
顔と言わず、全身から吹き出る汗が着ている服を湿らせる。
「この辺りは、すこーしだけ、蒸すのだ。
サウナは好きなのだ?」
アニーも着ているオレンジのシャツの胸元に汗のしみを作って、換気をしようとパタパタと空気を送り込んでいる。
その密度のある胸元では無理もない。
ボクが目のやり場に困って、自然と反対の方向を見ると、マグがすでに黄色のシャツを脱いでいた。
キャミソールのようなものなのだろうけれど、そのフリフリ加減と彼女の体の幼さから、逆にいけないものを見てしまったようにも思った。
「ちょっとぉ!?
マグ、なに脱いでんの!?」
「だってー
暑いんだもーん」
「そうか、上を脱げばいいのか」
隣を歩く女性は、自分のシャツに手をかけ、すでに健康的に引き締まった腹部をあらわにしていた。
「あ、アニー!?
ハクゥ!
二人を止めてっ!」
ボク自身も暑さと色香に頭が回らず前を歩くリーダーに助けを求めた。
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