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第2話
077. 剣と魔法ってこんな感じなんだ26
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「それ、きれいな色よね」
ふいにハクの声がして、ボクはやっと目の前にある美しいものへ自分の意識が奪われていることに気が付いた。
ボクがまじまじと見ていたのは、ララベスからもらった緑色の木刀だった。
「ウン、ボクもそう思う。
不思議な色をしてるよね」
見れば見るほど、深く、濡れたような艶さえもあるその表面。
それでも木刀とわかるほどの木目が見て取れる。
だが決して手の中で滑るような摩擦の少なさでもなく、握りこむために作られた柄の部分もしっかりと手の皮になじむ。
「深碧って言うのかしらね。
ほら、宝石の種類で『碧玉』ってのがあるんだけど、それの緑色の奴に近い色合いだと思うわ」
「ジャスパーって名前は聞いたことあるよ。
ボクのいた国でも古い時代や神話に出てきてた気がする」
そう言って柄の部分を見ると、ただの緑一色ではなく、濃淡やその線、模様といったものまでもが目に入ってくる。
黒熊のフロアで椅子に腰かけて灯りにかざしながら飽きもせずに木刀を眺めていると、エリィは遠慮もなく茶化してくる。
「お前が神話、ねぇ~。
知ったかぶり?」
「違うよ。
そういうのが……好きだったんだよ……」
エリィの言う知ったかぶりっていう言葉には反感があった。
実際に聞き覚えがあったのはマンガや小説、アニメなんかの創作物の中での話だったからだ。
元をただせば創作物も歴史的な事柄や実際に宗教的な部分からとってきたのだから、全部が全部ウソではないけれど、どこか居心地の悪さを感じていたのも事実だ。
「それにしても、この……
そういう模様だけじゃなくって、どこかで見たんだよなー。
なんだったかな……」
「今は思い出せなくても、覚えがあるんだったらそのうち思い出せるわよ」
そうかもしれない、とハクには答えた。
でも、本当にどこだったかな。
この世界にきてからだったような気がするんだけどな。
「ホント、きれいだねー」
「マグもそう思う?
それにしてもあの、ララベスって人は何者なの?
木刀で丸太を切ったんだよ?」
マグは大きな素焼きのカップに入ったミルクティーを両手でもって現れた。
「えっとねー。
強くてー、物知りでー、美人さん!
これは間違いないよねっ」
「うん、そこまではボクもわかるよ」
「あとはー、確かバンディさんと一番古い仲なんじゃなかったかなー。
ハクやフゥさんよりも先に黒熊にいたはずだけどー
マグわかんない♪」
コプコプと素焼きのマグカップの中身を口にするとマグは虎縞の耳を嬉しそうにピコピコと動かして見せた。
「そんなに気になるんなら、イツキが聞けばいいんだよ。
ほら、向こうにいるよ?」
マグの視線の先、フロアの奥では暖炉のそばで揺れるロッキングチェアがあった。
そこから煙がゆらゆらと上がっているのがわかる。
「ララベスのお気に入りの椅子なんだ。
のんびりするときはいつも、あそこでタバコを吸ってる」
「そうなんだ」
椅子の向きを変え、揺れる煙の元にいるララベスのことを遠目で見た。
ゆったりと深く身を預けられる革張りの背もたれ、ひじ掛けには絶妙なカーブが施してあり、体全体を包み込んでいる。足元は反り返った板で地面と接しているために、通常の椅子とは違い、安定ではなく優しく揺れることを目的とした造りをしていた。
現にそこに座っているララベスは組んだ足で自ずと揺れを作り、気持ちよさそうに目を閉じていた。
まるで、ゆりかごに揺られる赤子のような安心した顔をしている。
ただ、傍らには酒の瓶とキセルと思われるたばこがあり、そこはある種、幼さとは真逆の大人の嗜みといった様子でもある。
何か、小説のワンシーンのような彼女の挙動を見ていると、その手のひらがひらひらとしている。
「ボク?」
まるでおいでおいで、と言っているかのような動作に、尋ねると聞こえているのかいないのか、その手のひらがさらに頷くようなタイミングで上下した。
「なんだろう」
ボクはララベスの森の静けさを体現する白い手に呼ばれるままに近づいた。
ふいにハクの声がして、ボクはやっと目の前にある美しいものへ自分の意識が奪われていることに気が付いた。
ボクがまじまじと見ていたのは、ララベスからもらった緑色の木刀だった。
「ウン、ボクもそう思う。
不思議な色をしてるよね」
見れば見るほど、深く、濡れたような艶さえもあるその表面。
それでも木刀とわかるほどの木目が見て取れる。
だが決して手の中で滑るような摩擦の少なさでもなく、握りこむために作られた柄の部分もしっかりと手の皮になじむ。
「深碧って言うのかしらね。
ほら、宝石の種類で『碧玉』ってのがあるんだけど、それの緑色の奴に近い色合いだと思うわ」
「ジャスパーって名前は聞いたことあるよ。
ボクのいた国でも古い時代や神話に出てきてた気がする」
そう言って柄の部分を見ると、ただの緑一色ではなく、濃淡やその線、模様といったものまでもが目に入ってくる。
黒熊のフロアで椅子に腰かけて灯りにかざしながら飽きもせずに木刀を眺めていると、エリィは遠慮もなく茶化してくる。
「お前が神話、ねぇ~。
知ったかぶり?」
「違うよ。
そういうのが……好きだったんだよ……」
エリィの言う知ったかぶりっていう言葉には反感があった。
実際に聞き覚えがあったのはマンガや小説、アニメなんかの創作物の中での話だったからだ。
元をただせば創作物も歴史的な事柄や実際に宗教的な部分からとってきたのだから、全部が全部ウソではないけれど、どこか居心地の悪さを感じていたのも事実だ。
「それにしても、この……
そういう模様だけじゃなくって、どこかで見たんだよなー。
なんだったかな……」
「今は思い出せなくても、覚えがあるんだったらそのうち思い出せるわよ」
そうかもしれない、とハクには答えた。
でも、本当にどこだったかな。
この世界にきてからだったような気がするんだけどな。
「ホント、きれいだねー」
「マグもそう思う?
それにしてもあの、ララベスって人は何者なの?
木刀で丸太を切ったんだよ?」
マグは大きな素焼きのカップに入ったミルクティーを両手でもって現れた。
「えっとねー。
強くてー、物知りでー、美人さん!
これは間違いないよねっ」
「うん、そこまではボクもわかるよ」
「あとはー、確かバンディさんと一番古い仲なんじゃなかったかなー。
ハクやフゥさんよりも先に黒熊にいたはずだけどー
マグわかんない♪」
コプコプと素焼きのマグカップの中身を口にするとマグは虎縞の耳を嬉しそうにピコピコと動かして見せた。
「そんなに気になるんなら、イツキが聞けばいいんだよ。
ほら、向こうにいるよ?」
マグの視線の先、フロアの奥では暖炉のそばで揺れるロッキングチェアがあった。
そこから煙がゆらゆらと上がっているのがわかる。
「ララベスのお気に入りの椅子なんだ。
のんびりするときはいつも、あそこでタバコを吸ってる」
「そうなんだ」
椅子の向きを変え、揺れる煙の元にいるララベスのことを遠目で見た。
ゆったりと深く身を預けられる革張りの背もたれ、ひじ掛けには絶妙なカーブが施してあり、体全体を包み込んでいる。足元は反り返った板で地面と接しているために、通常の椅子とは違い、安定ではなく優しく揺れることを目的とした造りをしていた。
現にそこに座っているララベスは組んだ足で自ずと揺れを作り、気持ちよさそうに目を閉じていた。
まるで、ゆりかごに揺られる赤子のような安心した顔をしている。
ただ、傍らには酒の瓶とキセルと思われるたばこがあり、そこはある種、幼さとは真逆の大人の嗜みといった様子でもある。
何か、小説のワンシーンのような彼女の挙動を見ていると、その手のひらがひらひらとしている。
「ボク?」
まるでおいでおいで、と言っているかのような動作に、尋ねると聞こえているのかいないのか、その手のひらがさらに頷くようなタイミングで上下した。
「なんだろう」
ボクはララベスの森の静けさを体現する白い手に呼ばれるままに近づいた。
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